第3話 そして二人は空き地で過ごす

 日曜日の午後。

 アオと四五六は、特に予定も目的のイベントもなく、なんとなくいつもの空き地で会って、重ねられている木材に腰かけていた。

 もちろん、女子とのデートの約束とか二人にはなく、ボンヤリとした薄曇りの空をボンヤリと眺めている。

「はー…あの新しいサッカーゲー、ゲー無だったなぁ…」

「ん? クソゲー?」

「んにゃ、ゲー無」

 アオ的に、いわゆるクソゲームは、三種類ある。


①良いクソゲー → ゲームとしてはダメでも色々と笑える。

②悪いクソゲー → ゲームとしてもダメだし怒りしか湧かない。

③クソゲー無  → ゲームとして以前に何の感情も湧かない。


 この中でも③に当たる事は滅多にないが、今回は当たったらしい。

「そりゃご愁傷様。しめじ太郎 食べる?」

「んー…サンキュ」

 四五六の労い菓子を食べながら、ジュースを一口。

 二人は偶然、駄菓子屋さんでバッタリ会って、一緒に空き地まで来ていた。

「駄菓子屋さん、なんか今日は込んでたな」

「なー」

 言いながら、アオはジュースを一口飲んで、四五六はお菓子を食べている。

「あ、昨日の夜 放送されてた映画観た? なんか、話題作だって割にはイマイチだったよなー」

「まあ、俺も途中で 観るのやめちゃったしな。好きに食っていいぞ これ」

 言いながら、四五六がお菓子の袋を二人の間に置いた。

「ああ、サンキュ…」

 手にしたお菓子を食べようとして、アオは女の子が二人、歩いてくるのに気づく。

「………」

 お菓子を食べようとする手を止めて、涼しい顔をして、さりげなく空を眺めるポーズ。

 隣の四五六は、特に気にする様子もなく、お菓子をボリボリと食べている。

「…………」

 はたして、女子たちは二人を気にする様子も一切なく、楽しそうに歩いて行った。

 「………」

 アオは、なんとなく二人を見送ってから、手にしたお菓子を口に放り込む。

「…うまいなー、これ」

「だろ? オレの好きなお菓子だからな!」

 ちょっと自慢げな四五六だ。

 また二人は、お菓子を食べながら空を見上げる。

 四五六が開けたお菓子が残り僅かとなって、アオも別のお菓子を買っていたから、自分のを開封。

「食ー? せり太郎」

「お、悪りぃな」

 四五六が、アオから貰ったお菓子を手に取って、ムシャっと食べた。

 アオもお菓子を手にして、食べようとして、また別の女の子三人が通るのに気づいた。

「………」

 食べるのを再びストップすると、ちょっと気取った感じで空を見上げて、爽やかな笑顔のアオ。

 隣ではやはり、四五六が大口を開けて、お菓子をバリバリと頬張っていた。

 二人の男子に、女子たちはやはり、気づいても気にする様子もなく、歩いて去ってゆく。

 女子たちを見送ったアオは、隣で美味しそうにお菓子を食べる四五六をチラと見てから、お菓子を口に入れた。

 薄曇りな空を、雲がユックリと流れている。

「四五六…このお菓子、ちょっと塩味強くねー?」

「だからジュースと合うんじゃん」

「ああ…まー、そういうものかもな」

 大人びた納得の言葉を吐いて、ジュースを飲もうとしたら、また別の女子たちが通る。

 アオは、ジュースを飲むのをやめて、また空を見上げながら恰好を付けた。

 両手を後ろに付いて、微風を、心地よく全身で受け流してます。みたいな。

 四五六がジュースを飲んで、缶を置いたら、コンっと金属音がする。

「ぶはぁ、この塩辛さと甘さのコントラストが、溜まんないよな」

「あ、ああ…」

 四五六の大声な感想は、女子たちの耳にも届いたらしい。

 二人の方をチラと見て、クスクスと笑いながら歩き去る。

 アオは、ちょっと恥ずかしい気持ちで女子たちを見送り、残念そうに四五六をチラ見した。

 暫しの間があって。

「…アオ」

「…ん?」

「俺の所為じゃないからな?」

「えっ、いやっ、そんなふーに考えてないぜっ?」

 幼馴染の指摘に、思わずビクっとなったアオだった。


                          ~終わり~

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