第3話 昼・夕方
「はー。マジでついてないな。せっかく出店とか楽しもうって気分になったときにさー。
よりによって俺らが目撃者になっちまって警察に色々聞かれて、最悪だよ。」太一が愚痴をこぼす。
「でもさ、文化祭なくなったのはちょいと悲しいけど後輩の女の子たち守れてさ、通報したこともいろんな大人に褒められてさ。
なんかヒーローって言ったら大げさかもしれないけど、今年は確かに何者かになれたよな。」
俺がそう言うと、太一も和希も笑顔が戻り、「うざい田代の情けない姿も見れたし、結果オーライか!」と3人で笑い合った。
しかし、心残りなのが、後輩の女の子3人組と連絡先を交換できなかったことだ。名前すら聞けていない。
そう思いながら歩いていた時だ。なんと学校の近くのコンビニにさっきの3人組がいたのだ。
俺たちを見るなり、「先輩!さっきは守ってくれてありがとうございました!」と駆け寄ってきた。
「私たちこれからカラオケに行こうと思うんですけど、先輩たち一緒にどうですか?」1人の子が言う。
さっきまで刃物女に脅えてたのに切り替えが早いなと思いながら、俺たちは滅多にないこのチャンスを無駄にはしない。
もちろん全員一致のYESだ。
田舎は娯楽が少ない。高校生が遊ぶ場所といったらやはりカラオケが定番だが、女の子と来るのは初めてだ。無駄に緊張する。
上手く歌えてただろうか。
楽しい時間は、今朝の脅えてた時間よりもずっと短く感じ、あっという間にフリータイム8時間が終わった。時刻は18時。
「じゃあ、私たちはこれで帰りますね。先輩たち、卒業してもたまにまた遊びましょ!」そういい残し、彼女たちとお別れした。
10月のなんともいえない色を放つ西の空に向かって、自転車の少女たちの姿が引き込まれていくようで、とても美しく寂しく見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます