第15話
「意識を集中させて。今触れ合っている部分に。そう、いい感じよ」
感じる。触れ合っている手が熱を帯びたかのように熱く、強く。
「自分の体と一つになる事を想像して。そうしたら見えてくるから」
光が迫ってくる。暖かい光が。
「光が見えてきたらその中に飛び込んで」
体ごと飛び込むイメージで、光に意識を飛ばした。
「なかなか、やるじゃない。初めてにしては上出来よ。さあ、目を開けて、あなたと一つになってることを確認して」
俺はそっと目を開け確認すると、確かに俺は一つになっていた。
それは不思議な感覚で、何か暖かい存在に守られているかのような感じ。
「まさかいきなりここまで憑依できるとは…」
「え?」
視線を、剣を握っていた右腕に向けると、レオと同じく右腕全てが憑依している。
「今の感覚を忘れないでね。慣れてくれば意識しなくても憑依できるようになるから」
「ああ、わかった。ありがとう、レオ」
「お礼はまだ早いわよ。ここから強くなるのが大変なんだから。そうだ」
レオは何かを思いついたのか、不適な笑みを浮かべる。
「草原を抜けるまで3日程あるんだけど、ちょうど草原を抜ける3日後、私と勝負しない?3日もあれば桜花なら憑依に慣れるでしょう」
「おう、いいぜ。3日後な」
「決まりね。それじゃ私はテントに戻るわ。3日後楽しみね」
余裕の表情でテントに戻っていくレオ。
3日後か。それまでに少しでも憑依を使いこなせるようにならないと。
次の日は憑依の慣らしも兼ねて、持続可能時間を確認する。
問題なく憑依を完了させ、これまで通りの鍛錬を憑依状態で試してみることにした。
結果からいえば30分程で憑依は解除され、俺はその場から動けなくなった。
身体中のエネルギーを根こそぎ持っていかれた感じがする。
腹も減るし、なんだか眠たくなってきた。
休憩を挟み、もう一度憑依して先程と同じ鍛錬を行うと、今度は15分程で解除されてしまい、再びその場から動けなくなる。
さすがにこれはどうにかしないと。
その場に寝転がりながら何か憑依時間を伸ばす方法はないかと、考えてみも大した案は浮かばない。
エネルギー、つまり体力が少ないのか。それとも憑依自体の精度が良くなくて、燃費が悪いのか。
とりあえず、また体が動くようになるまで休憩して、それから考えよう。
結局、朝までずっと鍛錬しちまった。
風が吹くと、朝の清々しい匂いが俺の鼻をくすぐってくる。
テントに戻ろうと歩き始めるが、足が震えて上手く歩けないので、剣を杖代わりにしてテントに戻ることにした。
テントに戻るとすでに3人が朝食を食べ始めており、こちらに気づいたレオがニコニコしながら俺に近づいてくると悪戯し始める。
「ちょっと桜花、早くこっちにきて座って食べなよー」
「待って、押すなよ、触るなよ。だめだって!あぁぁぁぁー」
全身筋肉痛の俺の筋肉が悲鳴をあげ、その場でのたうち回ると、それを見ていたレオが腹を抱えて笑い始める。
「あっはははははは。ちょっと、変な動きしないでよ。朝からお腹、きついって」
こいつ、今度の勝負でボコボコにしてやるから覚悟しておけよ。
「桜花ーダイジョウブカ?ダイジョウブカ?」
「あーー、やめろ、体を揺するな」
「どどど、どうしよう。桜花が苦しんでる。そうだ」
ルットがテントに戻り、手に何か持って戻ってきた。
「これ、体に貼ると楽になる」
ルットが渡してきたのは、植物の葉であった。
本当にこの子は天使だ。どこかの悪魔と違って。
「ルットちゃん、それ私に貼らせてもらえないかしら?」
「いいですよ。お願いします」
レオがルットから葉を受け取ると、悪魔のような笑顔でこちらに迫って来る。
「ふふん。光栄に思いなさい。このレオルト・フォン・エンベルガーがあなたに奉仕してあげる。」
「結構だ。すぐにルットにその葉を返せ」
「私が貼ってあげるんだから嬉しいわよね?そう、死ぬほど嬉しいの。私も嬉しいわ」
まだ何も言ってない。
「ワトスちゃん、桜花を押さえて」
「マカセロ」
ワトスまで!
「お前、いつワトスを」
「あなたが1人で鍛錬してる間にね」
くそ、やられた。
もうすでに、ワトスにより拘束され身動きができない。
ワトスの力は人間がどうにかできるレベルではないので、下手に暴れなどしたら冗談抜きで死んでしまう。ここは大人しく降参するほかない。
「それじゃいくわよ。はぁ!」
背中かからの炸裂音と、俺の悲鳴が周囲一帯に響き渡る。すると、その音に呼応するかの如く、各地のモンスターの遠吠えをあげ、今日も元気に世界は朝を迎えた。
ルットのおかげで、夜にはだいぶ体も良くなったし、これで問題なく鍛錬できそうだ。昨日の鍛錬で掴んだ感覚を忘れたくないから本当にルットには感謝だな。
レオのおかげで背中は痛いけど。
まずは剣を構えて憑依。
ここから憑依の持続時間を伸ばす方法はなんとなく思いついた。
だけど、それを今日と明日で身につけることが果たして可能か。
レオとの勝負も、もしかしたら長期戦になる可能性もある。そう考えたらこの持続時間は突破しなければならない課題だ。
意識を右腕に集中させて、憑依している部分を感じるんだ。
表層じゃない。もっと奥まで。俺の細胞一つ一つに意識を。
自分の中で何かが繋がったような感じがした。それは細く、すぐに途切れてしまいそうな糸のような何か。
その糸を見失わないよう、必死に掴みにかかる。だが、もう少しのところで糸は切れ何処かに漂って行ってしまった。
ハッと意識が戻ると憑依が解除されており、かなりの時間が経ったような感じがした。
どうやら、動かないでエネルギーを温存すれば少しは持続時間が伸びそうだ。
だが、俺が目指すのは戦闘中における持続時間。
動いた時と違い、すぐにもう一度憑依できそうだ。
すぐに憑依しもう一度、糸を探し始める。
あの糸を掴むことができればきっと…。
目を閉じ深く、深く意識の海へ潜る。暗い海の中に再び糸が姿を表すと、今度こそっと勢いよく手を伸ばすが、手の間をすり抜けていく。
現実の海でない事はわかってが、それでも息が苦しくなってくる。これは憑依が解けかかっている事だと理解できる。この機会を逃せば次は見つけられないかもしれない。絶対につかんでやる。
もがきながらも必死に糸に手を伸ばす。
逃さねぇ。
今度は確実に右腕で掴んだ。
掴んだ糸が光り輝くと、その光は俺を包むように大きくなり、次第に辺りが光により何も見えなくなった。
ゆっくりと目を開け体に異常がないか確認するが、特に異常はなかった。
次に右腕に意識を集中させると、以前には感じられなかった感覚がした。
これならできるかもしれない。
俺が考えたのは、より強くこの剣と結び付くことができないか、ということだ。
昨夜、憑依を繰り返しているうちに、右腕の憑依している範囲が微かに変わっていくことがわかった。もしかしたら自分の意思で、この憑依する範囲を変えられるのではと考え、そしてその方法として、より強く剣と結び付くことで自分の力でこいつを制御しようとするものだ。
「さあ、頼むぜ」
憑依のイメージを肘までと意識すると、実際に憑依が行われたのは肘までとなった。
よし。次は手首までだ。
同じようにイメージをすると、剣を握る手のみが憑依の状態となった。
このまま昨夜と同じ鍛錬をして持続時間が増えていれば成功だ。
俺は剣を振るい鍛錬を開始した。
結果として憑依の持続時間は大幅に上がった。
前にレオが、憑依の範囲が大きければそれだけ力が増すと言っていたこと。そしてもう一つ。細胞が活性化されて強化されるなら、その範囲を少なくして、エネルギー消費を抑えれば時間は増えると推測した。そしてそれは正しかったようだ。
だが、範囲を少なくはできるが、右腕以上に範囲を広げる事はできなかった。
ここからは鍛錬や実践を積んで強くなるしかない。
よし、ここからはもっと早く範囲を変えられるように特訓だ。
昨日と同じようにテントに戻ったのは朝方であった。
少し仮眠を取ろうとテントに入ると、テントの中にはルットが持っていた葉と、手袋が置いてあった。葉はルットが用意してくれたのかな。こっちの手袋は…。
手袋にはエンベルガー家の家紋が刺繍してあった。
レオか。
自然と笑みが溢れてしまう。
本当になんだかんだいってあいつは。
とりあえず手袋と葉を抱いたまま仮眠することにした。
これ以上み見てると恥ずかしくて寝れなくなりそうだ。
最終日の夜、レオとの勝負を明日に控え、今日は早めに鍛錬を切り上げ、明日に備えようかと思う。なにせ連日の鍛錬と睡眠不足で体がボロボロだ。
とりあえず、今までのおさらいをしよう。
剣を抜き構えると同時に憑依。
そしてさらに憑依範囲の縮小と拡大。
まだ少し縮小と拡大がぎこちないが、正直こんな短期間で、ここまで出来るようになるなんて、自分でも驚いている。
これまでの鍛錬で、自分自身を鍛えることが憑依を強化するのに必要な事だと思っていたが、それだけじゃなかった。この剣、正確にはアレロパシーと強く結び付くことで初めて憑依は強くなる。
俺は憑依状態のままその場に座り込み瞑想を開始する。
少しでも憑依の精度を上げ、明日のレオとの勝負に挑むために。
2時間程の瞑想の後にテントに戻ると、他三人は既に寝ており、俺もすぐに自分のテントに入り横になる。
日中は移動で、夜は鍛錬。ここまで疲れたのは人生で初めてかもしれない。
でも、この数日は人生で一番充実した時間を過ごしている。
短い間に色々なことが起きたけど、今やっと自分が変われるチャンスを掴んだ。それを明日の勝負で証明する。
レオに勝つのは難しいかもしれないが、それでも勝機はあるはずだ。
レオも、俺と同じ右肩くらいまでしか憑依できない。そうなると自力の強い方が勝つだろう。これに関してはちゃんとした剣術を学んでいるレオの方が圧倒的に強い。
とてもモンスター相手にガムシャラに振るってきた剣では太刀打ちできないだろう。
だが逆に、そこに勝機がある。
剣術という型にはまらないが故に繰り出される剣撃。読めない太刀筋。
今の俺にはこれくらいしかレオに勝てそうなところは見つからない。
そして、一番の不安要素は、レオの闘っている姿を見たことがないことである。どんな戦い方でくるのか想像もできないので、こればかりは明日の勝負で見極めるしかない。
今はとりあえず少しでも寝て、体調を万全にすることが先決である。
目を閉じると意識はすぐに地平の彼方に飛んでいった。
勝負当日、この日の午前中は草原を抜けるため移動に費やし、勝負は午後となった。
「ついに草原地帯も終わりか。それで次はあの山を越えるのか」
「んー、どうしましょう。山を越えるか、洞窟を抜けるか。速いのは洞窟だけど、凶悪なモンスターも多いって聞くのよね」
「ワトスハドッチデモイイゾ」
「私も他の方にお任せします。私は殆ど戦えないので」
「じゃあこうしましょう。今から私と桜花で勝負して、私がここの洞窟を突破できるくらいの力があると判断したら洞窟。もし、思った以上に弱ければ時間はかかるけど、山を越えて行く。どうかしら?」
「それは構わないけど、レオさん。俺が勝てない前提で話を進めてませんか?」
「そう言ってるんだけど、聞こえなかった?」
「よし、今すぐ勝負しよう。ワトス、ルット。俺の荷物を頼む」
背負っていた荷物を2人に預けレオに向かい剣を構え憑依する。
「さあ、やろう」
「いいわよ。ワトスちゃん。ルットちゃん私の荷物もお願い」
「あ、あの。怪我はさせないようにお願いします」
「大丈夫よ」
何やら2人でこそこそと話しているが、やっと向こうも準備ができたみたいだ。
「ねえ、桜花」
「なんだよ。手加減はしてやんねーぞ」
「お願いだから、絶望はしないでね。あなたの憑依した姿を見れば、かなり強くなっているのがわかるわ。この国の騎士よりも強いでしょうね。このまま鍛錬していけばいずれは、この国の騎士長レベルになれると思う。それはとても凄いことで、普通の騎士が目指しても、なれるレベルのものではないのよ。桜花にはそれだけの実力がある」
「なんかよくわかんねーけど、褒めてくれてんのか」
「そうね。褒めてるわ。だから負けても絶望はしないで」
「それは負けてから考えるよ。やる前から負けるなんて思っちゃいない」
「それじゃ始めましょうか。どこからでもかかってきなさい」
「憑依はしないのか?」
「心配してくれるの?ありがとう。でも大丈夫よ」
「負けてから言い訳するなよ。こっちは全開で行くぞ」
遠慮なく全力で斬りかかる。
距離にしておよそ10メートルを一瞬にして詰め、剣を振るう。
体感は通常時の5倍程速く動けているように感じ、思っていた以上の力が発揮でき、気分が高揚する。
過去これほどまでに自信に満ち溢れた事はない。
迷いなく、自信に満ち溢れた一閃は、目にも留まらぬ速さでレオを切り裂いた。
いかん、やりすぎたか。
「大丈夫か、レオ?」
「全然平気よ。それよりなかなかいいじゃない。キレもいいし、スピードもある。思ってた以上だわ。これなら洞窟に行けそうね」
傷どころか、服すら切れてない。確かに俺の剣はレオを切り裂いたはず。
「とりあえず実力を見せてもらったし、今度は私の番ね」
「レオ!」
心配そうに見つめるルットがレオの名前を呼ぶ。
「大丈夫よルットちゃん。心配しないで。さあ桜花、行くわよ」
レオの初撃がどこからきても対応できるように、剣を真正面に構えると、既にレオは剣は俺の剣を突いていた。
「私の突きをよく止めたわね。見えてたのかしら、それともたまたま構えたところに私の突きが来たのかしら」
「見えてるに決まってるだろ。このくらい」
嘘である。レオの言った通り、たまたま構えたところに攻撃が飛んできただけだ。
「そう。じゃあ、次はどうかしら」
レオの二撃目は辛うじて見え防御するも、憑依を全開で展開しないと防ぎ切れない。これでは30分も持たず憑依が解除されてしまう。
「本当に見えてるの、たいしたものね。まだ憑依を身につけて数日なのに」
「憑依も使ってない奴の攻撃を見えたところで、何も嬉しくねーよ」
「いいえ、私の攻撃を耐えてるんですもの。もっと喜んでいいのよ」
今度は連続して刃が襲いかかる。
少しくらい攻撃に転じたいが、レオの突きを防ぐのが精一杯で、反撃もままならない。
「どうしたの?防ぐだけ?早くなんとかしないと体に風穴が開くわよ」
くそ、どうする。どこかに隙はないか。
「これは防げるかしら」
突きの嵐が一瞬止むと、剣を後ろへ引き勢いを溜めた強烈な突きの一撃が飛んできた。
剣の防御の上から貫通する衝撃が、体を貫いたかと思うと、すぐさま再度同じ箇所を寸分違わず貫いてきた。
2回の衝撃が体を貫通すると、意識が完全に飛んだ。
次に目が覚めた時は天を仰いでおり、憑依が完全に解除された状態で倒れていた。どうやら、突きの衝撃で後方へ飛ばされたらしい。
すぐに足元に落ちていた剣を拾い上げ、再び憑依し、レオに突っ込む。
一撃だけでも、喰らわせてやる。
今度はレオの背後に高速で回り込み切り付ける。しかし、確実に切っているはずなのに、なぜかレオは傷を負っていない。
「はぁ、はぁ、どうして、確かに切っているはずなのに」
「切ってるわよ。残像だけどね。剣を振るうのが早すぎて、まだ感覚が追いついていないのよ。それも実践を積んでいけば慣れてくるわ」
「残像とかどんだけだよ」
「私がちょっと本気出せばこの程度造作もないわ。あと、こんなこともできちゃうの」
