第6話② 許してなんて言わないが
フーッ、と息を吐けば、身体に悪い紫煙が空気に霧散する。
タバコは嫌いだ。
依存性があって、煙たくて、不味くて、他の人にも害があって、慣れるまでは食事も味がしなくなる。
こんな世界で吸ってる奴なんて信用もされないだろう。
なにが原因で死ぬかもわからないのに、煙草なんかを嗜む奴はイカれてると。
別にそれで構わない。いや、私にはむしろちょうどいい。
この世界で生き残り、身体を重ね、喜怒哀楽を共にしてきた彼女の最期の約束を果たせなかった私には。
「...悪いねキャミィ、一緒に逝ってやれなくて」
焼け落ちた教会越しに彼女に詫びて。最期まで握ってくれた掌の感覚を思い出してグッと握りしめる。
自分が死なない身体だなんて知らなかった。知ってたら、キャミィと一緒に自殺なんてしなかったのに。
スゥーッ、と吸い込み、また吐く。
やっぱりキツイ。たぶん一生慣れないと思う。
彼女が見たら『そんなものやめればいいんですよ』とでも言ってくれるだろう。
そんなことはわかってる。これは私の一方的な贖罪だ。
あなた以外には身体を許さない。あなた以外には誰も背負わない。
彼女とまた会う時に本当に私が特別だったんだねと喜んでもらいたい。
そんな押し付けがましい我が儘な楔だ。
「あんたと会うのは、全部終わってからだ」
不死身の身体というのならちょうどいい。
何百何千年とかかろうが、この世界がこうなった原因を突き止める。突き止めて、私たちに詫びさせる。
どこぞの誰かでも。神様でも悪魔でも運命でも。私たちから幸せを奪った罪は必ず償わせてやる。
またね、と約束し、吸い殻を落とさぬよう回収し、私はあてもなく足を進めた。
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