機械真祖と魔法使い

たたろう

第一章 常闇の庭園

第1話機械真祖

「暗い…寒い…」


腹部からの大量出血で体温と意識がともに失われる中、一ノ瀬聡太は一人の少女と出会った。少女は四方がガラスでできた箱に入っており、少女の周囲は太い導線と無数の亀裂が入ったモニターそして、大きな機械が少女の後ろに見えた。聡太は腹部を押さえながら少女の前に立ち見た。少女の髪色はとても白くスノーホワイトよりも白い言葉で表すなら、純白。何色にも染まらない原初の色。聡太は血濡れた手でガラスに触れた瞬間、奇妙な機械音と共にガラスの表面上に回路のような模様が浮き上がる。少女を囲っていたガラスが開き少女が目を覚ました。少女は傷ついた聡太を見て言った。


「お久しぶりです。マスター」


この少女との出会いが一ノ瀬聡太の運命の歯車を大きく狂わせる。


―――――――――――――――――――


船が動き波風が吹く中、一ノ瀬聡太は親友の平松真人とたわいない話をしていた。


「なぁ、聡太もし俺らが魔法使えるようになったらどうする?」


「そうだな、魔法で過去に行ってジョン•タイターの真似でもしようかな」


「何だそれ?」


真人は間抜けな顔をして首を傾げた。その表情を見て軽く嘲笑い、聡太は言った。


「魔法なんて向こう側の連中しか使えないだろ、使えたとしても俺らは魔術だ。そもそも魔法と魔術違いを分かっているのか真人?」


真人は自信満々に答えた。


「聡太、さすがに馬鹿な俺でもそんな簡単な問題くらい分かるぞ。魔法と魔術の違いは道具を用いるか用いらないかだろ?」


聡太は軽くため息つき答えた。


「まぁ代替あってるな、正確には術者の中に魔力原子マナがあるか無いかだな」


魔力原子マナ?」


聡太は眼鏡を外しポケットから出したハンカチで拭きながら説明を始めた。


「ああ、魔力原子マナとは、魔力核つまり心臓から放出されるエネルギーのことだ。魔法使いの体内には魔力原子マナがあり、その魔力原子をコントロールして魔法を発生させている。一方、魔術師は空気中にある少量の魔力原子を体内に取り込み道具や魔法陣を用いる事によて一定時間だが魔術を発動させる事ができる」


「ホォーなるほどね~」


「いや、納得してどうするお前こんな事も知らないでよく試験に合格したな」


聡太は呆れた顔でケラケラと笑う真人を見ていた。

そんな事をしてると船に取り付けられているスピーカから放送が聞こえた。


「聞いたか聡太!!」


「ああ、もうすぐ目的地に着くらしいな」


聡太は拭き終わった眼鏡をかけ海を見た。すると大きな大陸が見えて来た。キー、キーと複数の鳥の鳴き声が聞こえ、それは怯えて鳴いてるようにも見えた。10分くらい船に揺られながら聡太達は目的地に到着した。


「ここが魔法大陸学園プルガトールか、ここにアイツが‥‥」


船着場で独り言にふける聡太見て真人が聞いて来た。


「聡太どうした?」


「いいや、何でもない。行こう真人」


聡太は学園のパンフレットを見ながら歩き出した。聡太達が通う学園は港から徒歩で約20分するところにある。周りを見ると空飛ぶジュータンや木製の箒にまたがって空中を移動している人もいた。隣で真人が、うぉーー!!、と大きな声で叫んだ。聡太は真人を見て言った。


「おい、うるさいぞ真人興奮するのもわかるが、もうちょっと静かにしろ」


「最高だな!、聡太、俺テンション上がってきた〜」


「真人行くぞ、観光は入学式が終わってもできるだろ」


街並みを歩いていくと学園に続く大きな坂が見えた。聡太達は坂の前まで来て学園を見上げた。あまりの大きさに二人はその場で立ち尽くした。すると背後から誰かが話しかけてきた振り向くと、そこには赤髪の少女が立っていた。赤瞳、赤髪、大人びた雰囲気醸し出すがその顔にはまだ幼い面持ちが残る。少女は立ち尽くす聡太と真人に言う。


「どいて、邪魔よ」


少女の発言にイラっときた聡太は少女に文句を言おうとした瞬間、真人が、すみません〜、と言いながら笑顔で聡太を押し道を作った。少女は気取った態度で二人の間を通りその場を後にした。真人が聡太を見て言った。


「聡太、お前は俺のハッピーライフな学園生活をだめにする気か?、あの女に喧嘩売るのはやめとけよ」


真人は尻もちをついている聡太に手を伸ばす


「あの女、どこかで‥‥」


聡太は真人の手を取り起き上がる。そして坂を登っていく彼女の姿をただ見ていた。それを見ていた真人が聡太の顔の前に週刊誌出してきた。


「彼女はパトリシア=ヴァン・パリス名門貴族のご令嬢だよ。しかも、最近新しい魔法式や次世代の魔具、戦闘魔具などを開発し週刊誌にも載る有名人だぜ。だけど性格がちょっとあれなもんでな見た目は綺麗なのにもったいねーな。」


「あいつ吸血鬼だろ?」


「ん?、そうだけど何で分かった?」


「いや、何となく‥そんな気がした。」


風が吹き桜の花びらが舞い散る中、聡太は何か思う表情を浮かべて坂の上に見える学園を見つめていた。


「そんなことより早く行こうぜ聡太」


「ああ、そうだな」


聡太と真人は鞄から入学書を取り出しそれと一緒に同封されていたクラス分けの紙を見た。


「俺のクラスは‥魔具科か、やっぱりな真人お前は?」


「ん?、俺は魔術科」


「何?!お前みたいな常日頃、頭の中お花畑状態のやつがなぜ?」


「おいおい、酷い言いようだな」


「ふふ冗談だ」


笑いながらで冗談を言う聡太に対して真人は軽く笑って言った。


「お互い死なない程度に、この学園生活を生き抜いて行こうぜ」


「ああ、頑張るよ。じゃあな」


「おう!」


そう言うと真人は自分の科がある方向に向かい走って行った。聡太も真人に続き自分の科がある方向に向かって歩き始めた。正門から徒歩五分くらいのところに、魔具科の校舎が見える。聡太はパンフレットに乗っている地図を見ながら校舎に向かった。校舎に着くと自分の指定されたクラスの教室入る。普段と違う光景がそこにはあった。人間じゃない多種多様な種族が集まっていた。聡太は自分の席に座り学園のパンフレット読んでいると一人の少女が話しかけてきた。


「ねぇねぇ、そこの君」


聡太は少女に気づき顔を向けた。少女の頭には小さくねじれた角が左右に生えており髪は金色のロングヘヤー、瞳の色は緑、とても小柄で身長は聡太の顎くらいまでしか無い。


「君、人間よね?」


「そうだ俺は人間だ、それがどうした?」


「いや、特に深い理由はいのただ、気になっただけだよ」


「人間がこの学園にいるのはおかしいって言いたいのか、まぁ普通に考えてもそうだ。魔族や亜人と違い魔力適性は低い、それに魔力適性があったとしてもなれるのは魔法使いじゃなく魔術師、全てにとって遅れてる人間が何でこの学園に?」


「いやいや、そんな事思って無いけど‥‥」


慌てふためく少女に向かって聡太は言った。


「冗談だよ、ちょっとした事情があってこの学園にきたんだ」


聡太は笑顔で応えその表情見た少女は、深くため息をつくとに同時に笑い出した。


「プッハハハハ、君なかなか良い性格してるね」


「ああ、良い性格だろ、それよりさっきの話そんなに面白かったか?」


「いやすまない、別に馬鹿にしてるつもりはないんだ。ただ君見たいな人間は初めてだから、少し驚いただけさ」


笑う少女に手を伸ばし聡太は自己紹介を始めた。


「初めまして、俺は一ノ瀬聡太」


「私はエリーズ。よろしくね一ノ瀬、少年」


エリーズは聡太の手を取り微笑んで応えた。と同時に学校の鐘が鳴りその音に合わせて空中を浮遊しているスピーカーから放送が流れて来た。放送を聞いた聡太とエリーズは席を立ち指示された場所に向かった。そこは大きな魔法陣が地面に描かれ、内部は見るにドーム型の建造物だとわかった。内部を見ていると真人が声をかけてきた。


