第3話 過去

「……んっここは?」


聡太は目を覚まし呟く自分の周囲を確認しこれが夢だと自覚した。ただ真っ白い空間にベットが1つ聡太はそのベットの上で寝ていた。


「ここは…どこなんだ?、夢だとしてもシンプルすぎる。わけがわからん」


ベッドから起き上がり状況を把握する突如聡太の前に黒い人影が現れた。


「うをぉ!、なんだ?」


黒い影は聡太に近づき言った。


「……過去から目を背けるな」


「は?」


影は聡太にそう言い残すとその姿を薄め消えていった。


「あれは、いったい…あれ、急に…眠気が…」


聡太の意識は暗い闇の中に消えていった。


――――――――――――――――――


「はっ!?」


聡太は保健室のベットで目を覚ます。

目覚めた聡太に近くにいた真人が気づき話しかけて来た。


「お目覚めですか、眠り姫?」


「あー、最悪の目覚めだよ」


真人は笑い聡太は久しぶりの友人の姿を見て安堵していた。

真人は試練の結果を聡太に話した。


「そうか、お前はかなり近場に飛ばされたんだな」


「ああ、そうだぜ聡太おかげで試練は楽勝だった」


「良かったな、俺は死にかけたけどな」


「いいじゃねぁか、結果生きてんだから頑張ろうぜ親友、じゃまたな」


そう言うと真人は部屋を出ていった。

真人が出ていった部屋に窓から静謐な空気が流れる、窓の外を見つめていると背後からシアが話しかけて来た。


「マスター体調の方はどうですか?」


「うゎ!!、ってお前今までどこにいた?」


「はい、魔術を使い姿を消していまし待機していました。ところでマスター、身体検査を実施したいのですがよろしいですか?」


「あ、ああ、かまわないが」


「はい」


そう言うとシアはおもむろに服を脱ぎだした。


「まて、なぜ服を脱ぐ?」


「はい、マスターの体を調べるには素肌を密着させて魔力を体を全体に流す、この方法が一番早いと判断したからです」


下着を脱いだシアが聡太に近寄ってくる。


「まてまてまて、このタイミングで人が来たらやばい事にな――」


「やあ少年、身体の調子はどう……」


突如カーテンが開かれ様子を見に来たエリーズがその光景を見る。

エリーズは何かを察したようにニッコリと悪意がある笑みを浮かべた。


「エリーズこれ、その…」


「いいさ、いいさ、みなまで言うな現状は理解した。ではっと」


何かを察したエリーズ、ニコニコと笑みを浮かべながら服を脱ぎ始めた。


「おいまて、なぜお前も服を脱ぐ?」


「なぜかって?、それは…君に興味があるから?」


「なぜ疑問形?、理由になってないぞ、まてエリーズ!」


「マスター検査をするので衣服を脱いでください」


「ふふ、両手に花とはまさにこの事だね少年」


裸の二人が聡太に近寄る、そして閉めていたカーテンが再度開かれパトリシアが現れた。


「一ノ瀬聡太君、身体の調子はど…う…」


「はっ?!、ち、違うぞ、えーっと、これは、その〜、つまりだな」


言い訳を考える聡太をパトリシアはゴミを見るかの様な細い目つきで聡太を見ていた。


「私は誤解をしていたようね」


「そ、そうだ誤解だ!」


「男女が二人でベットに...それも全裸で...」


「二人?」


聡太はシアが居ない事に気づく。パトリシアは聡太の頬を叩き部屋から出て行ってしまった。


「......」


「えっーと、ドンマイ少年」


エリーズは聡太のそう言い残すと服を着てそそくさと部屋を出ようとし何か思い出した様に聡太の前に戻ってきた。


「いずれ今隠れている子も私に紹介してくれよ少年ではまた」


立ち去るエリーズの言葉で聡太はシアの存在に気づく。


「シア!」


「はい、マスター」


シアはフッと裸のまま聡太の前に現れる。


「お前の姿さっき入ってきた女生徒に見られたか?」


聡太は冷汗を額にたらしシアに聞く。


「いいえ二人目の女生徒が入ってきた瞬間、魔術で姿を隠蔽して隠れてました」


聡太はシアの言葉で安堵してベッドへ倒れ言う。


「はぁ〜、また面倒な事になったぞ。シア身体検査は後だ、まずはこの前の試練の結果を教えてくれ」


