生徒会に入りたくない俺は再び脅されました

 ――――は?


 俺は西条院から聞いた言葉に思わずフリーズしてしまった。


「え、ちょっと待てよ! なんで俺が生徒会に入らなきゃならないんだよ!?」


 そうだ、俺が生徒会に入る理由がない。

 以前西条院から誘われたことはあったが、しっかり断ったはずだ。


 ――――まさか!? 諦めきれず再度お願いという名の脅迫をしてきたというのか!?

 そうまでして俺に生徒会に入って貰いたいとは……。て、てーれーるー。


「今回に関しては、私が入って欲しいからではなく、時森さんの所為なんですよ?」


「俺の所為?」


 俺が一体何をしたというのか?

 まるで心当たりがない。


「あなたの素行が悪すぎるので、生徒会で監視、及び調きょ────もとい素行を改善させる為です」


「おい、調教とか言いかけなかったか?」


「だんだんひいちゃんの発言が怖くなってきてるよ……」


 こいつ、もう俺に取り繕う気なくなったな……。

 ほら見ろ、神楽坂も若干引いてるじゃないか。


「というより、今回も時森さんには拒否権がありませんよ?」


「は? また動画をネットにアップするとか言って脅すのか?」


 こいつは、なんてクソ野郎なんだ。

 純粋にお願いできないのかねこの美少女は。


「いえ、違いますよ。元々、時森さんの生徒会入りは生徒指導の先生方からお願いされたものです。拒否したら冬休みは元旦以外補習をさせる話らしいので、拒否権がないというわけです」


「……ついに先生までもが脅迫してくるとはッ!?」


 この学園には脅迫してくるクソ野郎しかいないのか!

 ……俺、入る学校間違えたかもしれない。


「でもこれ、完全に自業自得だよね」


「日頃の行いが悪いのが結果として出ていますね」


 ……俺が一体何をしたというんだ。

 まるで心当たりがない。


「というわけで、明日から生徒会で活動してもらいます」


「頑張ろうね! 時森くん!」


 しかも、明日から……。

 あぁ、俺の彼女を作るための時間がどんどん削られていく……。


「──ん、 頑張ろうって言った? その言い方だと神楽坂も入るみたいに聞こえるのだが」


「そうだよ! 明日から私も生徒会メンバー!」


「本来、生徒会は会長一名、副会長二名、書記、会計それぞれ一名の計五名で行っています。しかし、書記と会計が現在空席なので、書記にはアリス、会計には時森さんにしてもらうことになりました」


 西条院がありがたい事に丁寧に説明する。


 役職を選ぶ自由もないとは……。


「けど、西条院。こいつが生徒会なんかに入っても大丈夫なのか? やらかす気しか起こらんのだが……」


「えーっと、時森くんの中では、私はそういうイメージなのかな?」


 残念ながらそうなんです。

 神楽坂は軽く笑っているがよく見たら引きつってるだけだった。

 ごめんな。もうそういうキャラで俺の中では固定されているんだ。


「そこは心配いりません。アリスには基本お手伝いをしてもらいますので、書記の仕事は全て時森さんにやってもらいます」


「更には仕事を押し付けられてしまうとは……」


「ちょっとひぃちゃん!それはおかしいよ!」


 そうだ神楽坂!この配分はおかしいんだ!

 神楽坂はいつの間にか優雅にお茶をしている西条院に抗議をする。


 流石だ神楽坂、さぁこの仕事の配分はおかしいと言うんだ!


「私だってやらかさずにできるかもしれないと思うかもじゃん!」


「そっちじゃねェェェェェェッ!!!」


 そっちはほぼ100%でやらかすと思っているから大丈夫なんだよ!?

 抗議する箇所が違う、神楽坂!


「まぁ、自信満々に言えない以上怪しいのには変わりないのですが……そこはまた追々話し合うとしましょう」


 手に持っていたティーカップを置いて、息を捲し上げる神楽坂を宥める。


 ……俺が生徒会に入るのは確定の流れなのね。


「っていうか、生徒会っていったらあいつがいるじゃねぇか……」


 俺は、そのことを思い出すと思わずため息が溢れる。


 あぁ、余計に先が思いやられるなぁ……。



 ♦♦♦



「へぇ〜、という事は今日から生徒会メンバーになるんだね」


 次の日、俺は一輝に教室で昨日の出来事及び愚痴を話していた。

 目の前では面白げに聞くイケメン。だからと言う訳では無いが、俺の表情は悲しいものだ。


「そうなんだよ……生徒会に入るってだけでもめんどくさいのし、彼女を作るための時間もなくなる──おまけにあいつも生徒会にいるんだよなぁ……」


「あ、あぁー……あの人ね……」


 一輝は俺が言った人が分かるのか、苦笑いしている。


 本当にあいつとは学校では関わるつもりはなかったというのにッ!


「お、なんだ? 時森は生徒会に入るのか?」


 俺達が話していると、クラスの男子が話しかけてくる。


「あぁ、大変不服ではあるがその通りだ」


「……チッ、羨ましいぜお前!」


 そう不服そうに言うと、何故か周りから「そうだそうだ!」「羨ま死ね」「今からコンクリ買ってこなきゃ」なんて物騒な声が聞こえてくる。


 ……そんなに羨ましいなら代わってやろうか?


「あの学園三大美少女が全員集まった生徒会だぞ! 入れただけでも号泣、もしくは末代まで語り継ぐような事柄だぞ!」


 そんなことが末代まで語り継がれたら子供が可哀想だろ。

 お子さんなんて反応したらいいか分からないじゃないか。


 ……というか、学園三大美少女が西条院と神楽坂なのは知っていたが、確か女子は他にあいつしかいねぇし、あいつが三大美少女の一人だったとはなぁ。


「あの人、学園三大美少女一人だったんだね……」


「あぁ、最後の人は誰かと思っていたが、悲しいことにアイツみたいだな」


 ちょっと最後の一人は誰なんだろうと期待していたのに残念である。

 一輝も初めて知ったのか、意外そうな声をあげる。

 ……まぁ、でも確かに可愛いもんなぁ。


「まぁ、とにかく頑張ってきてよ」


「……おう」


 一輝から励ましの言葉をいただくが、あまり元気になれないわ。

 これからの事を考えると不安で仕方ないからな。


 本当に、生徒会入りたくないなぁ……。



 ♦♦♦



 放課後になり、急いで帰ろうとした俺を西条院が鮮やかな足さばきで俺を地面に倒し、神楽坂と一緒に生徒会室の前まで連行。

 俺は抵抗も虚しく、生徒会室の前まで連れて行かされたのであった。


「……なぁ、本当に入らなきゃダメか?」


「往生際が悪いよ時森くん!」


「何がそこまで嫌なんですか?」


 神楽坂も西条院も足掻く俺を止めてくる。

 逃がさないためか、二人はしっかり俺の腕をホールドしている。


「いや、最早生徒会に入って神楽坂の分も仕事が押し付けられるのはもう割り切ったのだが……」


「ちょっと待って、その言い方だと私が絶対やらかすから割り切ったみたいに聞こえるんだけど!?」


「では、何が不満なんですか?」


 神楽坂が自分の立ち位置に不満を覚えて抗議してくるが、今の俺には構ってやる気力がない。

 ごめんな神楽坂。


「生徒会にはあいつがいるもん……」


「あいつ……?」


「もう、いいから中に入るよ!」


 そう言って、神楽坂は生徒会室のドアを開ける。

 すると、こちらに勢いよく突っ込んでくる人影が俺に視界に入った。


 やばいッ! 早く緊急回避しないと!


「の・ぞ・む・くーーーーん!!!お姉ちゃん会いたかったよ〜!!!」


「ぐへぇ!!!」


 俺は、突っ込んでくる人影をどうにも避けきれず、思わず変な声が出てしまった。




 ――――だから、入りたくなかったんだよ……。

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