「よっ、聡太」


「ん?、何だ、真人か」


「そっちのクラスはどうよ?可愛い子いたか?」


聡太は呆れた表情をして言った。


「ああ、いたよ」


「マジで?後で詳しい話聞かせてくれよ」


二人が話していると足元の魔法陣が光だした。強烈な光の前に目を閉じる聡太と真人。光が無くなるのをまぶたで感じ二人は、まぶたをゆっくりと開いた。


「何だこれ‥‥」


そこには無数の本があった。数は見ただけでも何千何万それ以上、本は種類ごとに綺麗に棚に羅列しててあった。周囲の生徒がざわめきだす中、一人の老人が真人の背後から出てきた。


「うぉ!?、何だこの爺さん」


「ほ、ほ、ほ、すまんな若い子よ」


老人は真人の横を通り過ぎて目の前にある台に登っていった。


「びっくりした〜何だあの爺さん?、聡太あの爺さんどこから‥‥おい聡太は聞いてんのか?」


「ん、?ああごめん少し考え事してた。それで何の話だ?」


「あの爺さんだよ」


真人は台の上にいる老人に指をさして言った。


「ああ、あの人は――――」


聡太が言いかけた瞬間、周囲の人が静まり台の上にいる老人に注目した。


「えー、君たちが静まり私を見るまで約7分くらいかかっておる。」


辺りの人がざわめきひそひそと話し出す。


「いや、別に説教をするとかそんなんじゃないぞ、ただ時間とは有限であり無限じゃない。皆そのことをしかと心の奥にとどめておくことじゃ。では改めて、名乗らせてもらおう私はリーゼンド・トブルース。ここの学園長をしておる。早速じゃが皆の者に試練を与える。何、簡単な試練じゃおぬしらの下に魔法陣がある、それは転移の魔法陣じゃ、今からランダムにこの大陸のどこかに飛ばされるので飛ばされた地点からここに帰って来てくる手段は問わん、では健闘を祈る」


学園長の一方的な言葉に周りがざわめきだす。突如、足元の魔法陣が輝きだし聡太達を飲み込んだ。聡太達はあまりの光に目を瞑る光が止みんだのを瞼で感じ目を開けるとそこは、草が生えて丘の上だった。


「おいおい、冗談だろ。あの学園長ここから自力で帰れってか?」


立ち尽くす聡太の後方の茂みが、ガサガサと音を立てる。音に気がついた聡太は振り向くと草むらから一匹スライムが出て来た。


「スライム‥‥図鑑で見てことがあるぞ、確か雑食で群をなして行動する魔物だったな‥‥。たしかスライムが一匹いたらその周囲には約三十匹いるって図鑑に書いてあったな」


聡太が考えていると草むらからスライムの群れが出てきた。その光景を見た聡太は一気に逃げ出した。だが想像異常にスライム動きが早く足にスライムがへばりつき捕まった。


「な?!、何だこのスライム、くっそ足にへばりついて取れない」


そこにスライム群が到着し、聡太に一斉に襲いかかった。聡太は身構え目を瞑った。


「うわああああ、ってあれ?」


気づくとスライム群は小さく萎んでまるで空気がない風船の様になっていた。


「いったい‥‥何が起こったんだ?」


困惑するそうたの前にエリーズが現れた。


「誰かと思えば君か」


「エリーズ?!お前が助けてくれたのか?」


「そうだよぉ、僕が君を助けた。感謝の言葉はまだかな?」


調子にのるエリーズに対し聡太は言った。


「ありがとう、エリーズ。お前が助けてくれなかったら今ごろスライムに捕食されていた」


「うん、素直でよろしい。では少年近くに結界で作った避難所があるそこに行こうか」


「ああ行こう、もうスライムに捕食されかけるのは勘弁だ。お前何を?って、うをおおおおおおおおおお」


エリーズは聡太をお姫様抱っこし勢いよくジャンプしそのまま浮遊魔術で飛行する。


「待て待てエリーズ、スピードをスピードを落としてくれ!!」


「あははは、安心してくれこう見えても浮遊魔術は得意なんだ」


「そ、そう言う事じゃなくて少しま、待ってくれエリーズせめて地上を走ってくれーーー!」


恐怖する聡太にエリーズが笑って言う。


「まぁまぁ落ち着きたまえ、聡太あと十秒で着くから怖かったら私を見ているといい」


そう言うと目的地めがけスピードを上げ、本当に十秒くらいで目的地に着いてしまった。聡太を下ろしエリーズは、どうだったっと?聞いて来たその言葉に対して聡太言った。


「…最高によっかたよ、お前の顔」


「あっははは、君は女性を口説くのが好きなのかい?」


思わぬ回答に笑うエリーズ、聡太はため息吐きながらエリーズに質問した。


「ここは、街か?」


周囲には崩れた建造物、荒れた畑、焼けた跡が残っていた。


「ええ、私達はここに飛ばされて来たのさ。それにこの街、結構でかいんだよ昔はかなり栄えた街だったと思うよ。今この街の外側に魔物避けの結界を二十四人がげて張っている。」


「そんなに固まって飛ばされたのか?」


「ええ、少年がなぜあの場で一人だけ飛ばされたのかは分からない。それよりさっきのスライムの行動少し異常だっただろう?魔物の活動は昼から夜にかけて活発になるからなね」


「ああ、あれはすごかった。異常だった」


「だろうね、僕はまた出かけるから君は教会に行きたまえ、ここを直進したらすぐ行ける」


人差し指で方向示した後エリーズは直ぐに行ってしまった。聡太は教会に向けて歩き、教会に着くと大きく錆びれた鉄製の扉あった聡太が軽くノックすると扉が鈍い音を出しながら開いた。そこには戦闘に不向きな生徒と負傷した生徒が居た。奥に入り席に座ると一人の女生徒が話しかけて来た聡太は顔を上げて見ると、そこには赤髪のロングヘヤーが特徴のパトリシア・ヴァン・パリスが立っていた。


「そこのあなた、今来た子ね?」


「あ、お前!」


「ん?どうしたのどこか怪我してない?」


顔を近づけ入念に体を調べるパトリシア、ペタペタ体を触り異常がないか確かめる様子を見ていた聡太は今朝の事を忘れて、ただその様子に見惚れていた。


「うん、怪我や異常は無いみたいね。また何かあったら呼んでね」


検査が終わるとスタスタと奥に歩いて行った。聡太は一息着いて腕時計を見た夕方の16時を回っていた。むさ苦し教会の空気に飽き聡太は外に出た。瞬間パリッと何かひび割れる音が聞こえ上を見た。


「何だこれ、空が割れている‥‥」


呆然と空を見上げる聡太。突如大きな咆哮が街中に響き渡った。異変に気付いたパトリシアが出てくると同時に空が割れた。


「うそ?!、結果が破られた何で?」


驚くパトリシアと聡太。教会の方から悲鳴が聞こえた二人は中に向かうと魔物が教会内部に侵入し生徒が襲われていた。


「食らい尽くせケロベロス!」


パトリシアが使い魔を召喚し一瞬で魔物を撃退した。


「みんな私が時間を稼ぐから逃げて!、そこ君、避難誘導お願い」


聡太は状況を確認し怪我人を優先して安全な場所に移動させパトリシアのもとに戻る。


「おい避難終わったぞ、お前も逃げるぞ!」


大きな声でパトリシアに呼びかける聡太。


「私はいい、ここで奴らを食い止める。君は早く逃げて!」


一瞬の出来事だったパトリシアが聡太との会話に気を取られた瞬間。パトリシアの死角からものすごいスピードで距離を詰めてくる魔物がいた。聡太は走った全身の筋肉を使い荒ぶるハリケーン如く全速力で走り、そしてパトリシアを押し除けた。――――


「‥ゴッフ、あっ、ああ、暗い‥‥寒い‥‥ここは一体‥‥何で、俺ここに?」


聡太は腹部からの出血を見て自分がした事を思い出した。血が滝の様に腹部から出る。もがき、苦しみ、そして吐血、震える足を押さえて無理に立ち壁を伝って避難する聡太。


「ここは‥‥博物館‥‥か?」


魔物攻撃で燃える博物館、次々と柱か焼け落ちついには床が崩落し聡太は崩落に巻き込まれた。どのくらい落ちたのかはわからない、聡太は絶命寸前だった。薄れゆく意識中、聡太は白色の蝶を目にした。無数の白色の蝶が一つの方向に向かって飛んで行く。聡太は歯を食いしばりその方向を見た。そこにが少女いた少女の周りには太い導線、ひび割れたモニター後ろには大きな機械、少女は四方をガラス張りでできた箱に入っていた、聡太は腹部を押さえ立ち少女の前まで歩いたそして血濡れた手でガラスに触れた瞬間、妙な機械音と共に少女を囲っていたガラスが無くなり少女がの目がゆっくりと開いた。少女は聡太に言った。


「お久しぶりです。マスター」

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