第12話【変わることと変わらないこと】

2人はいつものように家へ向かっていた。

いや、

1年と半年、通った道は変わることは無かったが、今週から変わったことがある。

それは隣にいる凜華という存在だ。


きっとクラスの奴らがみたら驚くだろう。

俺みたいなクラスで端っこにいるような奴と1年生の中で1番と言っていいほど可愛いと言われている凜華が隣にいるからだ。


「もー、先輩聞いてますか?」


考え事をしていた涼介を凜華は現実に引き戻した。


「あぁ、聞いてたぞ」


涼介は慌てて答えた。


「絶対聞いてなかったパターンじゃないですか!」


凜華は少し怒ったような感じだった。


「すまん」


「あっ、認めましたね、今度なにか奢ってくださいね」


「いや、お前の話聞かなっただけでなんで奢らないといけないんだよ、」


涼介は謎だと言うような顔をした。


「考えてみてください、1年生でも特に可愛い私と話せてるんですよ、それだけで価値があるのにその私の話を聞いてなかったって言うんですよ、本来なら死ですよ死」


凜華は自信満々に言って見せた。


「いや、お前どんだけ偉い存在なんだよ」


思わず突っ込んでしまった。


「これからは崇めてくださいね」


「わー、凛華様凛華様」


「ふふふ、先輩はやっぱどこでも変わりませんね」


「平等主義だかな、それに場所によって変わるなんてめんどくさい」


その言葉に凛華はハッとした。

そして、すぐに下を向き俯いた。


「なんだか羨ましいです、私も先輩のようになってみたいですよ」


きっと凜華は本心からそう思っただろう。


「簡単だぞ、周りのことなんて考えなければ俺になれるぞ」


涼介はさぞ当たり前のように言った。


「私には無理ですよ…」


凜華はどこか寂しい声を出した。


「そーか、だけど、まぁ、それも人それぞれだから気にすんなよ

俺にとってはめんどくさい事でもお前にとってはめんどくさくないかもしれないしな」


涼介は凜華が涼介と司の前と舞や蛍、学校のやつらとでは態度が違うのは見れば直ぐにわかったが聞こうとはしなかった。

きっと他人が踏み込んじゃいけないようなことだと思ったからだ。


「こういう時だけ空気読んで先輩はズルいです」


「ま、変わるも変わらないもケースバイケースってことだな」


「そーですね……」


凜華はそう呟くといつもの曲がり角に来ており涼介と別れた。


涼介は家に帰ったあともベットで考え事をしていた。

人は誰でも何かを抱えているんだなと思った。

それは涼介自身だって例外じゃないと、

なぜなら涼介には親がいないからだ。

涼介が中学1年生の時に事故でなくなったのだ。


それから涼介は母の妹に引き取られ、思い出の詰まった家に居られる。

だが、その家はほんとんどの時間涼介しかおらず、たまに母の妹が帰ってくる程度だった。


そんなことを考えているうちに涼介はまたしても寝てしまった。



◇◆◇◆◇◆◇◆


目覚めたら時計の針は22時ちょっとすぎを指していた。


「また寝てたのか……」


涼介は部屋から出ると水を1杯飲んだ。

そのあと涼介はコンビニに向かった。

自炊はできるが、こんな時間になってしまったため、作る気にはなれなかった。

そのためコンビニだ。


コンビニに入ると涼介は弁当を見た。

しかし、涼介が食べたいと思えるようなものはなかった。

そのためチキンを買ってご飯と食べようと思いつつも、涼介は雑誌コーナーに行った。

そこには見慣れた顔の奴がいた。


髪の長さは肩くらいまでの長さで、色は所々茶色になっていた。

横からでもわかるほど顔立ちが整っており、体も出てるところは出ており、無駄がないような体つきだった。

彼女は読んでいた雑誌を閉じると出口へと向かった。

その時出口の方向にいた涼介と目が合ってしまった。


「あれれぇ〜先輩じゃないですか

さっきぶりですね」


帰り際の少しくらいような雰囲気は全くなく、いつも通り近づいてきた。


「よぉ、奇遇だな」


涼介はいつも通り接することにした。


「そーですね、先輩は何買うんですか?」


凜華は涼介の手にカゴも商品も何もないことに気が付き質問した。


「夜ご飯を買いに来たんだよ

まぁ、弁当にいいのが無かったからチキンでも買おうと思ったんだけどな」


涼介は隠す必要もなかったので正直に答えた。


「お前は何しにコンビニに来たんだ?」


質問のお返しにと同じことを聞いた。


「いつも読んでた雑誌が今日出る日だったんですけど、忘れてたんで買いに来ましたね、でも今回のは興味なかったんで立ち読みだけで買うのは止めましたー」


「そーか」


涼介は凜華の話を聞きながらもどれを食べるか選んでいた。


「あ、私はからあげ棒で」


凜華は当たり前のように涼介に言った。


「なんでお前に買わなきゃいけないんだよ」


「えぇ〜忘れたんですか?

私の話聞いてなかった先輩には奢る義務があると言ってたことを」


凜華は私の話を忘れていたから追加しようかなとまで言い始めた。


「あれホントだったのかよ」


「私嘘は言わないので、よろしくです〜」


多分こいつのことだから注文してる横から追加してくるだろうと涼介は思い承諾した。


◇◆◇◆◇◆


やがて買い物が終わるとコンビニから出た。


「ほらっ、お前の分だ」


涼介は袋からからあげ棒だけを取り出して、凜華に渡した。


「わぁ、先輩ホントに信じたんですか」


凜華はわざとらしく驚いてみせた。


「お前がくれって言ったんだろ、夜までお前に付き合うのめんどくせぇ」


それから登校する時のように普通の話をしながら2人は帰った。

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