第3話駅
下校中
僕は駅のホームで本を読みながら電車を待っていた。僕の家は学校から徒歩5分の京洛高校前駅から各駅停車で10分揺られて、そこから再び約5分ほど歩いたところにある。一人暮らしをしたくなかった僕は通学時間30分圏内で1番偏差値の高い高校を選んだ。僕の通ってる学校は僕にとっては合格するのは容易であった。実際僕は入試で受けた教科全て満点で入学した。
噂だが入試最高得点者は入学式で新入生代表の挨拶をするらしい。
Questionクエッション
僕は入学式で挨拶をしていないそれは何故か
Answerアンサー
体調不良により一教科受験出来ていないため。
そう僕の入試の結果は400/500点である。最終教科の理科の時間の前に気分が悪くなり退出したのだ。今年の合格最低点380点。落ちるところだった。今年は定員割れしたらしいが。
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「何読んでるの?」
「っ!」
驚いた。急に声をかけられる機会などないため完全に油断していた。振り返ると下校中と思われる桐崎唯衣が僕の後ろに立ち、読んでいる本を覗き込んでいた。
「え?何語これ?」
僕の読んでいる本に書いてある文字は日本語じゃない。フランス語である。
「えっとその、フランス語だけど。きゅ、急に声かけないで欲しい、危うく心臓が止まるかと思った。」
「んな大袈裟な。なになにフランス語読めるの?」
大袈裟なもんあるかほんとに止まるぞ。
「いや、読めない。かっこつけてる…だけ」
僕は嘘をついた。海外旅行が趣味の世界的なデザイナーである母親の影響で英語、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語 etc…はある程度読み書きできる。しかし能ある鷹は爪を隠すのだ。まだその真価を発揮するときではない。
「なにそれ?誰にかっこつけてるの」
笑われてしまった。まぁ僕も他人がかっこつけて読めもしない洋書とか読んでたら笑うけどね。
「自己満だよ。自己満」
「変なの〜」
「き、きき、桐崎さんも電車通学?」
「ん、そうだよ」
名前を呼ぶのに抵抗がありめっちゃくちゃ噛んだがスルーしてくれたらしい。有難い。確か今日から1週間は部活体験の日だ。僕は部活をする気はないので行っていないが大抵の人は行ってるみたいだ。そのためいつもなら帰宅ピークで人が凄いはずのホームも人がちらほらいる程度。
「き、桐崎さんは部活体験とか行かないの?」
「行こうかなって思ってたんだけど窓から神谷くんが帰るの見えたからついて来ちゃった。」
「えぇなんでさ」
「折角友達になったんだしお話したいなって思ってさ」
桐崎さんは小悪魔的な笑みを浮かべて言う。この子はあざとすぎる気がする。もしかして僕のことを狙ってるのかそうなのか?
「う、嬉しいなぁ」
僕はたじろぎながら精一杯の返答をした。こんなこと言われた時、なんて返すのが正解なの?
なんとも言えない微妙な空白の時間が流れる。向かいのホームに電車がきた。それを桐崎さんはぼんやりみていたが、電車が出発するとゆっくり僕の方をみた。
「んーあのさ。いまから時間ない?スタバの新作飲んでないんだよね一緒に行かない?色々お話もしたいしさ」
「あぁさくらの?」
「そうそう、よく知ってるね」
なんだそれは友達いないのによく知ってるねみたいな言い方。聞いて驚け、姉が好きでよく飲んでいる写真が送られてくるのだ。
「意外かな?」
「ちょっとね。で、どう?」
「せっかくだけどあのちょっと今日は外せない予定があって、だから、その、ご、ごめんね」
本当である。決して女の子と2人でスタバとかいくの緊張しすぎてむりとかではない。
「そうなんだ。…じゃあ連絡先だけ交換しよ。RINEしてる?」
「う、うん。やってる。QRでいいかな?」
「いいよ。ちなみにインフォトはやってる?」
携帯を操作しながらさらっと聞いてきた。僕もそのくらいのコミュ力ほしい…。
インフォトとはインスタントフォトジェニックの略で若者の間で最も流行っているSNSだ。お洒落な写真を撮って投稿したり、DMを送ったりできる。
「…やってないよ」
「そかそか。友達作りたいならやった方がいいかもよ。話の話題になるし」
僕の画面のQRを読み込みながらアドバイスをくれる。優しいなぁこの子。やっぱ狙ってるのかな?
「ありがとう、今日帰ったらアカウントを作るよ」
「作ったらRINEで言ってね、私のQR送るから」
「うん、わかった。」
ちょうどそこに電車がきた。僕は電車に乗り振り返るが桐崎さんは乗ろうとしない。
「乗らないの?」
「私反対方向だから。…じゃあねまた連絡して」
そのまま電車の扉はしまった。桐崎さんはお得意の小悪魔的な笑みを浮かべていた。
「本当にずるい。」
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