手練でないでお

エリー.ファー

手練でないでお

 びっくりするくらいの嘘を何度も付いていたらいじめられていた。

 しょうがないと思う。

 それくらいのリスクの一つや二つを抱えて生きていかなければならない。

 僕はアジテーターになるんだ。

 本当に、自分のことを奮い立たせてくれるのはアジテーターしかいないのだ。レズとかホモとか沢山の人が困っているから、そういうのを助けるのが僕の仕事なんだ。

 いや。

 まだ、その仕事についたわけじゃないけど。

 いつか、その仕事で本気で頑張るんだ。

 だって、それが僕の夢だから。

 慌てていろんなことを準備する大人と違って、僕はちゃんとアジテーターとかいう仕事を調べている。本気なんだ。

 誰もが頑張れ、とか簡単な言葉を吐き出したりするけど。そういうものじゃないんだ。

 自分で選んで生きていくってそういうことじゃないんだ。

 僕はまだ子供だけれと、大人と違ってそのことは誰よりも深く考えている。それが、僕の一番いいところだと、二番目のお父さんも言ってくれた。

 戦争に行く前の時間だけだったけれど、それでも、あの時のお父さんの言葉や、ぬくもりは鮮明に覚えている。

 僕も戦地に行って、僕のお父さんも戦地に行って。

 結局、帰ってこれなかった。 

 それが全てだ。

 悲しいけれど、本当に起きたことなのだ。

 アジテーターはどんな勇気のないひとたちも奮い立たせることができる。誰も意識していないような心の奥底の真実に光を照らしてくれるのだ。

 それが、嘘でも、本当でもいい。

 答えがどこにあるかなんてどうでもいい。

 気が付けば足音を立てながら歩くことができて、嘘を並べ立てても多くの人が賛同する。結果は残すし、その結果がより僕の生き方を肯定する。

 アジテーターであることや、アジテーターの存在を誇ることではない。より大きな括りの中にいることを意識して、その括りを心から愛することを本懐とする。

 嘘なんて一つもない。

 いや。嘘さえも肯定する。

 それを叶えていくための、才能も時間も、実力も心もある。

 いずれ、離れ離れになることもあるかもしれないが、僕が抱えてきたものがなくなってしまう訳ではない。

 本当だ。

 本当なんだ。

 僕は、僕のことを心から愛している。

 自分を愛している。

 自分のことが好きだ。

 だから。

 そのためのアジテーターだ。

 売っているのは言葉でも、勢いでも、革命でもない。

 僕の生き方だ。人としての在り方だ。

 そうだろう。

 それしかないじゃないか。

 いつか地球は滅亡するだろう。その時に、きっと大切なことは、自分から動き出すということなのだ。誰にでもできて、誰もができていない一番大切なことなのだ。それがこれからどんどん重要になっていく。

 その時、僕はアジテーターだから。

 アジテーターという仕事に誇りを持っているから。

 僕は色々な人たちがどんどんと大きくなっていくたびに、その近くに寄り添い次から次へと導いていく。

 僕の歩んでいる、一流だとか、天才だとか、完全と呼べるものの。

 そこにいるという事実を力にして。

 一つの巨大な希望になろうと思う。

 誰にもできない。

 誰も追いつけない。

 誰もが見えない。

 誰よりも一番であろう。

 誰もが認める一番であり、誰もが知る一番であろう。

 夢物語ではない。

 アジテーターでもない。

 天才というピラミッドの一流であろう。

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