第一章 第一節 現代その①
学校のいじめはどの時代にも存在し、日々進化しなかなか撲滅するのが難しい。そして、現代は男が女を虐げる時代は終焉した。だが、その逆は根強く生き残っていた。無論、同性同士のいじめは影で暗躍してはいる。今回は異性に対するいじめだ。
井ノ原聖士(いのはら さとし)は都立中学に通う一年生。一年生になったばかりで中学生の礼節や暗黙の規則は全く分からない。特に教示してくれる人もいるわけではない。小学生の時は皆仲良くするのが普通だったが、中学生になった途端に皆の競争感が半端ない。常に蹴落とす勢いで相手の悪い点を見つけ、そこを重点的に攻めて相手に憂鬱な気持ちを、自分には優越感を与える。だからこそ、安易な気持ちで友だちになっても後々後悔する。そんな考えが井ノ原にはあり、どうしても友だちが出来づらい状態だった。でも、彼はそこまで友だちに飢えている方ではなく、独りの方が圧倒的にラクと感じていた。多分、自分がボッチという概念が無く、特に寂しいという気持ちも無かったことが大きな要因だろう。そんな彼に悲劇が舞い落ちる。
納嶋木神春(のじまき みはる)という存在は把握していて、出来るだけというか絶対に関わって良い存在ではない。彼女も今年この都立中学校の一年生なったばかりなのに、教師陣も先輩方も一目置く存在であり、彼女の鶴の一声で生徒は転校させられるし教師の人生も跡形もなくなる。そんな化け物じみた権力を持つ。だから、彼女に目を付けられる=人生が終わるか、精神を病んで地方に行くかのどっちかになる。彼女にとって人の人生などどうでも良かった。なので、自身がいじめをしている感覚もなく「相手が勝手にそうなっただけ」という解釈に至っている。そんな彼女に新しい玩具が舞い落ちた。それはたまたま彼:井ノ原聖士のノートを拾ったことから始まる。すぐに彼がそのことに気づいたけど既に遅かった。
「あの・・・すみません。それ、僕のノートですよね?返していただいてもよろしいでしょうか?」
「これ?あんたの?」
確かに後ろから声を掛けたのが非常にまずかった。後ろ姿では納嶋木神春と判断するには無理があった。トリートメント効果の長髪と落ち着いた先輩風の雰囲気が自分の判断を鈍らせた結果、彼女が自分に向けて振り返った時には「オワタ」と心の中で言ってしまったほどだ。
「はい」
「授業中に書くものじゃないよね?これは。」
「はぁ、そうですね。次から気をつけるので。」
「何言っての?私にタメ口で通用するとでも?」
「(こちらこそ、何言ってんだ?こいつは・・・)」
「そうだ!昨日、玩具が一つ壊れたんだ。あんた、代打でなりなさいよ。」
「はい?」
ここでもし「嫌ですよ」って言ったら多分生きて帰れないと瞬時に察した。
彼女はただこちらに対して話しているだけなのに、無自覚にプレッシャーを、圧をかけてくる。
「答えは?」
「はい。わかりました。」
結局、ノートは返して貰えずそのまま帰宅する羽目になった。明日から絶望が始まると思うと非常に胃が痛い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます