第44話 幸島錬の独白ver.2
俺は幸島錬。
現在は、今から始まるであろう日本全軍とやらの最高部隊の記者会見を東京の町中にある大画面の前で大勢で待っているという状況だ。
俺は、今正直言って頭が混乱している。
時は数時間前に遡るが、突如悪魔へと変貌した全日本高校魔法剣技の選手。
その化け物をさらに圧倒的な力で打ちのめした我が親友、新条 輝。
と思ったら、輝は見たこともない大きな魔法をも圧倒し、大会に優勝してしまった。
ここまでならまだ脳内の整理は出来たかもしれない。
だが、その後に最も驚愕すべきことが起こった。
アイドルのスペシャルライブを楽しんでいると、見たこともない悪魔が現れた。
さっき初めて見た悪魔とはまた違う、古代的な容貌をした悪魔だった。
俺たち高校生は、咄嗟に逃げるという選択肢を取った。
人が雪崩のように出入り口へと押し寄せ、だが衛術協会の関係者であろう人物たちのおかげで俺たちは転移魔法陣により東京の安全な地域までほぼ全員が移動できた。
少し衛術協会の関係者と思しき人たちの対応が早すぎたというか、勘でしかないが、もしかしたらその人たちは日本全軍とやらの関係者かもしれないというようなことも思っていた。
非難したまではいいが、しばらくした後そこでテレビ放送局による臨時中継が始まった。
俺たちを案内して助けてくれた人たちは、俺たち高校生を町の大画面がある場所や、さまざまな中継が見えるであろう場所に誘導したようだ。
それは、他校の友達とのやり取りで分かった。
ここまで迅速な対応ができたのも、日本全軍が関与しているのではないかという俺の読みの起因にもなっている。
画面がつく。アナウンサーの必死の現場のレポートが始まった。
ヘリコプターのようなもので上空から映し出されたその映像が二つの対象をとらえた。
ズームアップされる。そこには、禍々しい相貌の悪魔と、俺の親友がいた。
「輝、、!?」
俺たち桜ケ丘高校の生徒たちは驚きを隠しきれないでいた。
だが、そこにいたのは俺の知っている輝とは全く雰囲気の違う、迫力のある青年だった。
服も変わっており、何より輝の体の周りには雷のようなものが漂っている。
あいつは学校での魔法の成績は散々だったはずだ。
だが、見るからにあの魔法は桜ケ丘高校のどの生徒の魔法よりも強い、いや、俺が全日本魔法剣技大会で見たどの魔法と比べても遜色がないほど洗練されたものであることは自明だった。
俺のようなあまり魔法に秀でていない者でもわかるほど、輝の魔法は凄かった。
すると、戦いが始まる。
その瞬間、今まで騒がしかった辺りは静かになり、全員が圧巻の表情を取らざるを得ないほどすさまじい戦いが行われた。
俺なんか、ずっと口をあんぐりと開けたままだったと思う。
今まで完全に力を抜きまくっていたことがよくわかるほど輝は強く、そして相手の悪魔もそれにほぼ互角に渡り合っていた。
二人が何をしゃべっているのかはわからない。
だが、ただならぬ雰囲気を画面の向こうから聴衆全員が感じ取っていたと思う。
実際は数分だったらしいが、その戦いは俺には一瞬に感じた。
輝は勝った。それも、最後は相手の悪魔さえも圧倒し、完勝を収めた。
もちろん、辺りは一気に盛り上がり、人類危機を救った輝にたいして、感謝の念とか畏敬の念とか、いろんな感情を抱いているようだった。
そんなこんなで現在に至る。
もうすぐまた中継が始まるはずだ。
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