炭酸TODAY

僕は今、あのカフェの近くの、あの赤い自販機の前に居る。



金髪の先輩が姿を消した日、僕は初めてこの耳で学校のチャイムを聴いた。


そして、この目でメロンソーダの先輩が海へ溶けていく様子を見た。


一方の後を追うように二人は姿を消してしまった。


3人で聴いた、カララン、という小さな音は彼みたいに端正で美しく、夏場の風鈴を思わせた。





上から2段目、右端2つ。


そこには口も手も無いコーラとメロンソーダが静かに陳列されていた。


僕は優しくその透明なフィルターを撫でた。


いつかまた、この窮屈な場所で、然るべき時が来たら、僕はここに戻るのだろう。


僕は右手に持っていたコンビニの袋から汗をかいたレモネードを取り出した。


シャリシャリいうビニール特有の音がシャーベットを金属スプーンで削る音に感じるほど、気候は夏めいてきている。



小さめの一口を飲み込んだ。


少し前の言葉が脳裏に過った。


自分を”味わえる”場所…




舌に佇むしつこい甘さと弾ける酸味。



僕は100円2枚と40円をおもむろに財布から取り出し、コーラとメロンソーダを両方買って抱きしめる。


ワイシャツに水の跡がつこうが関係ない。





いつか再び4つの数字が揃って、もう一度揃ったら、


今日みたいなチャイムが鳴って、僕も彼らの元へ戻るのだろう。


でもなんとなく、次、あの世界の中では、自分らしくやっていける気がしている。


きっと何も変わっていないであろうあの中の世界で、僕は舌に残る印象的な甘さの如く人懐っこく、花火の酸味の如く個性的に、


きっと生きれる気がしている。



追い風が僕の肩を叩き、通り過ぎていった。



あの日のように青い空の下、あの白い紙飛行機がもう一度。


見えた気がした。

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Be炭酸 桜居 あいいろ @himawarisaita

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