キッチンコロシアム

 光龍大社の神殿脇の台所。普段は暗いこの部屋も、たくさんのライトに照らされて明るくなった。テーブルに敷かれた純白のクロス。その上に、3台のモニターが設置された。上座に腰掛ける太一の背後には、『第1回 光龍大社料理大会』の横断幕が掲げられた。


「キッチンコロシアム。3人の料理人が熱いバトルをくりひろげます。どんなカレーができあがるのか、誰が初代チャンピオンになるのか! 目が離せない一戦です!」


 実況用のモニターに、キッチンコロシアムと名付けられたただの台所の全景が映し出された。画面は切り替わり、タマネギ・ニンジン・じゃがいもなどの新鮮な食材が、種類毎に三方の上に所狭しと並んだ様子が映された。三方は全部で18台あり、7段に飾られていた。カメラが引いていくとハート型に綺麗に並んでいた。


「解説はまことさん、レポーターは優姫さん、実況はしいかでお送りいたします」


 派手な衣装を身に纏ったしいかが淡々と告げると、早速レポートが入る。


「実況席。食材ですが、全部で14種類あります」


 太一はそれを聞いて驚いた。カレーの具材といえば、タマネギ・ニンジン・じゃがいも・何だか分からない肉といった、給食でお馴染みの食材しか思い浮かばないのだ。


「残り4台の三方は、米・水・塩・スパイスです」

「なるほどーっ! 他にもスペシャル食材が用意されているという情報もあります」

「目が離せませんね」


 太一は、カレーにどんな珍しい食材が使われるのか、楽しみになった。


「ハートの谷間の位置は白米、要の位置は27種類のスパイスです」

「にっ、27種類だって! すごいな。けど、谷間ってどこ?」


 興奮を抑えきれない太一。レポートは続いた。


「詳細は、お手元の『料理人大会のしおり』にあります!」

「しおりだって? どこだろう……。」


 太一がしおりを探していると、優姫が走りだした。しおりを渡し忘れたのに気付いたからだ。優姫は、太一の目の前まで来ると、息を整えようと深呼吸。思いっきり吸ったときに胸を張ったせいで、吐くときにはおっぱいがぷるるんと上下に揺れた。


「バッ、バニー!」


 この日、太一が最も驚いたのは、優姫の衣装だった。どういうわけか、バニースーツを着ているのだ。胸は強調されていて、腰のくびれに切れ込みがあり白い肌が露出している。正面から見ると、ハート型をあしらっているようにも見える。息を整えた優姫は笑顔を太一に向け、しおりを渡しつつ前屈みになった。


「お米があるのがこの辺!」


 優姫は、重力に従って垂れた両おっぱいの谷間を指差した。そして身体を起こし胸を張ると、太一の目の前でおっぱいが揺れた。太一は思わず赤面した。優姫は、構わず指をぐるりと衣装の縁に沿わせ、おへその辺りまで移動させて言った。


「スパイスはこの辺りです!」

「分っかり易ーいっ!」


 太一は思った。優姫が少しばかり頭の弱い大いにおっぱいの大きい女の子で良かったと。


「おっとー! 審査員長、早速お米とスパイスの虜になったかーっ!」

「これは堪らないでしょう! 御馳走様です」

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