第30話 安穏の瓦解
「さぁ、それでは閉会式、授与式の前に新条君の担当アイドルである太陽坂45さんによる150万人+ネット配信の前でのスペシャルライブがはじまります!入場!太陽坂45さんです!!」
琴原のアナウンスと合図により、可憐な衣装を着た太陽坂の面々が戦闘場の真ん中に集合してくる。
そして、全員が中央に集まり終えたその時、戦闘場が正方形に割れ、他の部分とは分離した状態で第一階層の目の前まで上昇してきた。流石に、それは魔法によるモノではなく機械仕掛けではあるが、これでようやく部隊が整ったというわけだ。俺も任務を完遂した自分へのご褒美としてこれをしっかり見ていこう、と思った。
「私たちが今回このような凄いステージに立てたのは、間違いなく新条さんのおかげです!まずは、新条さん、本当にありがとうございます!私たちは、まだデビューしてから数年しかたってはおらず、坂道グループの中に本当に入れたのかがずっと不安でしたが、今回のステージを機に、絶対にこれからも邁進していきます!ですから、どうかみなさん、今日はたくさん盛り上がって、私たちのことを応援していただけたら幸いです!」
太陽坂のキャプテンが素晴らしいコメントを述べる。観客は、全員が高校生ということもあって、聞きこんでいる人ばかりだった。ほとんど同年代の人がこうやって輝こうとしているのだ。先生の有難い人生談をきくのとは随分違う。
「すごい方々ですね・・。太陽坂さんって」
九條がそう独り言のように言っている。
「そうですよね。ステージに上がった瞬間スイッチが入ったように見えます。」
一応前から応援していたため、俺は九條に対して得意げな顔をした。
「これからどんなライブになるのか、私はライブというものに行ったことがないのでとても楽しみです!」
そういえば、九條は超有名な高校生モデルだった。そんな人が、人目が山ほどあるライブに行けるはずがない。
有名人の性というものを俺は感じた。
「そうですか、じゃあ尚更今日は楽しまないとですね。」
「はい!」
そんなこんなで九條と話しているうちに、ライブが始まるようで、まわりが少し暗くなり、会場のっ天井の開閉式のドームも閉まった。
「さぁ、それでは、舞台も整いました!それでは一曲目『ドキッ』です!」
歌が始まる。こんな大勢の前でも彼女らは一切臆することなく、緊張してるだろうにそれも表には出さず、いつも通りのベストパフォーマンスをしている。となりの九條なんかは空いた口が塞がっていなかった。観客席ももちろん大盛り上がりで、会場全体が熱気に包まれていた。そんなこんなで、一曲目が終わる。
「続いて二曲目『フェーデーエーエフ』です!」
そう琴原がアナウンスをした瞬間、辺りにともっていた明かりが突然消えた。
観客席ではどよめきが起こる。
「これは・・?」
「どうやら停電のようですね。しかし、この最新鋭の設備でいきなり停電なんてありえません。九條さん、一応臨戦態勢をとってください。」
俺はこの停電で頭の中にあった点がすべて繋がり、線となった。おそらく悪魔が攻めてくる。渡辺を悪魔にしたその元凶が攻めてくる、そう歴戦の経験で悟った。
ここでようやく会場内の非常電源装置が作動し、辺りが明るくなり、会場の天井も開き始めた。
「ギャギャギャギャ!!」
すると、人間のものとは思えない叫び声が聞こえてくる。会場の空いた天井には、翼の生えたプテラノドンのような悪魔がいた。そいつは、完全にターゲットを太陽坂にしているようで、急降下を始めた。ここでようやく衛術協会も動き始め、観客も会場内の転移魔方陣へと移動していた。
だが、第一階層付近のまま移動できない太陽坂の面々は、逃げるには第一階層分をジャンプで降りないといけない。相当な高さだから、下手したら死んでしまう。
しかし、翼の生えた悪魔は、そんなこと関係なく太陽坂に迫っていた。
彼女らの悲鳴も聞こえる。
「極地抜刀『
俺は鞘から刀身を一瞬たりとも出さずに、その悪魔を真っ二つにした。そのまま彼女らのいるところまでジャンプし、同じ台に乗る。
「もう大丈夫です。」
俺はそう言葉をかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます