第10話 新たな国を目指して

風の大陸から光の大陸へとやってきたアルヴァン達はライウン王国にたどり着いた。

大きな街並みや、初めて戦う魔物など新しいことがいっぱいだった。

初めてランク3の依頼を受け、大苦戦する彼らは実力をつけることにした。

実力をつけ、ランク3の魔物に挑む彼らは見事勝利する。

ランク3の依頼を積極的に受け、実力も上げていくアルヴァン達であった。


***************

「今日もいっぱい倒したな」

「銅貨も700枚も貯まったな。まあ、晩御飯と朝ごはんで結構消えるけど」

「あと薬や防具買ったりね~」

ランク3の魔物と戦い、苦戦の毎日だがランク2よりも得る報酬は大きい。

しかし、傷を負ったりして回復薬を使用しなくてはいけないため、その分費用がかかる。

結局、一日3食、回復薬とお金を使っていくと残るのはほんの少し。

そんな毎日が続いていた。

ある日のこと、ガウディアは提案した。

「そろそろこの国を出ないか?」

この近辺の魔物は安定して倒せるようになっている。

また、数日間この国に滞在していたが、空に浮かぶ大陸に関する情報を得ることはできなかった。

「どうしようかな~」

「他の国なら何か情報が掴めるしれないだろ?今決断しなくていい。明日までには考えててくれ」

「わかった」

いつものように三人は依頼書を持って、受付嬢の所に行く。

「皆さん、依頼の達成数が一定に達しましたね。ラックアップに挑戦しませんか?」

迷うことなく、『はい』と答える。

「内容は簡単です。この手紙をヨウタイ王国のギルドに届けるだけです」

そう言って、受付嬢は手紙をアルヴァンに渡す。

「開封禁止です。では、頑張ってください」

「グッドタイミングだな」

「よし、ランクアップもかねて旅に出るか!」

「賛成!」

地図によると、ここからアカリ山を抜けた先にヨウタイ王国と呼ばれる国があるらしい。

地図を見る限り、かなり遠くにある。

試験にはぴったりだ。

三人は旅の準備をし、ライウン王国を出発する。

ヨウタイ王国に行く前には、ヒカリ山と呼ばれる所を抜けなければいけない。

ヒカリ山には、陽光の森を抜けた先にある。

三人は陽光の森をゆっくりと歩いていた。

「他の冒険者に聞いた話だと、道中の山にはドルイドって言う魔物がでるらしいんだ」

「ドルイド?」

「ガウディア、顔広いよね」

「他の冒険者に時々絡んでるからな。....ここからが重要なんだ。そのドルイドって魔物な...【魔法】を使うらしい」

「魔法?」

魔法という言葉に、二人はピンとこない。

ガウディアでもわかっていないようだ。

「聞いた話じゃ、手から火の玉を発生させるらしい」

ナズナは思わず立ち止まる。

口からではなく手からと言われ、想像がまるでできない。

「どういうこと!?」

「俺も知らないんだって」

道中、トレントに複数回襲われるも難なく撃破する。

休憩を何度か挟み、ようやく森を抜ける。

森を抜けた先には、大きな山岳地帯が広がっていた。

森はと違い見晴らしが良い。

「ここがヒカリ山か?」

アルヴァンはドルイドに警戒している。

魔法というものがどんなものかわからないため、気は抜けない。

少し歩いていると、突然岩陰から緑色の肌をした小人が2匹現れる。

やせ細った体。とでもじゃないが肉弾戦には向いていない。

「魔物だ!」

「ケケケ」

小人は、指先をこちらに向けた。

「まさかっ!」

「ケッケェ!」

突如、指先から直径10cmほどの火の玉が放たれる。

いきなりの攻撃、そして指先からという驚きもあって誰も動けなかった。

火の玉はアルヴァンに命中し、少し後ろに下がらせた。

「ぐわっ!」

「今のが魔法か!」

「アルヴァン、大丈夫!?」

強い衝撃とともに、やけどがアルヴァンを襲う。

「防具を着ていたというのに、生身で受けた気分だ。熱い...。こいつがドルイドか!」

ガウディアはアルヴァンを守るように立ち、ドルイドに斬りかかる。

「おらぁ!」

攻撃は強力なものの、見た目の通り防御は弱い。

「グゲエ!」

一撃で仕留めることができた。

「アルヴァン、攻撃受けてどうだった」

「なんていうか...防具が意味を成してない気がして」

「どういうこと?」

その時、岩陰からドルイドが3匹現れ挨拶と言わんばかりに、三匹同時に火の玉を放った。

三人は反射的に剣で防ごうとした。

強い衝撃が襲う。

その衝撃に怯んだナズナの背後の周り、ドルイドは更に火の玉を放つ。

ナズナの背中を衝撃と熱が襲い掛かる。

「い..たた。背中が熱い。ヒリヒリする。どうして....防具着てるのに」

アルヴァンの言っていた。防具が意味を成していないという説明がわかった。

「ガウディア、魔法は防具じゃ防げないみたいだ!」

「まじかよ...」

ドルイドは追い打ちをかけようと火の玉を放つ。

剣で防げば、ダメージはない。

しかし、それでは衝撃で態勢が崩れる。

「避けるしかないな。全員離れて戦うぞ」

相手は3匹。こちらと数は変わらない。

1匹ずつ、うまく誘導し個別撃破を狙う。

左右小刻みに移動し続け、狙いを定めなくさせ、接近したところに攻撃を入れる。

「ンギャア」

相手は防御が弱いので一撃を入れさせすればいい。

なんとか全滅させ、辺りを警戒する。

「まだ山にきて数十分ってところだぞ。あんなのがいっぱいいたら体力が持たないな」

「背中どうなってるんだろ。すごくヒリヒリする」

傷ついた二人に回復薬を使い、ガウディアは辺りを見回す。

近くにはもういないようだ。

「なるべく早く抜けたいな」

少し休憩し、三人は先を急ぐ。

すると、再びドルイドが2匹出現する。

だが、ドルイドだけじゃない。

「あれは...カニか!?」

大きな2匹のカニが守るようにドルイドの前に立っている。

ストーンクラブだ。

硬い甲羅を持ち、剣ではなかなか倒せないと言われている。

「あいつら仲間か....」

「ありゃ剣効かねえな」

ドルイドの魔法を避け、狙いに行くもカニが邪魔をしている。

後方からドルイドが魔法を使い、ストーンクラブは盾となり、近づく者を薙ぎ払う。

厄介な組み合わせだ。

ストーンクラブから倒そうにも、剣が通らずに薙ぎ払われる。

「ケケケェ!」

カニに気を取られている間に、アルヴァンの背後から火の玉を撃ち込まれる。

その衝撃で倒れたところをカニのハサミが襲い掛かる。

「くそっ!」

アルヴァンは剣でハサミを耐えるも、横からドルイドが襲い掛かる。

二人は1匹のカニに邪魔され、近づけない。

「だめか...」

そう思っていた時だった。

「ファイアーボール!」

突如、どこからか女の声が聞こえたと思うと、火の玉がカニを襲い、吹っ飛ばした。

アルヴァンはすぐに横に飛びのき、ドルイドの攻撃を避け、一撃を入れ込む。

「ギャワ!」

ドルイドを倒すと、ガウディア達の援護に向かう。

三人の攻撃を1匹のカニでは守り切れず、ドルイドは一瞬にして倒される。

残すは目の前にいるストーンクラブ1匹と火の玉をぶつけられ、怯んだもう1匹だ。

周りを見るも、近くに人はいない。

先ほどのは、一体...。

「無理に戦う必要はない、逃げるぞ!」

剣が通じない相手に挑んだところで勝てる見込みがない。

動きが遅く、容易に逃げることはできた。

三人は岩陰に隠れ、体を休める。

「あんな組み合わせ,、ずるいな」

まだ山に入って1時間も経過していない。

魔法という攻撃すらしっかりわかっていないのに、そこにストーンクラブの組み合わせは勝てる気がしない。

「さっき、火の玉がカニを襲ったんだ。誰だろう」

「ドルイドが間違えたんだろ」

「いや、人の声が聞こえたんだ。ガウディア、人間も魔法は使えるのか?」

「知るかよ」

聞き間違いではない。確かにあれは人の声だ。

自分たちを助けてくれた人がいる。

「なんだか、私聞いたことがあるかも。人は長い修行を積むと、魔法使いになれるって、昔お父さんが話してくれたのを覚えてる」

「魔法使いか...」

先ほど助けてくれた人は魔法使いなのかもしれない。

だとしたら冒険者だ。

「お礼がしたいな」

「そうだね。危うく私たち全滅するところだったし」

「一日でヨウタイ王国には着きそうにないな。ライウンに戻るか?」

幸い山に入って少ししか進んでいない。今なら夜までには帰れる。

自分たちの実力ではヒカリ山は速すぎたのかもしれない。

三人は来た道を引き返すことにした。

しかし、そう簡単にはいかなかった。

「なんだありゃ」

20匹近くいるストーンクラブの群れが道を塞いでいる。

これでは帰れない。

「動きは遅いがあの数じゃ捕まるな...他に道はないのか?」

「ここは初めてだからな。別の道を探すのは危険だぞ」

群れがいなくなるのを待ってみるが、移動する気配はない。

このままでは日が暮れる。

「別の道を探すか」

少々危険だが、坂道を見つけた。

迷っている時間はない。

来た道とは大きく外れてしまったが、三人は陽光の森に戻ってくることができた。

日も暮れ、夕方になっている。

「夜は強い魔物が出るって言ってたな。急ぐぞ」

そう言って森の中を走り続けるも、なかなか抜け出せない。

迷ってしまった。

「おいおい、やばいぞ」

森の中は似たような景色ばかりだ。

トレントにも襲われ、完全に道がわからなくなってしまった。

気づけばすっかり夜だ。

明るい時間帯では聞こえなかった魔物の鳴き声が聞こえる。

「どうするの!」

視界の悪い森の中じゃ魔物に襲われると危険だ。

「ここで野宿だな」

選択肢なんてない。下手に歩き回り、体力を使うほうが良くない。

三人は荷物を下ろした。

「焚火で少しでも魔物を遠ざけよう」

ガウディアは小さな赤い石を取り出す。

「これはな、火炎石だ。強い衝撃を与えると数秒間石から火が発生する。こんなこともあろうかと買っておいたんだ。冒険者の必需品だぞ」

火炎石を剣で思いきり叩くと、ヒビが入り、中から火が発生する。

周辺の枝などを集め、火をつけた。

「暖かい」

「本当に大丈夫かな...」

夜の森は暗く、月明かりもほとんど届かない。

魔物が現れても、すぐに反応できない。

「音に警戒しろよ。いつ襲ってくるかわか」

背後から唸り声が聞こえる。

「ひっ!」

奥から、巨大な紫色の狼が現れた。

「おいおい、やばそうだぞ...」

ガウディアは剣を構える。

狼はこちらにビビるどころか、ゆっくりと接近する。

戦うしかない。

「やるしかないぞ!」

「ここここわいよ」

「三人で挑めば戦える。行くぞ!」

そう言って、先に仕掛けたアルヴァンとガウディアが一瞬にして横に吹っ飛ばされる。

「グルルル」

唸り声を上げて、ナズナに近づく。

今の自分たちでどうにかなるレベルじゃない。

動けないナズナもまた、狼に思いきり吹っ飛ばされた。

狙いは自分たちじゃない、買い込んだ食料のようだ。

「お、おまえら動くなよ。じっとしてろよ」

小声でガウディアが言った。

三人は静かにしている。

食料を漁り、満足したのか狼はゆっくりと森の中に消えていった。

数分間じっとして、完全に姿が見えなくなったのを確認すると三人は荷物をまとめ、移動を開始する。

「やっぱり森を抜けなきゃな」

またあのような魔物に襲われでもしたら全滅してしまう。

だが現実は厳しく、歩き続けるも森は続くばかりだ。

歩き疲れ焦っていた時、遠くに明かりが見える。

「あれは...村か!?」

生き返ったかのように最後の力を振り絞り、小さな村にたどり着いた。

アルヴァンは民家の扉を叩いた。

中からは白く、長い髪をした若い女が出てきた。

「すみません、道に迷っちゃって。朝まで泊めてもらえませんか?」

「旅の方ですか...わかりました。朝までなら」

女は三人を中に入れる。

中は随分と広い。

「二階に使ってない部屋がありますから、そこで寝てください。こちらです」

「ありがとうございます」

二階に案内されると、部屋が2つあった。

「こちらの部屋です」

中は綺麗に片付けられており、ベッドは二つ置いてある。

女はその隣の部屋を使っているようだった。

部屋の壁には優しい顔をした夫婦だと思われる男女と、子供だと思われる小さな女の子が写っている絵が飾ってある。

「ここってあの絵の夫婦の部屋か?」

「だとしたらあの女性は子供かな...」

しかし、この家にあの女以外誰も住んでいる気配はない。

あまり詮索はしないほうがいいだろう。

二人にベッドを譲り、アルヴァンは床で寝ることにした。


そして翌日。

「おはようございます。起きてください」

寝ているアルヴァン達を女が起こしにやって来た。

アルヴァン達が起き上がると、女は部屋を出た。

「迷惑かけるわけにもいかないし、早く出よう」

女に感謝し、家を出る。

「ここ村だよな。店ないかな」

「そこそこの大きさだからあるだろう」

そう言って歩き始めようとした時、家の中から女が出てきて三人の前で立ちふさがる。

「だめです。すぐに村を出て行ってください」

何か悪いことをしてしまったのだろうか。

女は怒ると言うよりも、何か心配しているような顔だ。

「この村はよそ者を嫌うんです。だから、見つかる前に」

「スヤキちゃーん、いるかーい?」

遠くから、若い男の声が聞こえたと思うと、女はアルヴァン達三人は急いで家の中に入れる。

「二階の部屋に隠れてください!」

女はすぐに扉を閉める。

「よおスヤキちゃん」

「おはようございます」

「なんか慌ててたね。どうしたの?」

「いえ。背中に服にゴミがついていたので家に戻り、とっただけです」

「ふーん...。まあ、いいや。村長さんから連絡預かってるから家の中で話しようよ」

男は家の中に入る。アルヴァン達は急いで二階の部屋に入る。

その時の音に男は反応した。

「誰かいるのかい?」

「ネズミだと思います」

「にしては大きすぎる。泥棒か!!」

男は二階に駆け上がる。

アルヴァン達が隠れている部屋の扉を開けようとした時、女が止めた。

「女性の部屋に勝手に入るのはやめてください」

「おおっと、すまんね」

「部屋の前で待っててください」

女は小さく扉を開け、部屋の中に入る。

部屋の入口すぐ横に立っていたアルヴァン達に小声で話しかける。

「ベッドの下に隠れてください。見つかると大変なことになりますから。お願いします」

「待てよ。なんで、俺達を匿う。友人って形でごまかせばいいだろ」

「事情は後で説明しますから、今は隠れてください」

言われる通り、三人は隠れた。

女は男を部屋に入れる。

「うーん。確かに何もいないな。疑ってごめんよ。下で話しようか」

女は男と一緒に下に降りる。

「たく、なんなんだよ」

「よそ者嫌う村か...あそことは大違いだな」

「昔嫌なことでもあったんだろ。...見つかったらどうなるんだ」

「殺されるのかな...隠すほど嫌うってことだし」

「やめろよ。あの女に事情聴いてからだな。さっさとこの村出てーよ」

1時間後、女が部屋に戻ってきた。

「お待たせしました。事情を話します」

女は三人にお茶を出した。

床に湯飲みを3つ置いた。

「1階は危険ですので、すみません。....私の名前はスヤキと言います」

「なんでよそ者を嫌うんだよ。なんなんだこの村は」

スヤキは何か迷っているのか、無言になった。

その間にガウディアはお茶を飲み干す。

「これから言うことを他言しないって約束できますか?」

とても真剣な目をしている。

ガウディアはさっさとこの村から出たい気持ちでいっぱいだった。

「村から出してくれるなら、他言しねーよ」

「俺も守る」

「わ、私も」

何をされるかわからない今は、大人しくしているしかない。

なんだかこの村は不気味だ。

「この村....魔法使いの村なんです」

アルヴァンとナズナはお茶を吹いた。

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