第48話 太陽坂を登る

破壊された町の復興には、数週間を要した。

衛術協会、俺たち日英全軍、警察庁、警視庁など、凄腕の魔法師によって町は瞬く間に復興していった。

完全に元通りとはいかなかったが、全日本高校魔法剣技大会で発生した莫大な資金や、国の国家予算を使ってまで、早急に復興を行った。

こういうものにも、魔法は使える。一概に戦闘用ではない。




その数日後、俺は先日の全日本魔法剣技大会で優勝して、ライブを行えたその太陽坂の運営会社からお礼があるということで、東京の会社に呼び出された。

一応聞いたところによると、お礼の他にも何か話があるらしい。

そのことを全軍理事会に伝えておき、俺はその場所へと向かった。

俺は指定された会社の前に着いた。

今はアイドル時代全盛期という呼び声も高い潮流の中にあるから、恐らくその裏にある運営組織も大きいことは予想がついていたが、それにしても、軍の本部には及ばないものの、大きな会社だった。

都心のど真ん中にある、この乃々宮坂、コリオリ坂、太陽坂の運営会社は大きなビルとなっていた。

指定された部屋がどこにあるかわからないため、会社内の受付所らしい場所へと向かう。

「すみません、今日呼ばれた新条です。」

そう俺は受付の人に声をかけた。

「し、新条様ですか!こちらです、私がご案内いたします!」

元気の良い受付嬢が俺を案内してくれるようだ。そして彼女はおもむろに携帯をとりだし、誰かに連絡をした。

「では、参りましょう。」

案内されるままにエレベーターに乗り、受付嬢は20階のボタンを押した。

「先日は、我々国民を助けていただき、ありがとうございました!国民を代表してっていうのは少し恥ずかしいですけど・・。」

そう、受付嬢が話しかけてきた。

「いえいえ、当たり前のことをしたまでです。」

「会見も、驚きました!まさかあの日英全軍の偉い方だったなんて・・。」

彼女は人見知りなどせずに、俺に話しかけてくる。

そして、いつのまにかエレベーターは20階へと到着した。

そこには、若い男が一人いた。

「新条様、お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ。」

俺は言われるがままに、一室に案内された。

その部屋の中に入ると、もう一人恰幅の良い男が座っており、俺を見るや否やお辞儀をしてきた。

うながされ、対面の席へと俺は座る。

目の前には男二人が机を挟んで座っている。

「私は運営会社代表取締役兼社長の若槻と申します。まずは、先日の日本魔法剣技大会ではありがとうございました。おかげで今月太陽坂はアルバムランキング一位を連続でとっております。新条様のおかげです。」

恰幅の良い方は若槻と言う名前であるらしい。

「いえいえ。太陽坂さんのお役に立てたのなら幸いです。」

俺はそう短く返した。

「それで、他にもお話があると伺ったのですが。」

さらに、俺は単刀直入にそう訊いた。

「はい。実はですね、新条様には護衛の件でお願いしたいことがありまして。」

若槻はそう答えた。

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