海に溶ける
キーンコーンカーンコーン。
チャイムが鳴ったのは数週間ぶりだった。
「今ですか。急ですね」
少年は口に含んだメロンソーダを飲み込んでから言った。
ブドウの少年とレモネードの少年は帰っているから、今は2人しか屋上に居ない。
「ほんとだ、さっきまではいつも通りだったのに」
空色のギターを撫でながら僕は言った。
「じゃあ元々の場所に戻るよ。
いい気晴らしになった。」
古株二人で迎えるほうが気が楽だし、と僕は付け加える。
屋上の縁まで進む。
風が僕を海へ迎え入れようとする。
心地がよい。
その場から見えた空は広すぎて、見渡しきれなかった。
いつにもまして青々としていたそれは、もうじきオレンジ色に侵食されるのだろう。
私はポケットからカセットを取り出して5メートル程後ろに立った少年に投げた。
少年は慌てて手で掬う。
「じゃあ、きっとまた隣の席で。」
私は生のギターを逆向きに背負い、底の見える海に飛び込んだ。
カララン。
小さな音だけがグランドに響いた。
あまりにも無機質な音だった。
▽▽▽▽▽
”たとえこれがユメだとしても
終わりがあるから現実味を帯びるの
コーラはこんな味がすると知って、
時々舌に刺さるあの炭酸はとても僕らしかった。
今度はお互い口を持たずして、
隣同士で何かを語ろう
太陽の光を言い訳にして
いつまでも互いのために売れ残ろう。
そうしてまたいつか、この場所で。”
次の日に屋上へ向かうと、赤いカセットプレーヤーからこの曲が延々と流されていた。
ブドウの少年とメロンソーダの少年はアシンメトリーの机の上でこのカセットに耳を傾けていた。
二人共、どこかで買ったであろう黒い炭酸水を卓上に置いてただただ時が過ぎるのを待っているように見えた。
僕はどんな顔をしてそれを聴けばよいというのだ。
僕は
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