第7話 誰がマザコンだよ(日向side)
「 あ、マザコン発見!え?やだ。なんかニヤニヤしてない~?」
自分の部屋のベッドで寝転んでいた時に、急に妹の凛の声が頭上からした。
それは親父にリビングで彩さんに対する気持ちの話をしてから数週間後のことだった。
「 お前、部屋に入るときはノックぐらいしろって言ってるだろ」
「 はいはい、聞き飽きたそれ。そうそうそれよりも聞いたあ?」と 凛は自分勝手に話を続けた。
いやマジでノックなしで気配もなく部屋に入るのは止めてほしいんだけど。凛は大人びてはいるけど、多分俺ぐらいの男が皆、毎日のように自分の性欲を自分で処理してる事実は知らないはずだ。いや、仮に知識として知っていたとしても、 目撃したら俺と二度と喋ってくれないと思う。想像するだけで恐ろしい。
女子って自分からちょっとエロいことを言ってても男の下ネタは大嫌いだったりする。凛はいかにも清楚そうだからか、ちょっと潔癖症のように感じることもあるしな。
もし、そんな自分で自分の処理をしているところを目撃されて嫌われたら、ダブルのショックでマジ死ねる。しかも凛は歩いていると、すれ違う男の人の殆どが一度は振り返るくらいのラスボスレベルの美少女だ。美少女から嫌われるのって、男にとってはかなり辛い。自分が一方的に生きる資格がないような気がしてしまう。美少女という存在は正義と殆ど同一のような気がする。少なくとも同年代の俺達にはそれくらい強い存在だ。
「 なんか私。 あんたに振られたかわいそうな子みたいな感じになってるみたいなんだけど」と凛は面白がってるようにも見える嘲笑まじりの微笑で言った
「 なんだそれ。え?」 と言われて気付いた。 そうか、この間親父に言ったことは周りから見るとそういう解釈になるのか。でも、こいつのどこが俺に気があるっていうんだ。最初から態度はでかいし、一緒に暮らし始めた最初だけ猫かぶって「お兄ちゃん」って言んでたけど、今はすっかり二人になったらマザコン呼ばわりだし。
「 あー。俺親父に彩さんのことが好きかもしれないって、言ったからかも」ってサラッと言ってやった。そしたら凛は目を丸くして驚いてた。
驚いている凛の顔を見て美少女ってびっくりしても美少女なんだなと少し感心した。
「 本当に?言ったの?本当に?すごいね。思い切ったね。」
「 なんか成り行きで。でも、もしそうだったらどうする?みたいに濁したけどね」
「 そっかーそうなんだ。頑張ったねえ」と、凛は上から言った後、
「あ、でもママはきっと知らないね、あの感じじゃ」 と言ってからニヤニヤ笑いながら続けて言った。
「 かなり鈍いから自分じゃ気付かないだろうしね」
「 別に知ってほしくない」
「 そうなの。 純情だねえ。そっか、そっかあ」なんて勝手に何かを納得している。
「 彩さん知ったらびっくりするだろうな」なんて呟いてみた。
「え?何が?」
「 俺とお前がこんな話ししてるって知ってたら」
「あー。だろうね。 鈍いから多分気づかないと思うけど」
「 そうかなー。 でも気付かれたくないのなら、ちょっとは気を付けた方がいいと思うけど」
「 大丈夫、大丈夫。 ママにも猫かぶってるからね、私」
うん。知ってる。彩さんの前では「すっごくいい娘」だもんね。
あれ?
「 なんで俺には猫かぶらないんだ?」
「え?かぶってないっけ?」だって。笑いながら。
「いや、かぶってないだろ。あきらかに。お兄ちゃんって言うのも親父と彩さんがいる前だけじゃないか」って言ったら、何か含みがあるように
「ああ、確かにそうだね」だってさ。
「 何何?私に猫かぶって欲しいの?猫かぶってる私がみたいの」と冗談ぽく笑顔で言った。うん、腹立たしいけど笑顔がかわいい。彩さんと違って笑うとアイドルみたいに目が真っ黒になる感じ。
「 そういうわけじゃないけど」
凛はなぜか俺に対しては最初からこんな感じでずけずけとした態度だった。
凛と最初に会ったのは親父と彩さんと3人で会った後だった。後っていうか直後だ。
親父と彩さんと別れた後に一人で喫茶店で座っていた時に急に降って湧いてきた。
美少女がいきなり降って湧いてくるなんて、知らない人が聞いたらいい出来事のように聞こえるかもしれないけど、実際は最悪な出来事って感じだ。
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