バルド家全員参加2

 自分の部屋に戻って、はあと息を吐く。もってきてしまった薄い本を手にして、再度確認するようにページを開けた。


 それは旦那様の日記だった。いや、日記というよりは自伝に近いものか。貴族にはよくあることだ。とはいえ、日記や自伝なんてものはあまり人には見られたくないはず。どうしてこんなものを持ってきてしまったのか。旦那様も旦那様で、もうちょっと保管する場所を考えてほしい。


 素知らぬ顔をして返さねば――。


 そう思いつつ、私はそっと旦那様の筆跡を目で追ってしまう。


 読んでみたい――。

 いやしかし、人のものを盗み見るだなんて。でも気になる。ちょっとだけなら許してもらえないだろうか。


「ちょっとだけ――」


 私はそっとページを開いた。

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