第3話 予想外の激励
次の日、いつもと同じ時間に目を覚ます。昨日のことを思い出し、少し重くなる体を引きずりながら朝食を済ませ、学校へと向かった。
昨日あんなことがあったとはいえ、俺は通学の時価は結構好きだ。この時間だけは、面倒なことを何も考えずにすむ。この世界は、面倒なことばかりだからな。
そんなこんなで学校に着き、自転車を学校の駐輪場に置く。
とここで、ふと視線を感じた。
その方向を見ると、この学校の女生徒二人が俺を見て何やら噂話をしていた。絶対に大会のことだよな、と内心思いつつ、教室へと向かう。
これで、俺の日常は完全に崩壊した。学校でわざと目立たないように生活していたことの徒労感がぬぐえない。
やはり今日はやたらと色々な人に見られる。それは、教室に入った時も同じだった。
「おーい!輝!お前なんであんな凄いメンツの中に選ばれてるんだよ!」
と、心底疑問そうな表情をした錬が俺のほうに近づいてくる。
「俺もわからないよ。なんだって俺が。」
理由は分かっているが、俺は、悟られないように道化を演じた。
知られるわけにはいかない。錬まで非日常に巻き込みたくはない。
こいつは、まがりなりにも俺の親友だから。
「まぁなにかの偶然だろうな。でも、俺は、というか俺らのクラスは輝だけを応援するよ!
…運悪く初戦はあのクライスト=メルカリウスだがな…。」
錬がそう言うと、クラスメイト達はほぼ同じタイミングで「そうそう、頑張れよ!」「あのイケメンをぶっ飛ばせ!」「新条君、応援してるよ」などと、思い思いに激励の言葉をくれた。
正直、俺は選ばれたことについてみんなはよく思っていないんだろうな、と考えていたから、少しだけ面食らってしまった。だが、恐らくこの任務の後、俺はこの場所に戻ってくることは二度とないだろう。錬とだって、もう会えるかわからない。少しだけ寂しい気分になった。
「みんな、ありがとう。できるだけのことはやってみるよ。」
俺はありきたりなセリフで返した。そして、チャイムが鳴る。
教師が入ってくる。教師の表情をうかがうが、特段いつもと違う感じはなかった。
そして、朝の
「みなさんももうご存じかと思いますが、新条輝君が来月の魔法剣技大会に出場するのが決まりました。学校としても応援するので、再来週に学校行事として新条君の激励会を行います。これは、学校としても名を上げるチャンスなので、皆さん応援しましょう」
生徒は元気よく返事をする。そんなこととしなくても俺が負けることはないし、勝ったあと、祝福される機会もないから別にいいんだけどな。
と思いつつも、応援されることについては悪い気は特にしないので、「ありがとうございます」とだけ返しておいた。
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