第7話 呼び出し
純白の少女と登校した日の昼休み。僕は予想外の展開に襲われていた。
「なぁちょっといいか?」
「え、え、うん、なに?」
僕に話しかけてきのは金髪イケメンの碓氷 新太だ。彼から話しかけるくる機会などいままでなかったため驚いた。と、いうか僕に話しかける人はクラスではぼぼいない。入学してすぐの頃はみんな話しかけてくれたが、僕がたじたじになってコミュニケーションをとれない事に気づくと、みんな気を使ってか、喋りかけてこなくなった。あれ?変だな、涙が。
「ちょっと、ここじゃ話しにくいから、ちょっと来てくれね?」
「え、う、うん」
まさかの呼び出し。何かした心当たりはない。教室を出て彼の後をついていくがやはりモテるのか彼が通ると女子がざわめく。まぁイケメンだしな。彼と共にほとんど人の来ない廊下の突き当たりにくる。
「なぁ」
「はい」
やっぱり怒っているのだろうか。場に緊張が走る。
「神谷ってさ、桐崎と、そ、その、付き合ってるの?」
「は?」
は?え?今なんて言った?僕と桐崎さんが付き合ってる?なんで?…あぁそうか。スタバに行ったところを目撃されたのだろう。あのショッピングモールは学生が山ほどいる、桐崎さんを知ってる人がいてもおかしくない。
「どうなの」
碓氷くんの顔が少し強ばる。あーはいはい、なるほどね、碓氷くんは桐崎さんが好きなのか。確かにあの美貌に小悪魔的な性格を持ち合わせていたら好意を向けられる機会も多いだろう。
「えっと、別に付き合ってないけど」
「じゃあなんでスタバにいたんだよ」
「いや新作飲もうと誘われて」
「誘われた?桐崎から?」
「そ、そうだけど」
正確には1度断ったが、友達がいない僕に哀れみの手を差し伸べてくれた。まじ桐崎さん神。
「俺は中学からあいつのこと知ってるが、複数人で遊ぶことはあっても男の2人で出かけるなんて見たことなかったんだ」
「はぁ」
ビッチでないとしても、かなり男の扱いに慣れてると思っていたが、意外だ。
「それがなんで…」
…なんでお前なんかと。そう言いたげな表情をしていた。確かに僕と桐崎さんとは釣り合ってないと思う。しかしコミュニケーション能力だけで人間値がはかれると思うのは大間違いだ。
「さぁ僕にも分からないなぁ」
あれだけ友好関係の広い桐崎さんが、なぜ僕に構ってくれるのかは分からない。同情だろうか。そう思うと少し悲しくなってくる。
「神谷は桐崎のこと狙ってる訳じゃないんだな?」
「うん。」
「ならいい。急に来てもらってすまなかった。」
そう言って碓氷くんは教室に戻って行った。自分の好きな人が異性と2人でいるところみたら、モヤモヤする気持ちもわかる。だけど、僕も桐崎さんには人としての魅力を感じているし、できればこれからも仲良くしていきたい。桐崎さんは碓氷くんについてどう思っているのだろう…。
「あ!神谷くん!」
そんなことを考えながら廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。この学校で神谷は僕だけなので、安心して振り返る。自分に手を振ってると思って、振り返したら実は後ろの人でした。みたいな恥ずかしい経験をしたことがないだろうか?僕はない。なぜなら話しかけてくれる友達がいなかったから。ふぅ。気を取り直してそちらをみると、朝会った女子生徒がこちらに手を振りながら近寄ってきた。
「あぁ朝の。」
「如月きさらぎ 小夜さやって自己紹介したよね!名前で読んでよ名前で!」
如月 小夜 2月14日生まれ。B型。好きな食べ物はオムライス。間をつなぐ為に交換した情報である。情報量の少ない理由は察してほしい。フルネームで呼ぶと「さ」が被って言い難い。
「如月さん」
「名前で読んでくれてもいいんだよ?」
彼女はニヤニヤと僕をからかうようなことを言ってくる。家にいれたときに僕がコミュ障であることはバレてしまったらしい。
「じゃあ小夜さん」
「うっ」
やられっぱなしも癪なので試しに名前を呼んでみたら、顔をぽっと赤らめた。本人は平然を装ってるみたいだが、動揺しているのが丸わかりだ。僕には異性を名前プラスさんで呼ぶという風習がそもそもついていないので苗字で呼ぼうが名前で呼ぼうがどちらでもいいのだ。ただ、さんを付けると言い難い。
「そ、そうそう。やればできるじゃない!」
「うん。」
沈黙の時間が走る。え?話しかけられたけど何を話せばいいの?桐崎さんだったら話が途切れないように話題を振ってくれるが、この子とはどうも沈黙になりがちである。
「あ、あの、そのSHRには間に合った?」
なんとか話題を振ってみた。自分から話を振るなんて僕にとって大きな進歩だ。
「あぁ間に合ったよ!余裕!余裕!」
「そっか」
再び沈黙。
「け、怪我は大丈夫!」
「う!うん!もう平気!ありがとね!」
「い、いえいえ」
三度沈黙。
名前を呼んでから明らかに自分のペースを見失ってる様子だが、僕もこれで精一杯なのだ。
そこに神がかった助け舟が現れる。
「あれ?小夜じゃない。」
才色兼備。桐崎 唯衣様だ。今日の髪型は片方耳かけで毛先をウェーブさせている。さすが唯衣様だ。なんでもお似合いになる。
「あ!唯衣〜!!」
急に元気になった如月さんは桐崎さんに抱きついた。でました。女子特有のハグ。みんな何かとハグしがち、手を繋ぎがち。全然構わないけどね。
「2人って知り合いなの?」
桐崎さんは不思議そうな顔で交互に顔を見る。
「いや〜まぁちょっとね!今日、登校中に転んじゃってさー、そこに通りかかった神谷くんに手当して貰ったんだよね」
「ふーん。そなんだ。案外いいとこあるじゃない」
案外ってなんですか。ただ言い返すことも出来ないので黙っている。
「あーそっか、5組なら同じクラスなのか!」
「そうそう。隣の席だよ」
「へぇ〜唯衣が隣なんて、授業中見蕩れちゃってるんじゃないの?か、み、や、く、ん?」
さっきの仕返しのごとくからかってくる。図星なので何も言えない。このレベルの女の子が隣にいて、見ないなんてことはありえないのだ。きっと街を歩けば10人中10人が振り返るだろう。
「い、いやまぁ、そ、そういうこともあるような、ないようなぁ?」
誤魔化そうとしたのが裏目に出て上手く喋ることができない。
「あ!その反応図星ですか!そうなんですか?かーみやくん?」
こんにゃろ。清々しいほどに煽ってきよる。後で覚えておけよ。
そこに予鈴の音が響く。
「あ!私もう行かないと!ばいばい!唯衣!またね?神谷くん!」
「ん、またね」
彼女は嵐のように階段をかけ上っていった。短いスカートから純白が覗く。もうちょい警戒心持った方がいいぞ、あの子は。
「友達?」
「ん?あぁ小夜?家が近くて高校までずっと一緒だよ」
「へぇそうなんだ。」
確かに桐崎さんの家はショッピングモールから15分ほどあるかないといけないと言っていた。電車の時間も含めたら往復で1時間以上かかる。如月さんもその近くなら、1度、家に帰れなくても無理がない。ん?でも待ておかしいぞ。如月さんと会ったのは僕の家の最寄り駅の近くだ。てっきり彼女もそこが最寄り駅だと思っていたのに。一体あそこで何をしていたのだろう。
「で?図星なの?」
2人になって桐崎さんはにこやかに聞いてきた。意表をつかれた。如月さんが煽ってきたときにのってこなかったので、味方かと思ったらどうやら違うみたいだ。
「さ、さぁ?なんのことやら〜」
「んー。まぁいいや、可哀想だしね。いこ!」
どうやらお許しが出たらしく、何やら上機嫌な桐崎さんと2人で教室に帰るのであった。今度如月さんに会ったらあそこで何をしていたのか聞いてみよう。
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