第21話 多重魔法vs合成魔法 ①

続く準決勝第二試合、選手の入場はすでに済んでいる。


この戦いで勝った方と、俺は決勝で戦うわけになる。


多重魔法使いの九條、二属性大魔法使いの渡辺、どちらも強敵だろう。


「奏。俺はお前に勝つためにこれまで修行をしてきた。鈴花に勝ったからって、俺にも勝てると思うなよ?」


「・・。洋介、まわりが見えていないあんたの目を戻させてあげる。」


渡辺と九條がそういうやり取りをする。九條は明らかにキレているようだ。


たぶん椎名の件でだろう。勝つことしか考えていない渡辺を変えたいと思っているようだ。


「それでは、準決勝第二試合。九條 奏vs渡辺 洋介の試合を始めます!」


琴原のアナウンスによって、試合が開始した。


二人ともすごい圧を放っている。因縁の相手といったところだろうか。


渡辺が最初に魔法を放った。


「大魔法『メガサンダー』」


魔法陣の中から黄色の大きな雷数個が出現する。いきなりの大技だ。


発動後、すぐに渡辺は九條との間合いを詰めるべく走りだした。


ここで九條も動く。


「大魔法『ブレイズ』」


九條はその魔法を、自分の目の前の地面に放った。


今回は戦闘場の表面が土であるため、土煙があがりやすい。


それを利用して、彼女は目くらましに土煙を起こした。


渡辺は『メガサンダー』の発動を中止した。


「策はそれだけか?大魔法『フローズン』」


渡辺が依然天衣を凍らせた魔法で、九條を凍らせようとしている。


「そんなわけないでしょ?四重大魔法『グランドファイア』!」


こちらも椎名との戦いで使用した技を使う。だが、志向を変えてきたようで、今度は自身の前にすべての魔法陣を配置し、凍るのを防いだ。


ここからだ。まだふたりとも余力が有り余っているように見える。


氷と炎がぶつかり、昇華した水蒸気があたりに霧散する。


さらに、空中には土埃も交じっており、空中には茶色の粉塵が舞っていた。


「五重大魔法『グランドボム』!」


九條が魔法を発動する。すると、凄まじい轟音とともにあたりが大爆発を起こした。


粉塵爆発だ。土埃を媒質とした爆発が広範囲で起こった。


衝撃波が場内を駆け巡るほどの大爆発だった。


九條の狙いは完全にこれだろう。


昔、小麦粉をわざとこぼして彼氏を怒らせることで煙草を吸うように促し、そのまま粉塵爆発で殺したが、無罪となった女性の話を聴いたことがある。


「ふっ。俺がお前の狙いに気づかないとでも?」


そこには氷の盾を作って衝撃を完全に打ち消した無傷の渡辺の姿があった。


「わかってる。こんなもので倒されるなら、私は洋介をライバルだと思ってない。」


九條はそう言い放った。

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