第8話【後輩ちゃんとの帰宅道】

放課後になると涼介はすぐに教室を出た。

幸い涼介のクラスは早めにホームルームが終わったため、今下駄箱で待っていれば凛華が必ず来るだろと思った。


しかし、10分経っても来る気配はなかった。

他の学年の生徒も、帰り始めたり、部室に向かっている姿が見受けられるため、涼介が早すぎたわけではないだろう。


やがて、20分が経過すると涼介もさすがに今日は帰ろうと思った。

そんな時


「やっほー先輩」


今週になってから何度も聞き覚え始めてきた声が後ろから聞こえ、涼介は振り向いた。


「お前何してたんだ?」


「そりゃぁ〜先輩が待ってるのが見えたんで、これは待たせるしかないと思い教室に残ってました」


涼介に苦労をかけさせるためにわざとゆっくり来た

そう笑顔で答えた。


よし、こいつには先輩の威厳というものを見せてやろう。


「そーか、よし、指と頭どっちがいいか?」


涼介は怒りという感情を内側に押さえ込み、涼介も笑顔になった。


「せ、先輩……なんか怖いオーラ出てるんですけど…気のせいですよね?」


「いいからどっちか選べよ、、、早く」


さっきまでの笑顔は既になかった。


「嫌ですよー、絶対なんか痛いやつじゃないですか!」


「躾に1番効くのは痛みだって言うセリフを前漫画で読んだことを今思い出したんだ…」


涼介は懐かしいと言わんばかりだった。


「ちょ、待ってください、冗談ですよね?優しい先輩なら後輩に酷いことしませんよね?」


凛華の言葉を無視して近く。

凛華は覚悟を決めたように目をつぶった。

だが………………………

涼介が何もすることは無かった。


「はぁ……冗談だ、ほら遊んでないで帰るぞ」


既に周りには生徒はおらず皆一様に部活や帰宅をしている。


「先輩の冗談笑えないです…」


校門から出るとあたりはまだ少し明るく、夏の気配を残していた。


「そーいえば、なんで私を待ってたんですか?

もしかして私に惚れちゃいました?」


凜華はニヤニヤとしながら聞いてきた。


「お前に聞きたいことがあったんだよ」


「こんな可愛くてモテる私を好きにならないとか先輩は人間じゃないですよ」


涼介が凛華を無視すると、凛華も涼介を無視した。

そして凜華は手を唇に軽く添え、上目遣いをした。


可愛いとは思うが……こいつはただ俺をからかいたいだけだ、絶対に惑わされねぇ


「誰がお前なんかに惚れるんだよ、今週だけでお前のウザさは身に染みた

今日お前を待ってたのは昨日のことを司にいい感じに説明して欲しくてだな…」


涼介は司が言っていたことを凜華に説明すると

凜華は声を出して笑い始めた。


「やっぱそうなったんですね、いやぁ、予定通りですよー、誤算があったとすれば、お兄ちゃんが私の部屋に勝手に入ったってことですね」


やはり、司が何がするような態度を凜華が取っていたようだ。


「さすがに無断で人の部屋に入るの辞めさせた方がいいぞ

でも、お前もお前だなあいつがシスコンってこと分かってんなら、ちゃんと説明しろよ」


涼介が凜華に何を言っても無駄だということを理解しているが言わないと落ち着かなかった。


「でもですよ、そのおかげで先輩は可愛い可愛い後輩と一緒に帰れてるんですよ?」


そう言うと何故か凜華は一回転して、全身を涼介に見せた。


「いや、時間を無駄に食うだけだよ、」


その光景を横目に見ながら涼介は言った。


「冷たいですね、心が冷めてますね」


そう言いながら凜華はスマホを取り出した。


「あっ、もうこんな時間じゃないですか!」


凜華は少し慌てたようだった。


「何かあるのか?」


「バイトですよ、バイト、私先輩と違ってニートではないですから、」


「はいはい、すごいすごい」


涼介は適当に褒めたが凜華はそれを聞く前に走って帰ってしまっていた。


「はぁ……あいつは一言余計なんなよ」


涼介は走ることなくいつものペースで帰宅した。




◇◆◇◆◇◆◇◆


ーーーー後日談ーーーーー


司は登校して来るのすぐに涼介の席に来た。


「どうしたんだ?」


少し悲しそうな表情を司はしていた。


「聞いてくれよ……昨日……凛華から、勝手に部屋に入らないでって言われたんだよ」


どうやら、昨日のことを聞いた凜華は誤算だったと言う勝手に部屋に入ったという事だけは気になって言ったらしい。


「さすがにそれは俺でも引くからな」


とりあえず涼介は司の肩に手を置いて慰めた。


「あとそれと、君と凜華が駅前のモールであって一緒に買い物とかしたって聞いてね」


その事を言う司の目は少し怖かった。


「まぁ、会って一緒にいたな…」


あいつちゃんと説明したんだな…


「僕の妹をよろしくね、仲良い人にはあんな感じになるところが可愛いやつでしょ」


まるで親が言うような言葉だった。


「いや、付き合ってもねぇし、好きでもないから」


涼介は誤解されないようにそこだけはハッキリと言った。


「あぁ、まだ、違うのか、でも、涼介ならいつでも報告待ってるよ」


「絶対にありえないから」


司はその言葉を聞いても笑っており、信じてはいないようだった。

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