第三話 故郷へ

ガルグイユの街を出発した俺たちは、故郷への帰路についていた。荷馬車の荷台には、オークションで手に入れた「先史文明の遺産」ことバイオロイドのシリウスが、無表情で座っている。その隣には、ウェールズ商会で譲り受けた魔獣の卵と、故郷の復興に役立つであろう日本刀が置かれていた。


「へい!大将!なんか、すげーことになっちまいましたね!」


ギドが興奮したように言う。無理もない。ただの村の復興に、まさか先史文明のバイオロイドや魔獣の卵、そして曰く付きの刀が絡んでくるとは、俺も想像していなかった。


「ああ。これでもう、後戻りはできねえな」


俺はそう言って、シリウスに視線を向けた。彼女は何も話さなかったが、その視線は俺に向けられていた。まるで、俺の次の言葉を待っているかのようだ。


「なぁ、シリウス。お前は、本当に、俺の考えをすべて見透かすことができるのか?」


「はい。マスターリオンの思考パターンを解析し、行動を予測する能力は、ワタシのコア機能の一つです」


シリウスは、感情のない声でそう答えた。その言葉に、俺は背筋が凍りつくのを感じた。


「そうか…」


俺は、それ以上何も話さなかった。ギドも、俺たちの会話に口を挟むことはなかった。俺たちは、ただひたすら、故郷への道を急いだ。


道中の冒険とリオンの成長


ガルグイユの街を出て三日、俺たちは夜の野営をすることにした。街道から少し離れた森の中、ギドが焚き火を起こし、俺は荷馬車から食料を取り出す。


「へい!大将!今日は故郷の話を聞かせてくれやせんか?」


ギドが嬉しそうに言う。俺は、ギドの言葉に、故郷の思い出を語り始めた。悪ガキメンバーたちと川で魚を捕ったり、森でかくれんぼをしたり、そして、毎日のように俺が村長から叱られていたこと…。


「へへ…大将、昔っからやんちゃだったんでやすね」


ギドは、俺の話を聞いて、楽しそうに笑う。その笑顔に、俺は、少しだけ、故郷への不安が和らぐのを感じた。


「なあ、シリウス。お前は、故郷って、あるのか?」


俺がそう尋ねると、シリウスは、感情のない声で答えた。


「ワタシの故郷は、マスターが知る場所にはありません。ワタシは、先史文明の技術によって生み出された存在です」


「そうか…」


俺は、それ以上何も聞かなかった。シリウスは、俺とは違う存在だ。だが、彼女は、俺の隣にいてくれた。それだけで、俺は十分だった。


翌朝、俺たちは再び故郷への道を急いだ。街道は整備されているとはいえ、時折現れる魔物や、盗賊団の襲撃に備えなければならない。


「へい!大将!あれを見やしょう!」


ギドが指差す先には、街道の真ん中で立ち往生している馬車が見えた。その周囲には、ゴブリンの群れがたむろしている。


「…ゴブリンか。ちょうどいい、メイド生活でなまった身体に活を入れるには、ちょうどいい相手だ」


俺はそう言って、荷台から日本刀を手に取った。刀を鞘から抜きはなつと、禍々しいオーラが放たれ、ギドとシリウスは、その場にへたり込んだ。


「マスターリオン!その刀は危険です!すぐに鞘に収めてください!」


シリウスが、感情のない声で叫んだ。


「大丈夫だ。俺には、何も感じない」


俺はそう言って、刀を振る。すると、俺の身体から、淡い光が放たれた。それは、前世の俺が持っていた「構造を理解する力」と、今世の俺が持っていた「魔法を操る力」が融合した、新たな能力だ。俺は、その能力を使い、刀のオーラを、俺の身体へと吸収していく。


「…すごい。まるで、身体の隅々まで、力が満たされていくようだ…」


俺は、その新たな能力に、驚きを隠せない。この力があれば、俺は、故郷を立て直すことができる。


「よし、ギド!いくぞ!」


俺はギドと共に、ゴブリンの群れへと突っ込んでいく。俺は、日本刀を使い、ゴブリンをなぎ倒していく。その動きは、メイド生活でなまった身体とは思えないほど、軽快だった。ギドも、持ち前の怪力で、ゴブリンを次々と吹き飛ばしていく。


あっという間に、ゴブリンの群れは全滅した。馬車の持ち主だった商人は、俺たちの強さに驚きを隠せないようだった。


「お、お嬢さん…あんた、冒険者かい?」


「いいえ。ただの通りすがりのメイドです」


俺はそう言って、商人に微笑みかけた。商人は、俺の言葉に、呆然とした顔をしていた。


「これは、お礼です!どうか、受け取ってください!」


商人は、そう言って、俺に金貨の袋を差し出した。俺は、それを躊躇なく受け取った。


「ありがとうございます。故郷の復興資金にさせていただきます」


俺はそう言って、商人に頭を下げた。商人は、俺の言葉に、再び驚いたような顔をしていた。


立ち寄った村と人手の確保


俺たちは、道中の小さな村に立ち寄ることにした。この村は、最近、盗賊団の襲撃に悩まされているらしく、村人たちは、不安に怯えていた。


「…盗賊団、か。ちょうどいい。故郷の復興に、人手が必要だったんだ」


俺はそう言って、村長に面会を申し出た。村長は、俺のメイド服姿を見て、不信感を抱いているようだったが、俺は、盗賊団を壊滅させること、そして、その代わりとして、村の復興を手伝ってくれる人手を探していることを話した。


