あなたと結ぶ2
お嬢様は難しそうな顔をして「そうね」と呟く。
暫く考えを巡らせてから、
「たしかにそうかもしれない。でもそれは、ただのきっかけに過ぎないのではないかしら」
「きっかけですか」
私は目を瞬いた。
「そう。音はただのきっかけ。今はもしかしたら音だけで繋がっている関係なのかもしれないけれど、あなたはそのきっかけを利用して、ディーがあなた自身を見てくれるように親しくなってしまえばいいのよ。たとえリーフの音がなくなっても、離れられないくらいに」
これから、本当の関係をつくっていけばいい。それは私にはなかった考え方で、なるほどと思わず声がもれた。
今はまだ、ディーは私の音だけに興味を持っているのかもしれない。もし私が普通の人間で、他の誰かが特殊な音を持っていたのならば、彼の微笑みはその誰かに向けられていたのかもしれない。そう思うととても虚しいけれど――、これから音だけじゃない、私たちの関係をつくっていけばいい――。
「でも、できるでしょうか。私なんかにそんなこと」
「できるわよ、わたくしの自慢の使用人なんだから。――それにリーフは一人じゃない。実はね、わたくしも悔しいと思っていたのよ」
「お嬢様も?」
「ええ、今のわたくしはディーにとってリーフのついでみたいなものなのだろうし。わたくし自身のことも彼にみてほしいと思う。ね、あなたとわたくしは同じよ。だから一緒に頑張りましょう。ディーと本物の絆を結べるように」
お嬢様の言葉がじわりと身にしみる。やっぱりお嬢様には敵わない。心が軽くなるのが分かった。
音だけじゃない、そんなものがなくてもディーが私やお嬢様と一緒にいたいと思えるような関係を結びたい。
「はい、頑張りましょう!」
(あなたと結ぶ 了)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます