第4話 SNS
家に帰り早速インフォトをダウンロードした。アプリの存在は知っていたし、文字よりも写真を重視したスタイルは面白いと思う。おすすめのコンテンツをみる。なるほど、ファッション、ブランドコスメ、カフェ、タピオカ、プリクラ。自己顕示欲の塊のようなアプリだが交流を作るにはもってこいのデバイスだ。
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【a_rito_102】
神谷在人 投稿 0 フォロワー 0 フォロー 0
アカウントを作り終えたタイミングで桐崎 唯衣から連絡がきた。
【桐崎 唯衣】
○『よろしくね~アカウント作った??』
●『作ったよ』
〇『これ私のQRね』
〇 画像が送信されました。
●『登録しとくね』
〇『よろしく〜!』
僕は【yui_k_714】にフォローリクエストを送った。すぐ承認されて桐崎さんの投稿をみる。
【yui_k_714】
ゆい 投稿65 フォロワー 1.2万 フォロー 925
プリクラ、コスメ、カフェ。おしゃれだ。フォロワーも多い。これが今話題のSNSか。友達を作るために僕もフォロワーを増やさなければ。えっと何をしたらいいのだ。SNSはRANE以外やっていないので勝手がわからない。出来もしないことを考えて仕方ないな。やはりここは経験者に聞くべきだろう。
桐崎 結衣のRINEを開けてメッセージを打とうするがそこで手が止まった。女の子はRINEを飛ばすなんていつぶりだろう。もちろん家族や親戚に連絡することはある。しかし女の子に限らず同年代のクラスメイトにメッセージを送るのは、もしかしたら初めてじゃないだろうか。ここにきて試練が待ち構えているとは思っても見なかった。
●『友達作るためにもインフォトのフォロワーを増やしたいんだけどどうすればいいの?』
30分ほどかかってたった十数文字の文面を完成させた。
既読がつくまでの10分間は妙に長く感じた。
ピコンッ
通知がきた瞬間に携帯を開いた。
〇『え〜?なんだろなあ。とりあえずはみんながやってるような投稿載せてみたら?』
●『なるほど、分かった。やってみるよ』
〇スタンプを送信しました。
黒猫がサムズアップしてるスタンプが送られてきた。
既読が早すぎて引かれてしまった気がした。
そして
僕がアカウントを作って数日がたった。
クラスではいつものように女子が騒いでる。
耳を傾けてみるがどうやらインフォトの話題らしい。やはり若者の中で流行ってるみたいだ。
「ねぇねぇね!昨日の白石しらいし 葵あおいの投稿みた?あれって彼氏かなぁ」
「えぇまじ?白石 葵って彼氏いいるの?あそこの事務所って恋愛OKだっけ?」
「プライベートは個人に任せてるらしいね」
白石 葵とは今、若者の中でもっと人気のファッションモデルの1人である。去年までは高校生モデルとして活躍していたが、半年間の活動休止期間を設けて、今年から大学生ファッションモデルとして復帰したのだ。
「どんな顔なの彼氏さん、白石 葵の彼氏とかめっちゃ気になる」
「いや手が写ってるだけなの。でもこれ絶対男の人の手だよね、血管出てるし」
「うわ〜これは匂わせだね。しかもこれ家でしょ?」
僕もインフォトを開いてその投稿をみる。今日の夜に投稿されたらしいイタリアン。お店のものではなく家で撮ったことが背景からわかる。確かにこれは匂わせだな。
さてさて僕のフォロワーがどうなってるかみんな気になってる頃だろう。インフォトの自分のページを開く。
【a_rito_102】
神谷 在人 投稿 0 フォロワー 6 フォロー 13
どう?わりとがんばってない?
いや頑張ってないな。うん。
僕はため息をつく
「どうしたの?ため息ついて」
僕のため息に気づいたらしい桐崎さんは隣から僕に話しかけてきた。今日は肩下まであるミルクティー色の髪をそのまま下ろしている。春も中盤となり気温が上がってきたためブレザーは脱ぎ、少し大きめの白のカーディガンを着ている。
「いや、インフォトやったのに友達増えないなぁって思ってさ。」
「投稿しないからじゃないの」
「だって何を投稿すればいいのかわからないし」
「だから言ったじゃん。みんながあげてるのみて同じ様なの投稿しなよ」
「僕がわざわざ1人でスタバにいって、さくらミルクプリンフラペチーノ頼めばいいの?なんか虚しくない?」
「前に誘ったじゃない。君は断ったけどね」
「うっ。」
その日は本当に用事があったのだ。インフォトのアカウントを作ったり諸々していたら、予定の時間に遅れそうになった。
「…はぁ。今日、放課後は空いてる?空いてるなら私が一緒に飲みに行ってあげてもいいけど?」
「ぜひお願いします。」
「ん。じゃあ放課後教室に残ってて、私ちょっと先生に呼ばれてるから」
「あ、うん、わかった。」
ここ最近僕は桐崎さんとかなりスムーズに話せるようになってきた。この人は本当に親しみやすい。友達が多いわけだ。一度断ったのにまた誘ってくれたし、優しいなぁ。
僕は放課後が楽しみで仕方なかった。
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