第40話 九條 奏の真価 【終局】

「ああ、いつでも頼ってくれ。基本的には応えるから。じゃあ。」

そうして世界は再び現実へと引き戻された。

「ん・・?まだ何かを画策しているような顔つきに見えるのは、私の気のせいですか?」

「それはその身で感じなさい!!洋介の仇よ!極魔法『クリムゾンノート』!!」

「ふんっまた・・。極魔法+高位デビルアーツ『ヘルホール』」

新しい極魔法は地面をどろどろにしてそのまま溶岩で飲み込むという技だ。だが、これをだしたのは多重極魔法発動のためのロスタイムを小さくするため。

私の極魔法は『ヘルホール』によってまた飲み込まれてしまった。

「馬鹿の一つ覚えですね。それでは、死んでください。極魔法『ブラッドクロス』」

黒い十字架が魔法陣から出現する。だけど、

「よし!多重極魔法『ラーヴァ』!!」

「た、多重極魔法だと・・!?」

多数出現した極魔法陣はゲラルドの地面周辺広範囲をマグマに代え、噴煙をあがらせ、瞬く間にゲラルドをに見込ませた。マグマがどんどん天へと噴出され、『ブラッドクロス』とも衝突した。だが、多重極魔法は極魔法の中ではかなり高位にある。こんなんで打ち消せるはずがない・・!

「なに!?」

私の『ラーヴァ』は『ブラッドクロス』を飲み込み、ゲラルドごと飲み込んだ。

凄まじい轟音と衝撃波があたりに飛び散った。

「勝った・・。」

そう嘆息する。

「す、すごい!!」

太陽坂さんは三者三葉の言葉で、私を称賛してくれる。

「わたしも、これで一安心です・・。よかった・・。」

流石に魔力を使いすぎてしりもちをつく。

「新条君・・。頑張って・・。」

そうなけなしの気力をふりしぼって呟くと、ずっと聞こえていた新条君達の戦いの音が消えた。終わった・・わけではないようだ。

しばらくすると、今まで灰色だった雲が真っ黒になり、新条君達の方に移動し始めているのが分かった。

「これは・・新条君の技?」

雷をつかっていた彼を思い出す。ピリピリするほどの魔力量。これは、洋介が計り知れないっていうのも納得できるほどだった。

黒い雲から雷が一点に集まっている。明らかに自然現象ではなかった。

どんどん遠方の魔力が強くなっている。

だが、ここでもう一つの魔力も大きく跳ね上がった。すると、天にここからでも見えるほど大きな見たことのない魔法陣が浮かび上がる。

「きょ、極大魔法陣・・?」

そう勘が言っていた。だが、魔力量は未だに新条君の方が上だし、そこまでとてつもないというほどの魔法ではないように感じた。

そして、その刹那、二つの魔法が発動される。

「ぐ・・・!」

今までとは比べ物にならないほどの衝撃、音、光、全てがここまで完全に届いた。

恐らく新条君のものであろう蒼い綺麗な雷が天を突き抜けて青空を作っていた。

魔力が一つ消えた。残っているのは新条君の魔力!

つまり、彼は悪魔の王に勝ったというわけだ。

―と、ここで気づく。いつの間にか魔力による感知ができるようになっている。今までは、こんな離れたところの魔力を感知するなんてことはできなかった。魔法師として成長したことで、新たな恩恵を手に入れることができた。

あたりの魔力も探ってみるが、もう悪魔らしい反応は感じなかった。つまり、もう終わったのだ。人間側の勝利・・といえるかはわからない惨状だが、どうやらゲラルドの話では人間側も察知しているとか言っていた。ということは、今回はあまり犠牲者は少ないはずだ。やっと終わった・・と少しだけ嘆息して新条君が空けた青空を見ながら感慨にふけった。

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