第二百二十八歩
僕は今、三河邸にいる。
「もっと分かりやすく教えてよ!」
おバカの治村さんも一緒に。
治村さんの問題発言後、早い方がいいと僕達二人の為に早速勉強会が催される事となった。
三河君曰く、
「勉強なら家へ来れば? 家庭教師レベルなら掃いて捨てる程いるから」
確かに彼の周りには優秀なブレインが揃っている。しかも一流の。
ところが……
「だから何度言ったら解るんだ? もう一度ミスったら人工呼吸するからな!」
「そ、それだけは……」
なぜかキモキモ五平先輩や、
「おい、いっぺん涅槃を覗いてみるか? あぁんっ!?」
爆弾岩こと三越先生。
「では保健は私が……ほら三河君」
「フザケンナ手長エビ! ドサクサに紛れて何しようとしてるのさ!?」
色気ムンムン養護教諭。他にも、
「ほらほらオバハン! 帰るなりスカート脱ぐなっつーの! ゴミッキーが教科書じゃなくてユーのパンツガン見してるじゃんか!」
「ゴメーン、ついいつものクセで……」
いつものクセ?
三河君がいるのに速攻パンツ一丁になるのが?
うらやま……乱れている!
この家は娼館かなにかか!?
「ははは、君達も災難だね」
連中に利用されている古屋さんも大概だと思うけれど今は黙っておくとしよう。
そして他にも有松先生や例の大学生、パン屋先輩やメスフンコロガシ先輩なども混じっての大勉強会となり、騒がしくありつつも優秀な人が多いせいかそれなりに手ごたえがあった。
「やったー!」
「お、やればできるじゃないか。なら次はだな……」
治村さんも五平先輩と相性がいいようで、それなりに成果が出ているみたいだ。まぁ、人工呼吸を何が何でも阻止する為に必死で取り組んでいるといったほうが正しいかも。
しかし問題もあった。なにも勉強が出来ないのは僕と治村さんだけではないようで、
「フザケンナよマッキー! 九九か? 九九からやり直すか?」
「うえぇぇん! そこまでバカにしなくてもいいじゃん!」
美人先輩は稀に見るあんぽんたんのようで、彼女こそどうやって赤楚見高校の入試をパスしたのか非常に謎である。
「マッキーちゃんはオッパイに栄養とられちゃったから仕方ないわよねぇ。でも安心しなさい、卒業後はウチの受付で雇ってあげるから。その美貌を利用しない手はないわね」
「あーん! ありがとう小糸さーんっ! でも私……大学行くもん!」
「それはちょっと」×複数
一斉にハモるこの部屋の面々。しかも古屋さんまでが。いや、相当だぞこれは?
「ふふふ」
「おいメー、そこで安心するんじゃないよ? 下を見たらきりがないんだから!」
治村さんも相当だが、どうやら美人先輩はそれ以上のようだ。見た目はあんなにも美しいのに。
「そもそもマッキーもイヤンも高望みだったんだよ赤楚見高校は。ピカリャでギリギリだったんだから」
「イヤンにピカリャって、アンジョー君と一緒に入学した?」
「そうなんだよ愛ちゃん。ピカリャは自力で何とかなったみたいだけどさ、マッキーとイヤンは入試の時、僕の後ろの席だったのをいいことにカンニ……」
「うわあぁぁぁぁあっ! 黙れアンジョー!」
美人先輩は三河君の顔面へ手を伸ばし、細くて長い指でガッチリ掴む。
{メキャメキャメキャ}
「うぎゃあぁぁぁぁぁっ!」
軋み音と共に悲鳴を上げる三河君!
美人先輩の指が三河君の顔面にドンドンめり込んでいく!
{グシャ}
嫌な音と共に彼は沈黙した。
そしてやはりと言うべきか、僕は胸がスーっとした。
「ちょっとやり過ぎよマッキーちゃん! ほら愛ちゃん。急いでアンジョー君を私の寝室へ!」
「アイアイサーよ小糸!」
「ご、ごめーん。私責任とるぅ」
「責任? ドサクサに紛れて何言ってんのよマッキーちゃん?」
「そ、そんな夜鷹を見る目で見ないでよ小糸さん!」
「あら。マッキーちゃんでも夜鷹なんて言葉知ってるんだ」
因みに僕は知らない。
鷹は夜目がきかないと聞いたことはあるけれど、まさか関係ないよな?
「あれでしょ小糸さん、鳥類は暗いと目が見えなくなるから夜になると地べたでイモ虫のように這いずって過ごすんでしょ? その姿が滑稽でとってもマヌケなんでしょ?」
「意味は全く違うけれど間抜けを見る目ってのは大凡合っているわね」
「やっぱりぃっ!」
なるほど、色々な意味で勉強になるなぁ。
「それぐらいにしてあげたら小糸さん。いくらマッキーちゃんでも嘘を教えたらだめでしょうよ」
「そうね。悪かったわマッキーちゃん。夜鷹って実は豊田さんみたいな女性の事を言うのよ。エロい制服姿で夜な夜な男を誘う性病まみれの立ちんぼ……」
「!」
この後恐怖の大王が三河邸を襲った。
それにしても何か重大なワードを聞き逃したような?
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