「了解です」


「では先に結果だけを説明します、マスター含む新生徒350名のうち150名が落選しました」


「そうか、じゃあお前はこの前の状況をどこまで覚えいる?」


「私が目覚めて戦闘したとこまで記録しています」


聡太は神妙な面持ちでシアに質問していった。


―――――――――――――――――


質問が終ると聡太は再びベットに横になる、そしてため息混じりな言葉を言った。


「まぁ何にせよ、これで正式な学園の生徒になれたのは確実か…」


窓から吹き込む暖かい風と共に聡太はまた深い眠りについた。

その姿見たシアは少し微笑みながら眠っている聡太の頭に手を置きながら言った。


「マスター、私の命は貴方の物です。ですからどうか無理をなさらないで下さい」


シア顔が不安な表情に変わっていった。


――――――――――――――――


一週間後、学園の廊下にて。


朝日が入る廊下で聡太とシアは慌ただしく走っていた。


「はぁ、はぁ、くっそ何でこうなった?」


「はい、マスターに襲いかかって来た敵を撃退のち追跡し、その本拠地を破壊したからだと思われます」


「ただのチンピラに俺はそこまでしろとは言ってないぞ!!、そして何でお前は俺の後を付いてきているんだ?」


「それはマスターを警護するた…」


「よし、お前少し黙ってろ!!」


「了解」


頬を汗が滴り落ち聡太は乱暴に教室のドアを開け教室に入る、すでに出席点呼が行われ聡太の名前が丁度呼ばれていた。


「えーっと、一ノ瀬聡太君〜」


聡太は息を上げながら大きな声で返事をした。


「はい!!、はぁ、はぁ」


「あらぁ?、一ノ瀬君今到着ですか〜?」


ピンクの可愛らしい服装をした女の子が席に座った聡太に聞いてきた。


「何でここに子供が?」


聡太は不思議そうに女の子を凝視していた。

すると女の子は眉間にしわを寄せ笑顔で言った。


「私これでもこの学園の教師で、そして君の担任なんですよ、殺されたのですか一ノ瀬君〜?」


「え?!、あ、すみません」


「もういいです、次から気をつけてくだいさい」


頬プックーっと膨らまし、まるで子供のような不機嫌な顔で出席点呼を続けた。


「はいみんな注目ー、今日からこのクラスの担任になりましたナセリ・シュゼットです、これから5年間よろしくお願いします」


ナセリは子供のような愛くるしい声で自己紹介を終えた後、ナセリは学園の説明を始めた。


「えーでは皆さんここはどんな所か知っていますか〜?」


沈黙の空気が流れる中、1人の男子生徒が手を上あげる、その男子生徒は黒色の眼鏡し、赤色の髪をしていた。


「えーっと君は確かソラン君かな?」


「はい、ソランローゼです」


「ではでは、さっきの質問に応えてください」


ソランはずれた眼鏡をクイっと上げ説明しだした。


「この学園は優秀な魔法使い、魔術師を育成また、神なる魔法に近ずくための教育機関です」


「その通りです」


 ナセリの様子はまるで子供が親に褒められる時の表情そのものだった。午前の授業が終わり食堂で昼食を真人と一緒にとっていた。


「なぁ聡太、お前どんな魔具を作るんだ?」


「俺が作るのは魔術人形ドールだ」


「何でドールなんだ?」


真人はコーヒーを飲みながら聡太に聞いた。聡太は不機嫌な面持ちをし応えた。


「俺と一番相性が良い魔術がこれだけだからだ、それにこの魔術じゃないとアイツを忘れてしまいそうで」


「‥‥聡太、もう忘れろよお前の姉は」


「忘れられるなら忘れたいよ、でも無理なんだよ」


「何で?」


「あの日の事がこびりついて離れないんだ肌に目に脳裏に」


「聡太‥‥」


聡太はそれ以上応えなかった理由はさまざまだが、一番の理由としては姉の事を忘れたくな無い、気持ちが強く残っていたからだ、聡太は姉との出来事を思い出す、薄暗い和室、眼の前には血濡れた姉と倒れた両親、残酷な記憶。聡太の姉は女のくせに殴り合いが強く、頭が良く、いつも上から目線で物を言う姉だった。聡太は霧を払うように姉の事を忘れ席を立ち真人に一言言ってその場を後にした。

