第9話【部活での彼女】
「涼介、今日は部活来るのかい?」
放課後になると司が涼介に話しかけてきた。
「そーだな、今日は行く」
涼介は年に数回くらいしか部活に行かないため部活に行くことは非常に珍しい事だった。
前部活で話した時と、今週話したあいつと違和感があった気がするんだよなぁ…
その事が気になったため涼介は2人きりの時ではなく、ほかの人たちがいる時に会うことにした。
◇◆◇◆◇◆
「あ、司先輩こんにちわ……それと……涼介先輩…?もこんにちわ」
ドアを開けるなり、元気な挨拶が飛んできた。
挨拶の主は後輩の北村蛍
数少ない書道部の部員だ。
「やあ、蛍ちゃん今日も来てたんだね」
司はいつも通り部室に入ると自分の席に座った。
「涼介は適当にパイプ椅子でも出して座ったら?」
「いや、俺の席も一応あるから、」
そう言うと、涼介は席にバッグを置いた。
そして、ソファーに座った。
部室は空き教室を使用しており、真ん中に長机が置いてあり、5席用意されている。
そして、窓際にはソファーが置いてあり、そこには小さいテーブルもある。
他にも涼介や司が持ってきたものも用意されている。
「やっぱ涼介はそこなんだね」
司は苦笑しながらバッグからものを取りだした。
「なんだ?司勉強でもするのか?」
涼介は大の字に座り、顔だけ司の方を向けていた。
「もうすぐテスト近いからね、涼介もした方がいいと思うよ」
「いや、俺はいいよ、面倒だし、勉強してもしなくても変わんねぇし」
涼介は普段からずっとやる気がないが、勉強は出来ないというわけではなく、そこそこできるがするのがめんどくさいという非常に人から嫌われるタイプの人間だ。
「まぁ、涼介の場合はそーだね、でも課題は提出しなよ」
「わかってる、わかってる」
◇◆◇◆◇◆
「やっほー!!」
勢い良く扉が開くとともに、元気な声が聞こえた。
「こんにちは」
続いて、扉を開けた人とは正反対に落ち着いた感じの挨拶が聞こえた。
元気よく入ってきたのは澤村舞……涼介や司と同じ学年である。
「あっ、涼介も来てたんだ、おひさー」
「久しぶりだな」
舞と涼介は1年の時は同じクラスであったが2年生では別なクラスなため必然的に会う回数が減った。
さらに涼介は部活にたまにしか来ないため、ほぼ会うことは無かった。
「相変わらず目が死んでるね〜」
舞は荷物を置くと涼介に近ずき、目をつぶっていた涼介の頬を人差し指で突き始めた。
「ほれほれ、ここがいいんだろぉ〜」
「やめろ」
涼介は舞の人差し指を掴むと反対方向に曲げた。
「痛い痛い痛い痛い」
涼介は手が言などせずに舞が自力で離れるまで人差し指を曲げていた。
「はぁ、はぁ、涼介は相変わらずだね…」
「舞先輩大丈夫ですか?」
2人のやり取りに割って入ってきたのは先程舞と一緒に教室に入ってきた凜華だった。
「うわぁん、凜華ちゃーん、あそこで寝てる人がね、レディーに暴力を振るったの〜」
舞は凜華に抱きつき、泣き真似をした。
「先輩もお久しぶりです」
昨日もあったため、別に久しぶりという訳では無いと涼介は思ったが、凜華は涼介に合わせろという感じの視線を送ってきた。
「あぁ、久しぶりだな、凜華」
涼介は敬語を使っている凜華に対して少し違和感を持ったが今は気にしないようにした。
「凜華ちゃん、あんな社会のゴミなんかに敬語なんて使わなくていいんだよ」
「いえ、先輩なので敬語を使わないとダメですから」
涼介はそれを聞き驚いた。
本人の目の前で悪口を言う舞に対して、凜華は丁寧な言葉で普段涼介に使っていない敬語を使わないとダメといつも凛華をからかってくるやつが言ったのだ。
誰でも驚くだろう。
「舞は遊んでないで勉強したらどうかな?」
凜華に対してダル絡みしている舞に対して司は注意した。
「えぇ〜、家でやるからいいよ」
「舞先輩そんな事言わないで一緒にしましょ?
お菓子もありますから」
そう言って凜華はやる気が出ない舞のために棚からお菓子を取り出した。
「皆さん飲み物は何にします?」
お菓子を皿に入れ出すと凜華は皆に何を飲むか聞いた。
「僕はコーヒーかな」
「私は紅茶で…」
「ミルクティーが飲みたーい」
「あ、俺はコーラを頼む」
それぞれ司、蛍、舞、涼介の順番で飲みたいものを言った。
「じゃあお湯沸かしますから待っててくださいね」
部室には小さいながらもキッチンと涼介達が持ち込んだミニサイズの冷蔵庫がある。
凜華は冷蔵庫からミルクティーとコーラを取り出すとカップに注いだ。
「あ、俺のコーラはそのままでいいぞ」
冷蔵庫の大きさの関係でコーラは1.5Lではなく、1Lのやつのためコーラ好きの涼介だったらすぐに飲みきる量だった。
「相変わらず涼介はコーラが大好きだね」
「まぁな、ついでに棚からポテチも頼む」
ここでは凜華は気配りができる優等生みたいな人をしているということを悟り、涼介は日頃の恨みと言わんばかりに頼み事をした。
「分かりました、先輩」
涼介は凜華が持ってくるのに備え体を起こしテーブルを近ずけた。
「ここでテレビがあったらサイコーだな」
涼介は凜華がポテチを探しているのを横目に見ながら言った。
「さすがにそこまでは出来ないと思うよ」
「だよなぁ…」
「ありましたよ、先輩」
ポテチが見つかったようで凜華はコーラとともに持ってきた。
「おー、サンキューな」
涼介は渡されるとすぐにコーラを空けた。
そしたらコーラが勢い良く吹き出した。
「うわっ」
涼介は慌ててキッチンにコーラを置いた。
「すみません先輩……」
凜華はハンカチを差し出しながら、涼介に謝ったがその顔はいつも涼介をからかっているようなニヤついた顔だった。
こいつわざと振ったな……
「まぁ、大丈夫だ、気にするな」
今の凜華の顔は涼介にしか見えておらず、ここでわざとやったなと攻めることは出来なかった。
こいつ無駄に頭いいな……
つーか、こっちの方がこいつらしいな
涼介にイタズラをしている時の凜華の方が凜華らしいと思う涼介だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます