第12話 新たなる脅威
魔法使いの村で昔の話を聞き、村を出たアルヴァン達。
数日後、再びヒカリ山に挑戦するも苦戦させられる。
そんな時、スヤキが現れ、同行したいと言い、新しく魔法使いのスヤキが仲間に加わった。
アルヴァン達がヨウタイ王国にたどり着き、宿で過ごしている間、ライウン王国周辺では一人の少女が魔物と戦っており、魔物だけでなく、冒険者にも襲い掛かった。
翌日、大空に浮かぶ大陸の情報を手に入れるため、資料館へとやってきたアルヴァンはひとつの本に惹かれる。
その本は勇者イレーネに関する本だった。
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大昔、今以上に各地で魔物が溢れかえっていた時代。
村や町、国などが幾度となく魔物に襲撃されていた。
この世界には、魔王が存在していた。
魔物は魔王によって生み出されていた。
大勢の人間が魔王に挑んだものの、魔王はおろかその配下にすら敵わず、皆滅ぼされてきた。
そんな地獄とも思われていた世界に魔王に立ち向かった5人の女がいた。
強大な魔王へと立ち向かい、人々に希望を与えた者たち。
勇者イレーネ。
戦士アリス。
騎士エティス。
僧侶ウラリア。
魔法使いオーネ。
彼女らは各地で魔物の支配から人々を救い、魔王軍と戦い続けた。
そして、誰もが倒すことができなかった魔王を倒し、この世界に平和をもたらしたという。
彼女らは魔王を倒した後も、残った魔物達によって苦しめられる人々を救うために各地に旅立っていった。
その後、彼女らがどうなったかを知る者はいない。
勇者イレーネが使っていたとされる剣は今もどこかで眠っているらしい。
この剣を引き抜き、扱うことができた者は勇者になると言われている。
「魔王か...。なんだか、おとぎ話みたいだな。って、こんなことしてる場合じゃないな。今はやることやるか」
アルヴァンは本を戻し、再び探し始める。
大空に浮かぶ大陸に関係してそうな本はどこにもなく、存在していないという可能性が大きく広がる。
しかし、諦めるわけにはいかなかった。
アルヴァンは夢の大陸という本を読み始める。
「願いを叶える神さまに叶えてもらえば...」
これも作り話かもしれない。
だが、今はなんでも試してみる必要がある。
「あの夢はどうも不思議な何かを感じた。絶対にあるはずなんだ」
本には夢の大陸の場所が描かれている。
この場所に行けば何かわかるかもしれない。
アルヴァンはふと、資料館の壁に貼ってある世界地図を見た。
何か違和感を感じる。
「炎、水、光、闇、幻、氷、風、砂...あれ、夢の大陸はどこだ?」
世界地図には、夢の大陸が描かれていない。
しかし、本には夢の大陸を含めた9つの大陸が描かれている。
気になって他の大陸の本を見ると、夢の大陸は描かれていない。
夢の大陸の本にのみ、描かれている。
「....なんで、この本だけ」
夢の大陸についてかかれた本を読み進めていく。
すると、ある文章が目に飛び込んできた。
夢の大陸は突然、空へと消えた。
「....これだ!!」
****************
同時刻、ライウン城。
ライウン王国の街並みを抜けた先にそびえ立つ大きな城だ。
そんなライウン城に青い髪をした一人の男がやってきた。
男の名はリシオス。ライウン王国に住む、研究者の一人だ。
「今日こそは認めてもらうぞ」
城の中に入ろうとした時、後ろからリシオスを呼んだ者がいた。
その者の名はレオン。
リシオスと同じく、この国で研究者をやっている男だ。
「今日も王に何か店に来たのか?前回は凶暴なネズミを見せて処刑させられそうになってたな。今回は大丈夫か?」
そう言って心配しているリオンだったが、リシオスは自信に満ち溢れた顔をしている。
「今日はな、今までで最高の出来を持ってきた。レイア、来い...ん?レイア、どこ行った!?」
「レイアって誰だ?」
「おかしいな。さっきまで横にいたんだが。小柄な少女を見なかったか?髪は短く、黒色で...」
「あー、それならここに来る途中で蝶とたわむれてたけど」
その言葉を聞き、リシオスは道々を走って戻り、数分後、小柄な少女を連れて戻ってきた。
レイアという少女は目元は暗く、元気がなさそうに見える。
「まさか」
「これが私の研究結果だ!!」
「...お前処刑されたいの?」
レオンは冷たい目でリシオスはじっと見つめてる。
これは期待されていない。
「そんな顔をするな。よーく見ておけ」
リシオスは鉄で出来た鎧をレイアに渡す。
するとレイアは両手で鎧を折り曲げる。
「おおお、力のある女の子か。....いや、それと研究どう関係が。ていうか、その子とどういう関係なの?」
「ここから少し離れた所にシャイン村という小さな村があってな。その周辺で魔物に襲われたのか、死にかけていたんだ」
リシオスはレオンに紫色に光る石を見せた。
ただの綺麗な石のように見えたが、何か不思議なものを感じる。
「数日前、この石を森の中で見つけた。始めはただの石だと思ったんだがな、妙な力を感じてな、家のネズミに食べさせてみたんだ。すると激しく暴れ回り、死んだ。最初は毒の石だと思ったさ。しかし、生き残ったネズミが凶暴化し始めた。魔物のようにな」
リシオスは対魔物兵器の研究をしていた。
周辺には弱い魔物が多いが、遠くに行くと強大な魔物が多い。
その魔物達に対抗するため、何かないかと探していたのだ。
「私はな、合成兵と名付け、王に見せにいったんだ」
「あのネズミはそれか!でも、城の中めちゃくちゃにされて危うく処刑されそうになってたな」
「まーな。私はあの日以来、人にも試したくなった。だが、人間を実験台にするなどできない。そう考えていた時、死にかけているレイアを見つけた。これは運命だと思ったよ。石を食べさせてみると、苦しみの叫びをあげたが、数秒後には何事もなかったかのように動き出したんだ」
レイアはその場で高速で動き回る。
足の速さは男性よりも速い。
「これなら魔物と戦えると。そう思った」
「....すごいな。身体能力が強化されているのか!」
「いかにも。まだまだ能力はあるぞ、この資料を見てくれ」
リシオスはレオンに研究資料を見せる。
合成兵のことについてたくさん書かれていた。
「魔物とも実際に戦わせてみた。結果は良好だ。これなら、認めもら貰える...やっと認めてもらえるんだ」
「ああ。そうだな...」
レオンの顔つきが変わる。
レオンは研究資料を丸め、自分の懐の中に入れる。
「でも、認められるのは俺だ」
レオンはリシオスから石を奪い取ると、隠し持っていたナイフで自分の顔を斬り、小さな傷をつけると、ナイフをその場に捨て、大声で叫んだ。
「だ、誰か来てくれ!殺される!」
その声にすぐに兵士がかけつける。
「こ、こいつがいきなり俺を...助けてくれ!」
「...は?」
リシオスは兵士に取り押さえられる。
何が起きているかわからない。
兵士に城に連行されていくリシオスをレオンは憐れむような目で見ていた。
その目を見て全てを察する。
盗まれた。
「う、嘘だろ...おい、レオン!お前、なんのつもりだ!」
リシオスは城の奥へと連れて行かれた。
城の前には、レオンとレイアが残された。
「悪いな、リシオス。俺も生活が苦しくてな...。これを見せれば、俺は多額の報酬を貰える。レイア、これからは俺がお前の主人だ」
レイアは何も言わなかった。
レオンは早速、王にこのことを報告する。
始めは相手にしなかった王だが、資料やレイアの実力を見せると顔が大きく変わった。
「す、素晴らしい...レオンよ、よくやったぞ。これなら魔物に対して有効打になるだろう」
レオンは多額の報酬を貰う。
山積みにされた銀貨。
「(これだけあれば、しばらくは安定して暮らせる。その間に更に新しい発見をすれば、一年は遊んで暮らせるぞ....リシオス、ありがとよ)」
「だが、まだ信じられないな。その石を食べれば、低確率で死なず、合成兵となると書かれているな。ダサい名前じゃな。まだ成功は一人だけか...でも、人間とは思えない力だ。レオンよ、もったいないとは思わんか?」
「は...はい?」
「魔物と戦うだけではもったいない。....戦争じゃよ」
大昔、人間同士はよく戦争をしていた。
だが、魔物が各地に溢れかえるこの時代は人間同士が戦っている場合じゃなかった。
いくつかの国は他の国に攻め入りたいと思っていたが、魔物のせいでそれはできなかった。
「しかし、この合成兵を使えば近隣の国々はワシのものじゃ。そう思わんかな?」
「はい!合成兵は強さは本物です。人間が束になってかかっても、勝てる実力はあると思います」
「ふむ。レオンよ、この合成兵を量産するんだ。....もし、量産に失敗したらわかっておるな...?」
王はその目で合成兵ができるところを見ていない。
本当にその石で合成兵ができるか信じていない。
信じているのは、合成兵の実力だ。
「しかし、成功する可能性は低いです。大勢の人間が死ぬかと...民を犠牲にするのは....」
「そうだな。.....そのレイアという少女はどこで見つけた」
「確か...シャイン村付近です」
「よし、ならばそのシャイン村の村人全員を実験台にしろ!確か、そこは50人はいただろう。すぐに兵を用意して捕まえさせよう」
ライウン王国から、多数の馬車と兵士がシャイン村へと向かっていった。
その間、レオンは城の地下牢にいるリシオスの所に行った。
「よう、リシオス」
「....貴様!!」
レオンを見ると、リシオスは憎しみのまなざしを向ける。
しかし、牢屋越しだ。
何も怖くない。
「リシオス、合成兵について知ってることを答えろ」
「ふざけるな!私の研究を盗みおって...今すぐここから出せ!」
「何を言ってる?俺の研究だぞ。意味の分からんことを言いやがって」
レオンは王からもらった銀貨の山を見せつける。
怒り狂うと思っていたが、リシオスは涙を流した。
「返してくれ...私の妻と子は失敗ばかりの私に愛想を尽かし、出て行ったのだ。この研究で名を上げれば...戻ってきてくれるかもしれないんだ。だから...頼むよ」
そんなリシオスの顔をレオンは数回蹴った。
リシオスはもはや怒りの感情よりも絶望が勝っていた。
「リシオス、合成兵の情報を教えればそこから出してやるように言ってやるよ。.....俺達友達だろ...?」
「....」
「牢にぶち込まれたって知ったら、奥さんは二度と帰ってこないだろうな」
その言葉に、リシオスは心が殺されそうになった気持ちになった。
「....わかった。言うよ」
**********
ライウン王国から少し離れた所にある小さな村、シャイン村。
村人は50人ほどの小さな村だ。
その近くの花畑に二人の子供の男女いた。
「ダリア、やっぱりここにいたか。また花集めか、好きだな」
「いいでしょ。レイアが帰ってきた時のために、花の帽子を作りたいの。...もう3日も帰ってきてない。レイア、大丈夫かな」
「大人たちが必死で探してるがまだ見つからないらしいな。近くの国にも捜索願を出してるみたいだが.....。無事だといいんだが」
そんな二人の所に無数の馬車を連れて、たくさんの兵士がやってきた。
「(な、なんだ!?)」
「(ライウン王国...?すごい数の兵隊)」
「お前たち、シャイン村の人間か?」
「は、はい」
「シャイン村を探している。案内してくれ」
兵士は銀貨を数枚二人の足元に投げた。
銀貨という大金を笑顔で拾い集め、二人は兵士たちを村へと案内を始めた。
村人たちは何事かと驚いていたが、王の命令という言葉に大人しく従い、馬車に乗り込む。
何が起こるのかと不安でいっぱいの村人たちが連れて行かれたのは、城の地下深くの大きな部屋だった。
部屋の中には、左右にふたつずつ、計4つの扉があった。
そこで、大人子供、男女と4つのグループに分けられ、それぞれ扉の奥に連れて行かれる。
長い通路を進むと、そこには大きな牢屋があった。
「な、なんですかここ」
ふと、一人の男の村人がそう聞いたとき、兵士たちは村人たちを殴り、気絶させ、縄で拘束し、牢屋の中に入れられた。
女のグループも、子供の男女のグループ2つも同様に拘束され、牢屋に入れられる。
「なにするの!」
「な、なにがどうなってるんだ!」
「お前たちは...これから実験台になる」
困惑している人々にレオンがそう言った。
実験台という言葉に村人たちは震える。
ここから、彼らにとって地獄が始まった。
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