レオが剣を突き出すと、衝撃波のようなものが貫いてきた。
「ちく……しょう」
ここで俺の意識は途切れた。
目を覚ますと、テントの中でルットが膝枕をしてくれていた。
「大丈夫? お腹痛くない?」
「大丈夫だよ、それよりあの後どうなった?」
「桜花が気絶しちゃった後は、とりあえず近くにテントを張って今日はここで野宿することにしたの」
「そうか。ところでなんで膝枕?」
「あ、あのね、これは、桜花はこうするとすごく喜ぶって、レオが。でででで、でも私がしたいって、その…」
バンバンっと凄い勢いで尻尾が地面を叩いている。
「私!レオ呼んでくふ!」
「急に立つな、おふぅ」
急に立ち上がるとルットはテントから出て行ってしまう。
地面に打ち付けられた後頭部が、じんじんと痛む。
「お早いお目覚めで。あと3日は寝てるかと思ったわ」
「おかげさまでピンピンしております」
「あらそう。そんな事より、勝負した感想はどうだった?」
「まさか憑依してない状態のお前に負けるなんて思ってもみなかった。正直かなりショックだよ。でも、もう落ち込まないって決めたんだ。強くなるって親方とも約束したし」
「ふーん。なーんだ、心配して損した。私にボコボコにされて再起不能になったら、どうしようかと思っちゃった」
「お前は心配してるのか、おちょくってるのかどっちなんだよ」
「んー、両方。でも、今回は本当に心配したのよ。圧倒的な実力差で負けて心が折れるんじゃないかって」
「確かにレオとの実力差は大きいけど、それは現段階での話で、憑依を習得して数日でここまで仕上げられたなら、これからもっと鍛錬すれば追いつける…はず。だから、今だけは負けといてやるよ」
「やっぱり優しいのね。それじゃあ楽しみにしてるわ、あなたが私を超える日を」
「おう、あっという間に超えるからな。あ、そうだ。この国の騎士長ってそんなに強いのか?」
「そりゃもちろん。ルヘルムや首都コランダム、すべての都市から選別された騎士の中で、一番強い騎士が騎士長よ。そんなのが弱かったらこの国は終わりよ」
レオって時々口が悪くなるよな。時々かな…。
「そうなると騎士長はレオよりも強いのか。まだまだ上には上がいるな」
「ちょっと、私が騎士長より弱いですって。あんな奴、私が10歳の時にコテンパにしてやったわよ。それはもう完膚なきまでにボコボコに」
「ちょっと待て、騎士長って国で一番強い騎士がなれるんじゃないのか。なのにレオにボコボコにされるって、どういうことだよ」
「私は騎士じゃなくて貴族のお嬢様だから、騎士とか関係ないわ。ちなみにケーテも騎士長より強いわよ。私よりかは弱いけどね」
「お前の屋敷はどうなってるんだよ。と、いう事はヴォルフさんも?」
「お父様?お父様は私に剣を教えてくれたわ。国で1番強くて私でも苦戦してね。それはもう強くて。当時の私の目標だった。お父様を超えるため必死に特訓したし、その時よくケーテが特訓相手をしてくれてね。結構楽しかったわ。そして私が12歳の誕生日の日に勝負を申し込んでボコボコにしたわ」
「それじゃあもしかして、レオって国最強なの?」
「国というか世界ね。私に勝てる奴なんて種族問わず存在しないわ。たぶん」
「まじですか」
「まじです」
俺は世界最強に挑んでいたのか。
「それじゃ、明日からは洞窟探検になるから、しっかり休みなさいよ」
「ああ、レオもな」
こうして、レオと俺の初めての勝負が終わった。
俺は結果よりもそのあとの話の内容が濃すぎて勝負のことなどすっかり忘れていた。
そして不意に思い出した事があった。専属使用人についてだ。
あれ?専属使用人て相当難易度高いんじゃないか?
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