第2話 真祖
「スター、マ…スター、マスター!」
声が…聞こえる、誰だ?
淡い意識の中、聡太は思った。
ちょっと懐かし感じがする、知っている。この声でも、思い出せない、何で……
聡太の意識は少女の声と共に現実に戻って行った。
――――――――――――――――
「………んっ、ここは?」
「おはようございます。マスター」
意識が戻り、こちらを覗き込むように少女の顔が聡太の瞳に映った。
聡太は少女を見るなり勢いよく起き上がり言った。
「パトリシア・ヴァン・パリス?!、じゃ無い?」
薄暗い空間に一筋の月明かりが少女を照らし、その姿を晒した。
聡太の目は点になって驚いていた。
「お前…誰だ?」
距離を取り身構える聡太は少女に聞き、少女は立ち上がり答えた。
「はい、私は魔法自律型戦略兵器、固有番号はIB146018です」
聡太は頭の中が混濁し怪我をした事を思い出し腹部を見た。
「怪我が治っている?。お前、俺に何をした?」
「はい、マスターの生命活動が停止寸前だったので私の独断でマスターを治療しました」
「そ、そうかありがとう…」
「どうしました、マスター?」
聡太は裸体の少女を前に困惑していた。
「い、いや、その‥‥服を着ろ!、目のやり場に困る…」
制服の上着を脱いで聡太は少女に渡した。少女は渡された上着を着て聡太に聞いた。
「マスター」
「まて、俺はお前のマスターになった覚えはない、そもそもお前何者だ?訳がわからん‥‥」
頭を抱えて考える聡太その様子を見て少女は言った。
「現状の状況を把握、理解しました。ではマスター、一つ提案を具申します。今マスターが私のマスターで無いのは確かな真実です。ならばもう一度正式に私のマスターになって下さい。もし契約してくれるのであれば、マスターが願う全ての物を叶えて見せましょう。どうですか?」
「……お前が言ってる事が理解できないが、わかった。でも最後に確認させてくれ、お前はパトリシア・ヴァン・パリスの妹か何かか?」
あまりにも似ているため聡太は恐る恐る少女に聞いてみた少女は真顔で答えた。
「いいえ‥‥」
少女と聡太の間に微妙な空気が流れる。
「はぁわかったよ、お前を信じる。だからお前の全て俺によこせ」
聡太は少女に手を差し伸べる。少女は聡太の手をとり言った。
「対象、一ノ瀬聡太をマスターと認証、よろしくお願いします。マスター」
少女は差し伸べた聡太の手に噛みつき血を吸った。瞬間、聡太と少女の間に透明な線が浮かび上がった。
「なっ?!、これは?」
薄い線が聡太とシアを繋ぐ。
「はい、これは契約の印です。マスターはこの線を通じて私に魔力の供給をしてもらいます。」
「なるほど使い魔的なやつか、じゃあ早速とっ言いたいがまずは、お前の名前とその顔を隠す必要があるな」
「了解です。マスター、服と顔を覆う物を魔法で生成します」
少女は手を上に掲げ魔法を発動した眩い光が少女を覆った。光が止むと少女の姿は緑色がメインのスカートがついた、軍服染みた格好に変わっていた。
「これならどうですかマスター?」
「あ、ああそれなら何とか、それにしても何でもできるなお前」
「ありがとうございます。顔を隠す物はこちらを用意しました。」
少女は狐のお面を取り出し見せてきた。
「よし、あとはお前の名前だが‥」
「はい、私の固有番号は146018です」
「それじゃわかりにくいだろう。何かいい名前は‥‥じゃあこれからお前の名前はシアだ」
「シアですか?」
「そうだ、安直だがお前の番号の頭文字から二文字取ってつけた。何か不満でもあるか?」
「いいえ、何も問題ありませんマスター」
「わかった‥‥さて、シアお前の力俺に見せてくれ」
「了解です、マスター、では少しだけマスターの血を下さい」
「わかった」
聡太は制服のネクタイを緩め制服をずらし首元をさらけ出した。シアは聡太の背後ゆっくり回り込んだ。
「マスター少々辛いですが我慢してください、では‥‥行きます。
シアはそう言うと聡太の首元に噛み付いた。瞬間二人を中心にもの凄い風と光が発生した。
聡太は見ていた。己の首に噛み付いているシアの変貌を純白の髪はまるで夜空を思わせるような純青になり黒い瞳は鮮血の様に赤く染まった。
全ての現象が終わった後、聡太は自分の身に異変があることに気付いた。
「はぁ、はぁ、何だ、これ‥心臓が苦しい」
胸を強く握る聡太、シアは聡太の背中をさすり言った。
「マスター少しの間苦しいですが我慢してください。では、行きます」
シアは大きなコウモリ状の翼を展開し聡太を抱えて地上に向けて飛び立った。
__________________
「急いで早く!、各人、私を中心に魔法障壁を展開。カウント3、2、1、発動!」
轟音と共に高さ10メートル厚さ6メートルの壁が一瞬で構築される。
魔法障壁の展開に成功し足が崩れその場に座り込むパトリシア。瞬間、物凄い音が障壁の向こうから聞こえ亀裂が入った。
