バルド家全員参加6

 さて、この日記どうしてくれようか。


 本当は内容をお嬢様にお話するかどうか悩んだ。旦那様が奥様の死を悲しんでいたことや、お嬢様のことも気遣っていたのだと知らせてあげるべきかどうか。だがそれは私が言うべきことじゃない。いつか旦那様が話そうとするなら、それに任せればいい。


 そもそも日記を盗み見てその内容を告げ口するのは気が引ける。ちょっと読むだけと言いつつ最後まで読んでしまった引け目もある。


 ――日記、どうやって返そうか。


 できればこっそり早急に返したい。旦那様に気づかれる前に。

 どうやらこの日記が書かれたのは昔のようだから旦那様ももう忘れているものかもしれないが、早く返すにこしたことはない。

 私は急いでお嬢様のもとに向かった。


「お嬢様! 旦那様からお借りした本なのですが、お早くお読みいただくことはできませんか! 早急に返さねばならぬわけができてしまいまして」

「え、ええ――、それは構わないけれど、リーフ大丈夫? 様子が変よ」

「大丈夫です!」


 お嬢様は困惑しつつ、二日で本を読み切ってくれた。早い。さすがはお嬢様だ。


 私は本を抱いて本館の書斎に向かう。できれば旦那様がいない間にこっそり返したい――、だが本館のメイドに聞いたところ旦那様は今日も書斎にいるらしい。なんということだ。なんとか書斎から追い出せないだろうか。


「あらリーフ、久しぶりね」

「ライラ様! お帰りになっていたんですね」


 振り返るとそこにはライラ様が微笑んでいた。後ろにはジルも控えている。


 ライラ様は王子の婚約者ということで、バルド家を出て宮廷で生活をするようになっていた。会うのは久しぶりだ。


「明日大事な用事があるから帰ってきたのよ。リーフはどうしたの? なんだか困っているようだけど」

「ライラ様、できれば理由は聞かないでほしいのですが、今とても困っているのです。助けていただけないでしょうか――!」


 これ幸いと泣きすがる私にライラ様は一瞬ぽかんとしてから、愉快そうに笑った。


「いいわ。私とあなたは協力関係にあるんだから、助けてあげる」

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