第39話 九條 奏の真価 ③

「これだけですか?こんなもので私に勝つと、そうおっしゃっていたのですか?」

「くそ・・!!」

私は苦悶の声を漏らすしかなかった。

その時、新条君と戦った時のように周りが暗転した。

洋介・・!

今度は目の前に洋介が現れた。

「やあ、奏。どうやら俺は、君に憑く精霊のような存在になってしまったみたいだ。だから今回も助言を言いに来た。」

「せ、精霊・・?」

「うん、そうだよ。外は今は悪魔軍参謀相手に完全に八方塞がりだけど、まだまだ君は戦える。いや、勝てる。なぜなら君は元は多重大魔法使い。それを一つあげて、多重極魔法使いになればいいだけなんだよ。」

「多重極魔法なんて・・。それこそ、この世界に使える人だって聞いたことないよ!」

「ああ、そうだ。恐らくはほとんどいない。だけど、君は世界でもトップレベルの魔法の才能を持っているんだ。俺は精霊になって分かった。この世の魔力の流れとか、あいつは魔力が強いとか、発揮されていないだけで凄い才能をもっているとか。高位の魔法師になれば魔力の流れから相手のある程度の魔力量がわかるだろうが、俺たち精霊はより正確に、しかもその裏まではかり知ることができる。君の中で俺はずっとそれを見ていた。その中でも奏、君はずば抜けている。それも圧倒的だ。俺が今まで見たなかだと、一人の例外を抜けば、あの悪魔王よりも、目の前の参謀よりも、完全に都の方が潜在能力的には上だ。」

「そ、そうなのね・・。でも、一人の例外って?」

「あの、新条とかいう男だ。奴の魔力量は俺でもはかり知ることができなかった。あいつは危険だと、敵に回したら確実にダメな手合いだというのを俺は精霊として感じた。もしかしたら極大魔法師、、あるいはそれ以上って可能性もあるとみている。」

「まあ、、新条君ならそんなにおかしいことじゃない気もするけど・・。極大魔法師って本当にこの世に存在するの?」

「ああ。確実にいる。だが、その人数はおそらく片指で数えられるほどいるかどうかって感じだ。極魔法師のはるか上の次元に極大魔法師はいるからな。そこのところは精霊の俺でもわからないと言わざるを得ない。」

「そうなのね・・。私も、頑張れば極大魔法師になれるかな」

「なれる、と言いたいが、俺はまだ極大魔法師というものを見ていないから一概にそうとは言い難いな。だけど、奏ならなれる!!」

「最後はなんか洋介の主観っぽかったけど・・。ありがとう。気が楽になった。多重極魔法のイメージもなんだかわいてきた気がする!」

「ああ、いつでも頼ってくれ。基本的には応えるから。じゃあ。」

そうして世界は再び現実へと引き戻された。

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