第7話 魔導人形な人形師
今までエウと青年の行動を伺っていたかのような態度を見せる魔導人形。
そんな彼女が発した声によって、天井に吊られていた人形たちは次々に床へと
向かって降りていった。
屋敷の中へと足を踏み入れてからというもの、驚かされてばかりで状況の整理が
追いつかないエウと青年であったが、そんな2人をよそに人形は淡々と話を始める。
「ようこそ、私がここの主にしてこの子たちの人形師ストレジアよ、まさか誘った子たちがどちらも来てくれるなんて嬉しい事ね」
(……え? 人形師……?)
自身の話を聞いて疑問の表情を浮かべるエウと青年に対し、ストレジアは見慣れた光景を見るような態度で言葉を続ける。
「貴方たちの言いたい事は分かるわ、魔導人形の身でありながら人形師だと言った事に驚いているのでしょう? でもからかっている訳ではないの」
ストレジアは静かに話を聞いていたエウと青年にそう答えると、2人がここへ来た目的の題を切り出した。
「このあたりの話は追々するとして、まずは渡した紙に記載しておいた通り
書いてもらったものを見せて頂戴」
その言葉を聞いた2人はそれぞれ鞄の中から1枚の用紙を取り出すと、それを
ストレジアへと差し出した。
受け取った2枚の用紙をストレジアは真剣な眼差しで見つめると、その様子を
見ていたエウと青年へ再び声を掛ける。
「エウへルピアちゃんにアフィエス君ね、早速で悪いけど貴方たちに仕事をお願い
するわ」
(……!?)
自身の言葉に困惑する2人を見て、ストレジアは冷静に問い掛ける。
「……? 貴方たちは働くためにここへ来たのでしょう?」
「確かにそうですが……いいんですか?」
「僕たちがここで働いても……?」
それぞれ言葉を述べる2人にストレジアは穏やかな声で答える。
「ええ、私が確認したいことはほとんど分かったし、後はしっかり貴方たちが
人形師のお仕事が出来るかだけね」
「と言っても、貴方たち真面目そうだから、もう決まったようなものだけど」
「私たち、何か見られていたんですか?」
「貴方たちは宙吊りになったこの子たちを見た時、まずはその意図を読もうと
したでしょう?」
「はい、無意識でしたが……」
「私……私たちとしては魔導人形の考えも尊重してくれる子が必要なの」
「それと、あまり魔導人形を見慣れない子だと驚いて逃げ出したりするから、あれで
ここへ来た子の事が大体分かるのよ」
言いながらストレジアは何かを思い出したような笑みを浮かべる。
「そういう訳だから、最後に貴方たちの人形師としての力を見せてもらう
だけ……あ!」
話の途中でストレジアは驚いた声を上げる。
「ちょっと待ってて! 貴方たちのお洋服を持ってきてあげる!」
そう言ってストレジアが駆け足で屋敷の奥へと姿を消すと、少し経って
戻って来た彼女の手には衣服が抱えられていた。
「はい、良かったらこれ着て」
2人はストレジアが差し出した衣服に視線を移すと、言われるがままに
その衣服を受け取った。
「貴方たちのお洋服が汚れてしまうでしょう? 私の見立てだと着れると
思うのだけれと……」
手渡された衣服を見て、エウは複雑は表情を浮かべていた。
(汚れるって……この服、私が普段着ている服より高価なやつだよなぁ……)
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