障壁は容易に魔物の手によって壊され、破壊した魔物が姿を表した。その頭は獅子で、その体は山羊、その尻尾は猛毒を持つ蛇で構成されていた。
魔物の体長は約7メートル、魔物を見たパトリシアは使い魔を召喚し交戦状態に入った。
「キマイラ?!、皆私の後ろへ、いいわ格の違いを見せてやるわ。ケルベロス!!」
叫ぶパトリシア、足元の使い魔の体長がキマイラと同じくらいの大きさに変わり戦闘が始まる。パトリシアは魔力の使いすぎてその場に膝をつく。
「はぁ、はぁ、かなりの量の魔力を持っていかれた、やっぱり長期戦は苦手だわ」
突如、後ろから悲鳴が聞こえパトリシアは振り向き見た。他の魔物が負傷した生徒を襲っていかかろうとしていた。
パトリシアが助けに飛びたそうとした瞬間、交戦していたケルベロスが倒れ霧散し消えて行った。
「ケルベロス?!」
その場で立ち止まるパトリシアにキマイラが襲い掛かる。―――瞬間、キマイラの顔に一本の線が入り裂けて倒れた。
目の前の状況が理解できてないパトリシアの前に狐の仮面を着けたシアと聡太が現れた。
「マスター標的を排除しました」
「わかった、他の魔物も頼むぞ!」
「了解マスター、アーカイブに接続リソースを展開します」
シアの両手に魔力が集まり2つの武器を形成していった。その武器はメイス状の形をしていた。
「魔具、爆烈魔崩打撃武器フレイルメイサー、では‥蹂躙します」
シアが負傷した生徒を襲っている魔物の群れに飛び込んだ。パトリシアと聡太はシアの動きを目で追うことが出来ず、気づいた時にはその場から居なくなり。シアのいた地面が抉れている所ろ見ていた。魔物の群れが次々と肉片になっていく、それを見た他の魔物が逃げ出していく。
「逃しません。フレイルメイサー、モード変更フレイルモード」
シアは武器の先端を魔物に向け持ち手にあるスイッチを押した。
すると武器の先端についた棘つき鉄球が物凄いスピードで射出され魔物に激突し爆烈した。
爆烈の衝撃で魔物は跡形も無く吹き飛んだ。鉄球は鎖で持ち手と繋がっていて吸い取られる様に射出した持ち手の所に戻っていった。
踊る、使う、まるで踊り子の様に動き、戦士の様に戦い武器を使いこなし魔物を完膚なきまでに叩きのめす。
「な、何あれ?」
驚くパトリシア、その様子を見て聡太は言た。
「わからない、でも今確実に言える事はあの
「あれが
「分からない、俺もあの
聡太はパトリシアに手を伸ばした。
「そうね、まずはこの状況なんとかしましょう」
パトリシアが聡太の手を取り立ち上がると、物凄い風が聡太達の前から吹く、目の前には体長約30メートルの肌が岩でできた鳥が出てきた。
「ロックバード?!、また厄介な魔物が出て来たわね、いいわ相手になってあげる、君は負傷した生徒を安全なところまで送って上げて」
「いや、俺が戦う、お前こそ負傷者を運んで撤退してくれ」
「で、でも君じゃ…いや、何か策あるのね?」
「ああ、時間を稼ぐくらいだけどな」
「必ず帰ってくるから、それまで耐えて!」
そう言うとパトリシアは負傷者を先導して撤退してい行った。
パトリシア達の姿が見えなくなり聡太は胸強く握りながらその場に膝まつくと同時にシアが駆け寄って来た。
「マスター、あと1分で
「ああ、はぁ、はぁ、わかったよ…一撃で決めるぞシア俺の魔力を全部お前に託す!!」
「了解、アーカイブに再接続、現在のリソースを破棄、新規リソースを展開します」
シアは両手を上に掲げた。
掲げたシアの手にな聡太の全魔力が集まり1つの武器を生成した。
十字架、かつて魔性の者達から忌み嫌われてきた存在。シアが手にした十字架は余りにも大きく、太く、十字架と言うには余りにも程遠いく武器か十字架と言うなら打撃武器に近かった。
「魔具、聖十字重打撃武器、ホーリークロス」
シアは十字架にある持ち手をとって跳躍し、ロックバードに突撃して行った。
ロックバードは突撃してくるシアに対し口から炎を放った、だがロックバードの炎は紙を切るかのごとく破られた。
シアの武器が白く輝き出す、そしてロックバードに対し大きく武器を振りかぶった。
「ホーリースマッシュ!!」
体の表面が硬度な岩でできている鎧を白い衝撃波が打ち抜きロックバードは地面に叩きつけられる。
地響きが起き地面に大きな亀裂ができた。
「
仮面越しにシアの髪と瞳が元に戻っていくのを胸を掴みながら聡太は見ていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、胸の痛みくらいかな」
「それは私と繋がった時の副作用です、我慢してください」
「あ、ああ...」
夜が訪れた様に聡太の意識は暗い闇の中に沈んで行った。
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