第一章 第二節 現代その②
家に帰った井ノ原はずっと納嶋木神春への対抗策を考えていた。
ああなってしまった事は致し方ない。あのままノートを放置していても遅かれ早かれ身元がばれて、今と同じ状態になっていたかもしれない。いやそれ以上に危険な状況になっていてもおかしくはなかった。けれど、今も危険な状態には変わりなく対策をしなければ、この学校に在籍できなくなってしまう可能性だってある。どの程度の攻撃が来るかはあいつの周りに漂っている黒い噂で充分過ぎる検討がつく。唯一の救いと言えば『クラスが違う』という事である。四六時中攻撃が続くようでは自分も危ないが、たったそれだけでも心が安堵するのが分かった。けど、心配はしている。あいつがどんな手を行使して反逆をする者を徹底的に潰していった数々の黒い噂がある。だからこそ、油断は出来ない。
翌朝、学校に行くために家から出た。途端、空気がいつもと違う。一気に手汗がどっと出て、向かう足は急に重く空気も明らかに薄い。井ノ原の頭の中では「学校に行かない」という選択肢は最初から無かった。どんな理由であれ学校を休む行為にはデメリットしかなく、ましてや親に迷惑はかけられないと思ってしまった。
薄い空気の中、必死に息をして前へ、学校に行く井ノ原。学校に着くとより重層な空気が待ち受けていた。
「うわー吐きそう。」
ここまで来て早々に早退をするのも嫌だし、教室で少し休もう。彼は教室の自分の机で休んでいた。この時、すぐに違和感に気づいていたらこの後の恐怖も衝撃もだいぶ和らげることができたのに・・・その時の自分はまだ気付かなかった。
担任の教師が来る時には井ノ原は多少元気を取り戻していた。担任の様子がいつもと違う事に井ノ原も含め生徒全員が気が付いた。気になった生徒の一人が担任に言った。
「先生。今日はどうされたのですか?」
「ああ・・・。いやなぁ~ちょっと厄介な状況に巻き込まれて、大人としてどうしたものよと思って。」
「?」
すると、後ろの扉が開いて誰が入ってきた。そして、自分の後ろでその足音が止まった。担任が声を上げる前に彼女が自分に耳元で言ってきた。
『これからよろしく。井ノ原聖士くん』
その声に見覚えのある井ノ原はゾッと身震いをした。担任の声を聞く前にその人物の正体が分かった。
「えーと急なんですが、今日からうちのクラスの生徒になった。納嶋木神春さんです。みんな仲良くしましょう。」
クラスの皆がざわついた。「昨日の今日で?」「誰か何かしたの?」と様々な声を出した。自分には彼女の思惑がハッキリと分かった。けれど、まさかここまでするとは思わなかった。確かに彼女がこのクラスに突然編入する可能性は極めて低かった。でも、本当に編入してくるとは正直彼女の権力が学校全土に広がっていたことにも驚いた。
さて、これからどうしようか
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