第3話 能力参考書類とこれから

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*能力参考書類


・氏名:ソウヤ ササキ(18)(男)(普人族)


基礎技量アビリティ


 社交:15(−10) ※対人間

 製作:6

 労働:8

 戦闘:7

 雑技:16

 精神:15(−14) ※対美男美女


特性タレント


 召喚魔術、根性、孤高の秘技

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 …………うーん、どうなんだろうこの数値は? 良いのだろうか? それとも悪いのだろうか? なんせ俺は、この世界の基礎技量アビリティの平均値を知らない。特性タレントの数も多いのか少ないのかがわからない。ここは、思い切ってノルドさんに聞いてみよう。


「あのー、この数値はいい方なんですか?」


「ん? あぁ、そうか。お前はテスターだったな。なら知らなくて当然だ」


 ノルドさんは納得してから、説明を始めた。


基礎技量アビリティは、階位レベルが上がっていない状態なら、大体10くらいのやつが多い。お前は、雑技と精神は平均より高いが、それ以外は平均より低いってことだ。特に、社交がひどいな」


 すみません、陰キャボッチのコミュ障ですみません。


「あと、この括弧の中の数字と±はなんなんですか?」


「その括弧の後ろに、米印があるだろ? そこに書かれた状況下では、アビリティが加算されたり、逆に減算されたりするんだ。お前の場合は、人間以外には社交的になる。あと、容姿の整った奴が相手だとノミの心臓みたいになるってことだ」


 あー、なるほど。確かに動物には好かれる方だったし、相手がフツメンやブサメンなら特に緊張もしなかったが、美男美女になると速攻で固まって物言わぬ彫像みたいな感じになってたからな。


「ちなみに、特性タレントの数、3つは多い方なんですか?」


「いや、皆普通に3つぐらい持ってるぞ」


 マジかー、チートとかないのかー。ちょっと憧れてたんだけどなー。


「ちなみに俺は5つだ」


 …………うわぁ、ドヤ顔ウゼェ。容姿が整ってるから格好良く見えなくもないのがさらにウゼェ。


「この特性タレントってどんなものなんですか」


「召喚魔術は、文字通り召喚魔術に才能があるってことだ。それも結構な才能だ。お前は精神の数値も高いし、普通なら召喚術師を目指すべきだろうな。根性も、文字通り根性があるってことだ。恐らく、精神の数値が高いのもこの特性タレントがあるからだろうな。天性のものでもない限り、結構な修羅場を潜り抜けなきゃ、手に入らないような特性タレントだ。お前も苦労したんだな」


 すみません。多分ボッチの時のストレスと、高校受験時の地獄勉強合宿と、リアルで何度かどろっどろの昼ドラ展開を見たことがあるからだと思います。そんなに修羅場潜ってません。


「…………あー、それでだな。最後の『孤高の秘技』についてなんだが、この特性タレントは俺も見たことがないから、詳しいことはわからん。すまんな」


 ノルドさんが申し訳なさそうな顔で言ってくる。が、次の瞬間には顔を上げ…………


「だが! 特性タレントマニアの俺の経験則によると! 恐らくソロでの活動時に発動するタイプだと見た! それも『秘技』とついているくらいだから、とんでもない効果なんだろう!」


 すみません、多分違います。おそらく俺が中学でのボッチ時代に確立した技術のことだと思います。そんなにすごいものじゃありません。数だけは結構あるけど、内容はどれもくだらないものばかりです。


 一通り解説が終わったあと、ノルドさんに礼を言って、冒険者ギルドを出る。なかなか人が集まってきた時間帯だったので、人混みに紛れれば脱出は容易だった。人の流れに自然に逆らうボッチ技、いや、孤高の秘技を用いなければ不可能な脱出だった。


「…………さてと、これからどうするか」


 安定した暮らしが保証されているのは1ヶ月のみである。その1ヶ月の猶予の中で何とか安定した食い扶持を確保しなければならない。ちなみに冒険者は却下だ。たまにならいいが、日常的に死地に飛び込もうとは思っていない。せっかく異世界に来たのに、遊びつくさずに死ぬなんてごめんだ。


 となると、必然的に街の中での仕事になる。できれば、せっかくの召喚魔術を使った仕事がいいな。


 召喚魔術といえば、一番の魅力は人海戦術、数の暴力だろう。となると人手がいる仕事がいいのか? いや、もしかしたら召喚数上限値とかあるかもしれない。


 …………クソッ。召喚魔術についてわからないことが多すぎる。もっと詳細な情報が欲しい。どこで手に入る? 無知をここまで呪ったことがあっただろうか。



 …………ドンッ。


 うつむいて歩いていると、通行人とぶつかってしまった。


「あっ、すみません」


 ぶつかってしまった相手に反射的に謝る。


「いや、こちらこそ済まない」


 ぶつかった相手は、ずいぶん長身な人だった。下手したらノルドさん以上あるんじゃないだろうか。少々老け顔だが、キリリと引き締まった瞳と、服越しからわかる筋肉が、まだまだ現役だと主張していた。顔にある目立った傷跡と、鞘の装飾だけでも一級品だとわかる腰の剣からして、歴戦の騎士かそんなところではないだろうか?


 そんなダンディーなおじさんが過ぎ去っていき、再び前方を向くと、そこには


 『召喚魔術ギルドはこちら!』


 という看板と、その看板の矢印が指す先にある、ギルドというには少し貧相で小ぢんまりとした建物があった。


 …………とりあえず、入ってみるか。


 一抹の不安を抱きながら、召喚魔術ギルドの扉を開けた。…………建付け悪いなこの扉。

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