第15話 雷魔法vs日陰抜刀術 後編

渡辺は右手を前にかざした。


「大魔法『サンダーストライク』」


そう言った途端、彼の目の前にはさっきのものより二回りほど大きい魔法陣が現れた。


その中心付近から雷が飛び出す。その魔法は、凄まじいスピードを持った、威力よりもスピード重視のもののようで、弾丸のようなスピードで天衣に向かう。おそらく威力もさっきの比ではないだろう。


天衣は抜刀の体制を取る。


「日陰抜刀術『厳撃げんげき


そう呟くと、鞘から刀身を振りぬくそのままの勢いで雷と相対あいたいした。


「ぐっ・・!」


天衣が声を漏らす。やはり大魔法は強力なようだ。


だが、なんとか防ぎ切り、またもや雷を無力化した。


「ほら、できましたよ、、!」


天衣がそう言うと、


天衣の下に大きな魔法陣が出現した。


「これで終わるはずないだろう。大魔法『サンダーフィールド』」


天衣の周り、半径30mほどの四方八方から雷が出現し、魔法陣の領域は全て雷で覆われようとしていた。


「これは、、」


天衣はそう言い、逃げる場所は上空しかなくなったため、大きくジャンプをした。


さらに渡辺の追撃が始まる。


「大魔法『メガサンダー』」


すると、大魔法陣の中からサンダーストライクとは比べ物にならないほど大きな多数の雷が、天衣の方に向かっていった。


傍から見たら絶体絶命。ただ、幼き天才はどうするのかを俺は見ていた。


「・・・!!日陰抜刀術奥義『虎陰とらかげ』!!」


天衣が技を発動した。すると、彼の振るう剣が高速で回る。おそらく他の観客には見えないだろう速さで彼は剣を回し、そのままの勢いで空中で横に大回転した。流石奥義なだけあって威力は大きく、周囲に風と衝撃波をまき散らしたようだ。


渡辺は何も言わず、バックステップで後退した。


するとその瞬間、渡辺が元々いた場所に刀が飛んできた。


もちろんそれは天衣の仕業で、奥義のまま放った刀は戦闘場に突き刺さり、周辺にはひびも入っていた。


「見切りましたね、、。渡辺先輩。お互い最大の技を出したんです。そろそろ終わらせましょう。」


「・・?何を言っている。いつ俺が本気を出したと言った?俺は次の準決勝まで本気は出さないぞ。」


「今のメガサンダーがあなたの最大技でしょう?それは情報で仕入れ済みですよ。あなたが主席を獲得した時の技はメガサンダーだったはずです。それが最大の技じゃないわけありませんよ。はったりは僕には効きません。」


「あの時から俺が成長していないわけないだろうが。お前は剣術の天才だが、頭は弱いようだ。」


そう渡辺が言うと、


「大魔法『フローズン』」


彼はそう言った。すると、天衣の足元周辺が一斉に凍り、身動きを取れなくなってしまった。


そして、効果は天衣の体にも及び、手を凍らされてしまったことで刀が抜けなくなってしまった。


かろうじて口は動かせることのできる天衣が呻きながら言う。


「二属性の大魔法・・!?そんなの衛術協会でも高位の魔法師しかできないはずです・・。それをなぜあなたが、、。」


渡辺がゆっくり天衣に近づく。


「俺はかなでに勝つために努力して身に着けたんだ。こんなところで、お前みたいな阿保に負けるわけにはいかないんだよ。」


ついに天衣の眼前まで迫った渡辺が、天衣の顔の前で言う。


「死ぬか降参するか、選べ。」


渡辺は、手をこれ見よがしに翳すふりをしながら天衣を脅した。


「わかりました・・。降参します、、。」


そして、音が鳴り、空中モニターに字が映し出される。






The end of duel


winner、渡辺 洋介




「第三回戦、勝者は渡辺 洋介選手です!剣術の天才にも渡辺選手は圧勝してしまいました!」


琴原の声の後に。主に男の大歓声が響いた。


渡辺は男子に人気で、天衣は女子に人気だったらしい。


もしかしたら、天衣の人気に嫉妬した男子がそれと戦っている渡辺を応援しただけなのかもしれない。


とにかく、今回の渡辺の二属性の大魔法使用は驚きだった。情報にはなかったし、天衣の言うとおり、二属性の魔法行使はそもそも難しく、さらに大魔法ですれをするのは優秀な魔法師のみだろう。


九條 奏の多重魔法陣に、渡辺 洋介の氷、雷属性の大魔法行使という高等芸当を高校生で使えるのは純粋に凄いと思った。


天衣の剣捌きは、確かに凄かったが、やはり柳生一門も衰退しているようで、昔読んだ柳生一門の筆頭剣士の逸話と比べると、いささかがっかりだった。


次の第四回戦は、多重魔法陣を使う九條 奏と、現役魔法部隊所属の椎名しいな 鈴花だったはずだ。そのあとは俺の準決勝があるから、試合を見ながら最後の休憩をしようと思った。


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