第二章 第一節 天界その①

 天界に招待された聖士は何故か牢獄に収監されていた。そもそも天界にも牢獄が存在することに驚きだ。「以前にも人間界から人を連行したのか?或いは・・・」と牢獄で眼鏡を光ながら言った。偶然にも牢の扉を背にしていたため、そこにもう一人の人間がいるとは微塵にも思わなかった。扉の開閉音に気付き振り向くと普通に居てただただびっくりした。もう一人の彼の名前は長道千里。彼もまた天使に招待され、ここに連行されたらしい。自分は彼の存在に非常に驚いているのに対して、彼はこの状況に慣れているようで特に挙動不審になることもなく、牢の中で静かにしていた。それからしばらくして自分と彼の会話がほんの少しだけあった。

 なんだかんだで牢獄に収監されて一時間程度で開放。各々違う部屋に連れて行かれ、天使からの問いに幾つか答えた。共通して言われたのは『下層部には絶対に行かないこと』だった。この天界には大きく分けて三つの層があるらしく、儀式など行う上層部・生活関連や外部から来る来客をもてなす中層部・それ以外は下層部になっているらしい。幾つかの設問を終え、正式な客人扱いになり天界の街並みを拝むとっても良い機会。「さて、何をしようかな?」と聖士は悩んでいる最中、千里はとっとと行ってしまう。

 「千里。どこに行くんだ?」

 「あん?決まっているだろう?便所だ。」

 決め顔で『便所』を公言されても困る。

 「第一に約束である上層部での儀式には、中層部の中心に位置するエレベーターみたいなもので上に行かないといけない。でも、俺らみたいな正式な客人であってもエレベーターを動かすのは出来ない。約束の時間までにそこで待てばいいんだろう?なら、それまでは自由行動だ。じゃあまた約束の時間で会おうぜ。」

 「それならいいけど・・・」

 長道は聖士の前から姿を消した。

 

 長道千里は便所に行くことなく、下層部へ続く門に向かっていた。

 「『じいちゃん』が行った場所まで・・・」

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word of world 久遠文嶺 @akaki-murasaki

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