第一章 第四節 現代その④
この頃から彼女は自分の事を【王子】と呼ぶようになった。彼女の友人が何故そう呼ぶのか訊いてみたところ、彼女は【王子】から奪ったノートの一片を見せてこう言った。
「たった一時間の授業中でこれを書いたらしい。」
「これを⁉」
友人も驚いたほど、ノートに書き込まれた落書きは授業と並行して書くものじゃない。そのノートには有り得ない程の情報量が緻密に書かれていた。
「だから色々な意味で【王子】と呼んでいる。」
「なるほどね・・・」
そんなある日、朝の天気予報では雨が降るとは言っていなかったが、学校に着く頃にはどんよりとした雲が天を覆っていた。帰る時にはおそらくそれなりに降っていると思う。毎日のようにくだらない攻撃を受け続け嫌になっているのに、更に嫌気が加速して身も心も動きが鈍く一日中机に突っ伏していた。気がついた時には放課後でクラスには自分一人だけで誰も居なかった。聖士は部活に所属していない為、さっさと帰り支度を始めた。その時、ある物が目に入った。それは真っ白の傘だった。明らかに高級そうな傘で、どこにでもある安っぽい傘とは違う。「この教室にあるってことは誰かの私物なのか?だとしたら誰だ?」と思ったが、こんな高級傘を所持できる奴なんて一人しかいない。そこで少しいたずらを考えた。自分がこの傘を持って帰れば、彼女は濡れて帰ることになる。それは彼女に対しての仕返しだ。日頃の行いを悔いてくれればイイケド。その後の事はその時まったく考えていなかった。意気揚々とその傘を自宅まで持って帰った。
その夜、奇々怪々な現象に遭遇した。
なんと天使が現出したのだ。しかも、超がつくほど美人な女性だ。彼女曰く「貴方は選ばれた人で今から天界へ招待し然るべき対処を施した後、新たな創造主として覚醒します。」要は自分が新しい神として君臨する。というあり得ない力を得るらしい。そもそもなぜ自分なのか?と問うと天使は答えた。
「この傘を視認し違う場所に移動。つまり、持ってくることが出来た存在が貴方だった。ただそれだけです。」
ということはこの高級傘はあの憎むべき奴の私物では無かった。それでも、自分の心は高揚していた。異世界の力が手に入れる機会を得た事に・・・・早速、自分はその天使と共に天界へ向かった。
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