「…本当かね? 盗賊団は、かなりの手練れだと聞いているが…」


村長は、俺の言葉を信じられないようだった。俺は、何も言い返さず、ただ、村長の顔をじっと見つめた。その視線に、村長は、何かを感じ取ったようだった。


「…わかった。もし、お前が本当に盗賊団を壊滅させることができたら、村の若者たちを、お前の故郷の復興に、人手として派遣しよう」


村長は、そう言って、俺に約束した。俺は、その言葉に、深く頭を下げた。


俺は、ギドとシリウスを連れて、盗賊団のアジトへと向かった。アジトは、村から少し離れた森の中にあった。


「マスターリオン、盗賊団の人数は、ワタシのデータベースによると、三十人です。しかし、彼らは、魔道具や魔法剣を所持している可能性があります。正面から突撃するのは危険です」


シリウスが、感情のない声でそう警告した。


「ああ。分かっている。だから、正面から突撃するわけじゃない」


俺はそう言って、日本刀を手に取った。俺は、刀から放たれるオーラを吸収し、身体を活性化させていく。そして、シリウスの能力を使い、アジトの構造を解析した。


「よし、ギド! 作戦開始だ!」


俺はそう言って、ギドに指示を出した。ギドは、俺の指示通りに動き、盗賊団の注意を引きつける。その間に、俺は、アジトの裏側へと回り込み、魔法で、アジトの壁を破壊した。


「な、なんだ!?」


盗賊団のリーダーが、俺の突然の襲撃に驚きを隠せないようだった。俺は、日本刀を使い、リーダーをなぎ倒した。リーダーを失った盗賊団は、あっという間に壊滅した。


村長は、俺が盗賊団を壊滅させたことを知り、驚きと、感謝の言葉を口にした。


「お嬢さん…本当に、あんたは、何者なんだい…?」


村長は、そう言って、俺に頭を下げた。


「俺は、ただのメイドです。故郷を救いたいと願う、ただのメイドです」


俺はそう言って、村長に微笑みかけた。村長は、俺の言葉に、何も言い返すことができなかった。


ドラン爺さんとの再会と新たな野望


俺は、盗賊団を壊滅させたことで得た賞金と、村長から約束された人手を手に、故郷への道を急いだ。


道中、俺は、ある人物の噂を耳にした。それは、魔獣や魔物の育て屋を営み、帝都の品評会で殿堂入りを果たした、伝説のマスター、「ドランの爺さん」だった。


「…ドランの爺さん、か。ウェールズ商会で会った、あの人だな」


俺は、その噂に、胸を躍らせた。ドランの爺さんが、もし故郷の復興に協力してくれたら、どれだけ心強いだろうか。


俺は、ドランの爺さんの住む場所へと向かった。そこは、街から少し離れた、山の中にあった。


「お嬢ちゃん、まさか、こんなところまで来るとはな」


ドランの爺さんは、俺の突然の訪問に、驚きを隠せないようだった。


「ドランの爺さん。俺は、故郷を立て直すために、あなたの力を借りたいんです」


俺はそう言って、ドランの爺さんに頭を下げた。


「…お嬢ちゃん、わしは、もう歳じゃ。昔のような力は、残っておらん」


ドランの爺さんは、そう言って、俺の言葉を断ろうとした。


「いいえ。あなたの知識と技術が必要です。俺の故郷は、土砂災害で壊滅しました。ですが、俺には、この村を立て直す、新たな野望があります」


俺はそう言って、故郷の村の再建計画を、ドランの爺さんに話した。温泉事業と、ワイン作り。そして、マウンテンブルを使い、村の労働力を確保すること。


「…面白い。お嬢ちゃんの話は、わしの心をくすぐるな」


ドランの爺さんは、そう言って、俺に微笑みかけた。


「…わかった。お嬢ちゃん。わしは、お前の故郷の復興に、力を貸そう。だが、わしは、ただの育て屋ではない。わしは、鍛冶屋でもあるんだ」


ドランの爺さんの言葉に、俺は驚きを隠せない。


「…鍛冶屋、ですか?」


「そうだ。わしは、魔獣の骨や、魔物の素材を使い、最高の武器や防具を作る。お嬢ちゃんが持っているその刀も、わしが作ったものだ」


ドランの爺さんの言葉に、俺は再び驚きを隠せない。この刀は、ドランの爺さんが作ったものだったのか。


「…ドランの爺さん。俺の故郷の復興に、あなたの力を貸してください。そして、俺に、あなたの技術を、教えてください」


俺はそう言って、ドランの爺さんに、再び頭を下げた。


「…ホッホッホ、お嬢ちゃん。お前は、本当に、面白いな」


ドランの爺さんは、そう言って、俺に微笑みかけた。こうして、俺は、新たな仲間と、新たな力を手に、故郷への道を急いだ。

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