午後の授業も終わり一人夕焼けの光を浴びながら聡太は街中を歩き、自分の寮に帰っていた、突如後ろから一人の学園の制服を着た少女に話かけられた。

少女は息を切らしながら聡太に助けを求めた。


「た、助けて!」 


唐突の出来事に戸惑う聡太が事情を聞こうとした瞬間、聡太の正面から黄色の雷撃が飛んで来た、透明化状態のシアが聡太の前に出て雷撃を右腕で受け軌道を逸らした。


「あれ?、何で外れた?」


「ばーか、外れたんじゃなくて外したの間違えだろ、下手くそ」


「ちゃんと当てろよー」


遠くを見ると魔法を放ったと思う3人の男が、ゲラゲラと笑いながら近づいてきて言った。


「おいおい、邪魔すんなよ。今良いところなんだからさー」


聡太は目の前にいる男達が異常である事をすぐに感じ取った。


「おいやめろ!、攻撃魔法及び、攻撃魔術は大陸法令で禁止しているはずだ?!、何故こんな事をする?」


「ま〜、こっちにも事情があるんだよ、さぁそこの女を渡してもらおうか」


「こんな事して、すぐに魔法警備隊が…」


「あー来ないぞそいつらは、人避けの魔法を張っているからな、そらいいから渡せよ」


少女は震えていた、それはまるで冬場に外に放り込まれた子猫のように全身が恐怖していた、そんな、少女を見た聡太は決意を決めた。


「断る、理由は、俺はお前達みたいな奴らが嫌いだからだ」


「あっそ―じゃあ、死にな」


3人組の一人が懐から拳銃を取り出し発砲してきた、聡太は慌てて魔術障壁を展開したが魔術障壁は簡単に撃ち抜かれ、弾丸が聡太の肩を貫通した。


「うっ、何で?!、ただの拳銃にこんな威力があるはず無いのに?」


「お前ら、表の者は知らないと思うけど現代科学と魔法学これまた相性がいい物は無い」


聡太の右肩に銃弾の穴が空きそこから血と共に反対側の景色が見え隠れしていた。


「おい餓鬼、学校で習わなかったか?、機械と魔法を合わせたらいけないって?」


「まさか、魔術機械?!」


「そうだよ、簡単な話、機械が魔法を使うとこんな事が出来るからやるなって言う話だよ」


男は再度聡太と少女に向かって発砲した、弾丸は聡太に向かってくる、少女の手を引き避けようとした瞬間、弾丸はその形を変え大きな鉄の鉛に変貌した、まるで戦艦が放つ主砲の弾と同じ位の大きさになって襲いかかる。

弾丸が聡太達に直撃する瞬間、シアが2人を救出した。だが放たれた弾丸は、その直線上の物を跡形も無く消し飛ばしていた。そして再び男が発砲、撃たれた弾は大きくなり聡太達に襲いかかる、シアが黒色の球体を出し瞬時大きな盾を形成して応戦した。


「アーカイブに接続、リソースを展開、盾影球ナイトメア・イージス!!」


轟音を放ち弾が聡太達に直撃した。

砂煙が周囲に舞う中、男達がゲラゲラと品の無い声で笑うのが聞こえる。


「あっはははははは、おい、おい、やりすぎだぜ兄貴」


「おい、笑ってる場合じゃねえぞ。元はと言えばお前がむやみにやか‥‥んっ、どうした?」


「おい、あれ見ろよ‥‥」


男達が凝視した先には大きな弾丸を黒色の盾で受け止め吸収したシアの姿があった。

いや、吸収と言うよりも飲みこんだと言うのが正しいかもしれない。


「モード、イージス展開」


男達が慌てだし再び発砲する、だがシアの黒色の盾が全ての弾丸を飲み込んでいく。


「な、なんだあれ?!」


「お、おい早く殺せよ、何やってんだ!」


「慌てんじゃねぇ!、少し落ち着け」


リーダー格風の男が慌てる2人に言う。


「囲め!、3人で同時に発砲する。いいか、味方に当てるなよ」


2人の男が聡太達を中心にして囲み銃を構え発砲、襲いくる弾丸にシアはナイトメア・イージスの形を変え応戦した。ナイトメア・イージスは聡太達を覆うとその形を変え全体に細かい棘が形成され、その形はまるでヤマアラシを彷彿させるような刺々しい形をしていた。


