13 2人目の魔法使い
渡はブライトコクーンを使って飾へと姿を変え、どこだかよく分からない、異空間のような場所にいた。
「はああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
飾は片腕で鎌を起用に振り回し、周囲の黒い人影を切り裂いた。
だが人影は後から後から湧いて来る。
『なんすかこいつら! 凄いしつこい!』
今は彼女の内側にいる渡が、共有している視覚から見えるものについて訴える。
真っ黒なマネキンだった。それが赤だったり青だったり、目がチカチカするくらい様々な種類の色のマントを羽織っている。背丈は飾と同じくらいから、少し小さいもの。倍の高さはあるものと、それも多様だ。
「こいつらは『人呑みサーカス』という災禍の化身だ。分類的には、幻の化身になる」
『幻? レアものか何かなの!?』
「そういう幻じゃない。人間に幻覚を見せて誘い出し、食ってしまう。危険な連中だ」
2メートルを超える人影――サーカス団員が3体、襲いかかって来た。それも左側から。
「こいつらっ! どこからなら反撃されにくいか、学習し始めてる!」
飾は隻腕で、左腕がない。従って武器を振るうのは右側がメインとなり、左側への反撃には向いていない。気づいていても、対応が遅れてしまった。
「まずっ………………!」
このままやられてしまうのか、そう思った瞬間だった。
「ウィップ・インパクト!」
地面から突然、蔓が生えてきた。細くて小さいものではない。直径1メートルはあろうかという、超巨大な蔓だった。それらが団員を薙ぎ倒していく。
飾が「この魔法は――」と呟く。何か覚えがあるようだった。
そう、魔法。飾が使うのは風や大気を操る術だ。蔓なんて、植物を操る力は持っていない。つまりこれは、
『俺たち以外の、転生者?』
渡の予想通りだった。遥か後方から、人間が走って来る音がする。飾が振り向くと、その先には翡翠色の短髪の青年がいた。巨大な三つ又の槍を携え、ジャンパーに軍手、ジーンズに長靴と、まるで農作業でも始めるかのような格好をしている。
「
飾が叫ぶ。それが聞こえたのか、翡翠色の青年はパチリとウインクした。
「久しぶりだね、飾ちゃん!」
「君はいつの間に…………」
驚いて立ち竦んでいる飾を追い越し、聖は団員の群れに飛び込んでいく。
「ルート・バインド!」
術名を叫びながら槍を地面に突き刺す聖。すると地中より、巨大な木の根の群れが現れた。だがそれらはあまりにも大きすぎる。1本が10メートルを軽く越している。箸でハエを捕らえるのが難しいように、団員たちは木の根と根の間を器用にすり抜けていく。
「くっそ――。だったら!」
聖は一度槍を地面から抜き、今度は虚空へと突き出す。
「ブランチ・ピアス!」
術名を唱えた直後。根は動きを止めた。代わりにそれらの至る所から、大きさ太さ様々な枝が生える。その内の1本が、赤マントの身体を貫いた。
「ヒエエエエエエエエエ!!!」
それが断末魔の叫びだったのか、枝に串刺しにされた団員は動かなくなる。傷口からは溶けた蝋のような血が流れていた。
サーカス団員の声を聞いた飾は、そこでようやくハッとして、早足で聖に駆け寄る。
「聖。君も転生していたとは、思いもしなかったよ」
「俺もだよ、飾ちゃん。俺たちずっと1人で戦ってきたんだから」
「いつの間に覚醒した?」
うーん、と聖は考え込む。
その隙を狙って、小学生くらいの背丈のオレンジの団員が忍び寄って来た。気が付いた飾が、鎌を振るう。
「ハリケーン・ヨーヨー!」
「ヒャアアアアア!!!」
2、3人の人影が切り裂かれた。
「ありがと。それで、俺たちは――」
「ブラスト・スクリュー!」
再び襲いかかって来る敵。
「ああっもう! 話は後だ、まずはこいつらを殲滅する!」
「おっけっけ~。でもさぁ、俺細かいヤツ相手にするの苦手だから。俺の術で行動範囲を制限するから、あとは飾ちゃんに頼むよっ」
「…………心得たっ!」
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