第34話 vs悪魔王ディアボロス ①

俺はまだ雷を纏っている状態だ。故に、スピードは間違いなくこっちの方が上だろう。

「極地抜刀『三日月』」

俺は雷の力で瞬間移動し、ディアボロスを叩き切った。

だが、

「ふんっ。まぁ、悪くはないが、この程度か。」

ディアボロスの表皮には傷一つついていなかった。

「ッ!!」

ディアボロスの蹴りが飛んでくる。俺は地面を抉りながら、数十メートル先へと吹き飛ばされてしまった。俺は起き上がり、軍服についた土ぼこりを払う。

「流石は悪魔の王と言ったところか。」

「おい人間。こんなものでくたばるなよ?お前はさっきのやつらとは格段に違う気配がする。もっと実力をだしてみろ!!」

「ああ。そのつもりだ。」

俺は抑えていた現在出せる力をそっと開放する。周囲の俺の周りの魔力が重くなった。

「ほう。中々じゃないか。」

「さっきとは一味違うぞ?蒼電一閃『雷光』!!」

俺の刀からさっきの数倍の大きさの雷が放たれる。

「これは・・。高位デビルアーツ『ブラッディクローズ』」

ディアボロスがデビルアーツを発動する。ディアボロスの指先には真っ赤な塊が生じ、それが瞬く間に大きくなって、雷を飲み込んでしまった。

だが、俺の技がこんなに簡単にやぶれるはずもなく、俺の『雷光』は『ブラッディクローズ』の中で爆発した。周囲に凄惨な衝撃波が飛び散る。

俺は刀を大きめに振って、その衝撃波を打ち消した。

「これを破ったのはお前が初めてだぞ、人間。やるではないか、認めてやろう。」

そこには、衝撃波によって右腕をもっていかれたディアボロスの姿があった。

だが、破損した右腕はすぐに再生してしまった。

「お前もこんなものではないだろう?人間から悪魔になったその力を、見せてみろよ。」

「・・人間、どこでそれを知った?」

「お前を見ていればわかる。高位デビルアーツに、極魔法。これらを扱え、さらに完璧に自我を保っている。これが示すのは、お前は元人間で、極魔法師。自らの意思で悪魔に堕ちたくずということだ。」

「屑、か。クハハハハ!!!われが屑だというか。それにその情報、お前は何故それを知っているのだ?通常の人間ならば知るはずはあるまい。」

「・・そのうちわかるさ。死ね。蒼電一閃『閃光』」

俺は九條の極魔法を打ち消した時と同じ技を使った。

極細だが、故に超強力な雷は、ディアボロスの心臓部分を貫通した。

ディアボロスは死んだ、かに見えた。

「グハハハァァァ!!そのうちわかるだと?お前のような雷使い、我は知らぬぞ。それに、よく思案すれば、お前が何者かなどどうでもよい。どうせ我に殺されるただの人間なのだからな。本気を見せてやろう。高位デーモンアーツ『リリースストライク』!」

その瞬間、ディアボロスの周りが黒い可視の魔力で埋め尽くされた。

俺は危険を感じて、数十メートル先へとバックステップで退避した。

禍々しい魔力が天まで昇っている。この魔力量、極魔法師の中でも上位の存在だろう。

魔力が飛び散る。そこにいたのは、体が人間サイズに小さくなったディアボロスだった。

「この姿になったのも久方ぶりだ。いつぞやの我は、高位悪魔のことを見ていることしかできなかったからな。あのときの憎しみは忘れない。我が同胞を、我が王を、そして時間の流れをつなぎ合わせたその大罪、人間はやはりすべて死ぬべきなのだ。」

さっきのディアボロスの力が凝縮され、さらに何倍にも増幅したほどの魔力量を感じた。

「ん・・?」

だが、ここでさっき太陽坂の面々に張った『雷壁』に感知があった。つまり、太陽坂と九條がいるところに敵が来て、攻撃を仕掛けてきているということだ。『全視』で見てみる。

見えた、一体しかいないが、魔力量は他の悪魔の比ではない。こいつがゲラルドとかいうやつだろう。九條も応戦しているが、勝てるかどうかはわからない。けれど、今の俺には援護に行く余裕もない。とりあえず、今は目の前の悪魔を倒す。九條のあの返事を信じるしかない。今の九條なら・・勝てる可能性はある。

「こいよ。今度はお前から。」

俺は挑発的にディアボロスに言った。

「クハハ!!いいだろう。悪・極魔法『デーモングランドデス』」

すると、辺りが真っ黒に染まる。俺は完全にそのエリアに閉じ込められてしまった。

「早々に死ね、人間。」

闇が俺に迫ってくる。俺は無抵抗にその闇にのまれた。

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