「モード変更、ファランクスを展開」


轟音が消える。

男達は何が起きたか理解できなかった、長大な弾丸全てが無数の棘に貫かれその動きを停止していた。


「あ、ありえねぇ‥‥」 


「な、何だあの化け物」


「おい!、ビビってんじゃねぇ撃て、撃ち続けろ!」


パン、パンと発砲音が鳴り響き弾丸が聡太達に向け飛んでいく、どの弾丸も聡太達には命中せずシアのナイトメア・イージスに防がれてしまう。

それと同時にあの長大な弾丸はその効力を失い元の大きさに戻っていった。


「く、くそ何で弾があんな細い棘に止められるんだ?!」


「ちくしょう!こうなったら最後の手段だ。お前えら俺にアレよこせ!」


「お、おいやめろそんな事した…」


「うるせぇ!もう後戻り出来ないんだよ。目撃者は全員殺す!」


男はそう言うと自分が手にしていた拳銃を壊し紫色に輝く宝石のような物を取り出した。


「早く俺に渡せ、お前ら!」


男は渡された宝石2つと自分が持っていた分の宝石を手のひらに乗せそのまま口に持っていき食べた。

宝石を食べた男はこちらをニヤリっと見て笑うと突如として男に変化が訪れた。


「オオオェヴォォォォォォォォッ!」


宝石を体内に摂り込んだ男の体は大きく変化した。

眼球は赤黒く染まり、髪は抜け落ち、体の至る所は大きく変貌した。

(化物)と言う言葉を当てはめるなら、まさにこの事だろう。

化物ものと化した男が聡太達に腕を振りかざし攻撃してきた。


「シア!」


「モード変更、イージスモード展開します!」


拳が空を切りながら近づいてくる。

だが、その拳が聡太達に当たることは無かった。

聡太は見た、近づいてくる長大な拳がとてつもない熱量を持った光線に焼き消される瞬間を。


「オオオオオオオオオオオオオオオオ!」


焼き消された腕を抑えながら痛みに身もだえる化物

聡太は攻撃が来た方向を見るとそこには空中に浮遊している3つの人影があった。


「目標に命中を確認、お見事です玲様〜」


ぱちぱち、と合いの手の様に拍手を送る茶色で短髪の女の子、ミヤビ、またミヤビに対して発言する水色の髪型をした男、玄


「おいミヤビ、さっさと学生の方を救出してこい玲様に迷惑だろ」


「うるさいわね〜、そんな事あんたに言われ無くとも分かってるわよ。てか、あんたも手伝いなさいよ」


「分かっている、では玲様、生徒の救出に行っても参ります」


玄が頭を下げ謙遜する。

そんな玄を見上げる一人の少女、黒色の長髪、綺麗で透き通るような紫色の右の隻眼、左眼は皮の眼帯をしている。その瞳はまるで花のアヤメを彷彿させる色、少女は腰に下げていた剣に手をやりゆっくりと剣を抜いた。

剣の形はレイピアに似ているが、その剣身は折れ錆、鍔から約三十センチも無いくらいの剣だった。 

少女を見ていた聡太達の目の前にミヤビが現れ聡太達に言った。


「はい、はーい、ここにいたら危険なので、ちょっと下がってください」


「オッガガガガウウウウウウウウウウウ」


化け物が腕を再生させ再び聡太達に襲いかかる、だがその前に玄が小太刀を持って立ちはだかる。


「やらせん、環境掌握…抜刀!」


化け物の四肢が細切れになり、その場に倒れ込む。


「では、後はお任せします玲様」


「…」


瞬間、玲が持つレイピアが光熱の閃光を放ち化け物を襲う、目の前は爆発し化け物も跡形も無く消し飛んだ、箇所には五メートル位の穴が空いていた。

聡太は上を見て玲を見る、刃折れのレイピアを化け物の方向にかざしていた。

爆煙が無くなり化け物の消滅が確認すると玲は刃折れのレイピアを鞘に収め言った。


「玄、ミヤビ、後処理は頼んだぞ、私は学園に戻る」


「かしこまりました玲様」


「了解です〜玲様」


玲はそのまま空中を飛行し学園に帰って行った。

その後、聡太達は玄に軽い取り調べを受け終わりしだい帰らされた。


――――――――――――――


「玄ちん」


「帰ったかミヤビ現場の調査はどうだった?」


「これは黒だね、見てこれ」


ミヤビは現場から回収した物を玄に見せる。


「これは、また珍しい物を」


の欠片こんな危険な物が世に出回っていたら世も末だね」


「すぐに玲様に報告だ」


――――――――――――――――


朧月が空に上がり冷たい空気が風呂上がりの聡太を冷やしていた、聡太はベランダで朧月を見ながら今日の事を思い出していた。


「今日は散々な一日だったそれにしてもあの眼帯女・・・どこかで見たような」


「マスターどうかされましたか?」


「いや、何でもない」


聡太は一抹の不安を残しながらベランダを後にした。

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