カレーカレーカレー編

世界三大〇〇

はじまり

 ある日、太一はまりえと一緒に買い物に出掛けた。近所のスーパー田嶋で、日供祭の供物を買うためだ。ここのところ同居人が増え、予算不足から満足な供物を真名井様に献じていない。うしろめたさはあるが、背に腹は代えられない。だからこの日も安い米だけを買った。水と塩は、ありあわせで済ませるつもりなのだ。


 美味しいものが食べたいまりえは、人前で太一に甘えた。それを見た街行く人は、太一を睨み付けた。特に男性は、中の中を絵に描いたような太一のルックスと自身の顔を比較して、イラつきを隠せなかった。まりえのようなかわいい女の子が太一のように貧乏臭い男と一緒なのが許せないのだ。女性は女性で、まりえのかわいらしさに嫉妬心を露わにした。救いなのは、太一もまりえも無頓着なことだろう。2人はマイペースでいちゃついた。幸せそうな2人だが、その会話の内容は貧乏臭い。


「ねぇ、マスター。いつもおにぎりじゃ、飽きちゃうよー!」

「仕方ないだろ、貧乏なんだから!」

「まりえはね、美味しいご飯が食べたいなぁ……。」

「だったら、良い方法があるよ!」


 太一が立ち止まると、まりえもそれに合わせて立ち止まった。太一は、まりえの耳元で囁くように言った。


「いっぱい運動すると、何でも美味しくなるんだよ!」


 まりえはそれを聞いて、心を踊らせた。そして光龍大社に戻ると、直ぐにジャージに着替えた。


「マスター。まりえ、御町内を走ってくるね!」

「うん。いってらっしゃい!」


 太一はまりえを見送ったあと、神殿に上がり、真名井様に今日の出来事を報告した。そのとき、真名井様がわがままなことを言った。


「太一よ。カレーというものが食べたいのじゃ」

「カレー、ですか。無理ですよ、そんな贅沢は……。」

「いやじゃ、いやじゃ。嫌なのじゃ! カレーが食べたいのじゃ」

「仕方ないですねぇ……。」


 こうして、真名井様のわがままは、御神託として太一が受け取った。

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