第31話 悪魔の襲来

「もう大丈夫です。」

俺はそう言葉をかけた。

「新条さん!!」

悲鳴を上げたり、泣いていたりしていたメンバーはみんな、安堵の表情を浮かべて安心していた。

「今から皆さんでこの台から降ります」

「でも!私たちじゃこの高さから降りられませんよ!」

「いや、できます。僕がいますから。とりあえず、皆さんは僕に続いてジャンプしてみてください。僕を信じて」

「ジャ、ジャンプ・・?信じてはいますけど・・それでもそう簡単にできることではありませんよ!」

「じゃあ、僕がその方法で一回下へと降りてみますから、みなさんはそれをちゃんと見ていてください。大丈夫です、ちゃんとできますから」

俺はそう言って、そのままジャンプをして台から飛び降りた。そして、しっかりとわかりやすいように着地する瞬間に

(蒼電一閃『縮雷しゅくらい』)

すると、見えないくらいの細い雷が俺の着地する衝撃を緩和してくれた。

雷は見えないにしても、明らかに速度とか衝撃が緩和されたのは見てわかるだろう。

「す、すごい・・!」

そう言われているのが聞こえた。

「ほら!みなさんもどうぞ!」

俺は下から上にいるみんなに喋りかけた。

「じゃあ行きますよ!」

そう言って次々とメンバーが降りてくる。

その全てに俺は同じ技をかけて、衝撃を緩和した。

「うわっ!」

驚きの声を上げているメンバーもいた。

「すごいですね。どういう仕組みなんですか?」

そこに、さっきまで一緒にいた九條も近づいてくる。観客はもうほとんどが非難し終えていて、転移魔方陣によってどこかしらに移動していると思う。その証拠に、もうこの会場内の全視で見える範囲には人はいなかった。逃げ足は速いらしい。

「これも奥の手のひとつですよ」

おれはそう言って詮索をごまかした。

「新条さん今回もありがとうございます」

東雲さんから代表してお礼の謝辞を述べられた。

「いえいえ、それに、まだ終わってませんよ。もしかしたら、この会場の外は他の悪魔がいるかもしれません。」

「確かに!」

九條も俺の意見に賛同してくれた。

するとその時、ドン!!というかなり大きな音がこの会場の外から響いてきた。

それとともに、地震のようなものが起こって地面が震える。

「これは・・」

もしかしたら会場の外は凄いことになっているのかもしれない。

衛術協会の者たちがここにきていないことも、外で何かが起こっているのだと仮定した場合説明がつく。

運の悪いことに、今の俺の『全視フル・ビジブル』では、外の様子をはかり知ることはできない。だが、外に出れば話は別だ。相当先までみまわすことができるようになる。

「九條さん、太陽坂のみなさん、まずは外を目指しましょう。僕が穴をあけますから、みなさんはそれにつづいてください。九條さんは、太陽坂さんの後ろ側について、万一の時のために備えてください。」

「「「「「はい!」」」」」

元気のよい返事でこたえられた。

「では、開けます。」

実はこの会場は設備同様素材も一級品で、ものすごく硬い。が、俺とこのあいぼうならできないことはない。とはいえ、おそらくはクライストの槍よりも、悪魔化した渡辺の表皮よりも断然に硬いだろう。

「極地抜刀『満月』!!」

俺は渾身の力を込めて極地抜刀術を放った。

ゴン!!という音とともに会場の壁が綺麗な丸の形にくりぬかれる。

「では、いきましょう」

太陽坂のメンバーの目が点になっていたことは、正直気づかなかった。

「・・はい!」

九條だけが返事をしてくれた。

「それにしても、新条さん・・。この会場の素材ってダイヤモンドよりも固いんですよ・・?よく刃こぼれもなしに切れましたね・・。」

穴の中を進んでいいるときに、白川さんから突然話しかけられる。

「まあ、この刀と僕が合わされば切れないものなんてないですから」

そう俺は笑って見せた。そんなこんなで穴を抜け、外が見回せるようになる。

「な、なんだこれは・・・」

辺りにあった建造物はすべてなくなり、辺り一帯で無事なのはこの競技場だけ。

他は文字通り更地になってしまっていた。

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