第一章 第三節 現代その③
納嶋木神春と同じクラスになって一か月以上が経過した。彼女の不必要な攻撃は神経を必要以上に削る事態になってはいなかった。彼女もその違和感、異常さを感じていた。
井ノ原聖士にとってこの世界の事象はそこまで興味を持つものではなく、日常の一コマでしかなかった。彼にはそれ以上に興味が湧く事象が存在していた。それは【自らの想像で別の世界を創造する】ことだ。誰にも迷惑をかけずにその世界を創造することは勉強以上に意義があった。だから、彼女の不必要な攻撃にも余裕で耐えることができた。普通の人なら精神障害を起こしてもおかしくない状況でもだ。
彼女は彼に対してそこまで興味が無かった。いつものようにクラスの皆の心を掌握し彼に敵意を向かわせひとりぼっちの状況を疑似的に作りだした。もし彼が教師陣や先輩方に援助を請うた場合でも絶対に手を出してはいけないように指示を出していた。大抵の生徒は心を病んでしまうケースがあったが、彼:井ノ原聖士は違った。彼はクラスの中でもいつもひとりぼっちで平然と暮らしていて、助けを求めることもしなかった。それを観て彼女は少し彼に興味を持った。『井ノ原聖士は一体どの程度で壊れるのか?』マッドサイエンティスト並の考え方をした彼女は彼の周辺の環境を破壊し始めた。でも、結果はあんまり変わらず。ふと彼女の脳裏にある人がよぎった。その人は幼年時代に一緒に遊んだ男の子。自身と性格が全く合わず、遊ぶ度に苛立った記憶がある。その人との思い出は、自身にとって汚点とも思える出来事だった。なので、思い出すのも腹立たしい。今のこの状況も過去の出来事の苛立ちに酷似していた。
彼:井ノ原聖士にも憎悪の感情はある。ただその感情が芽生えるのは、自身の想像上の世界を侮辱されたときだけで、それ以外ではそこまで感情が動くことは無い。だが、このときは納嶋木神春の不必要な攻撃を受け続けて多少精神のバランスが崩れていたのも一因あり、『この腐った世界を自分の想像で塗替えたい』と強く強く願ってしまった。
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