第七十一歩
星ヶ丘ステラ。
都市大学経済学部出身の才女。在学中、近所のカフェでありえない量のパンケーキを食していると、偶然居合わせた芸能事務所関係者の目に留まりその場でスカウトされる。
年齢19歳とうたっているが、実は23歳。
年齢の辻褄を合わせる為、大学中退でデビューと公言しているものの、実際はちゃっかり卒業している。
グラビアアイドルとしてデビューするものの、当初は鳴かず飛ばずでそれなりに苦労した。
同じ事務所である浜松濱名子ちゃんのバーターとしてドラマデビュー。しかし出番は毎回数秒の超チョイ役。
同じドラマの撮影現場で浜松濱名子ちゃんと一緒に写った数々の写真をSNSにアップしたところ、これがバズり一気にスターダムへとのし上がる。
母親はチューリップ国出身で父親はこの国。
※どこぞのバイク屋と同じ家族構成。
僕熱田久二がこれまで見た中で一番美しい女性であるマッキー先輩に負けず劣らずの美貌。(若干……結構負けているかも)
グラビア出身のクセにスリーサイズは非公表。
高身長でスレンダーな身体にデカい胸(ここはマッキー先輩に勝利)がトレードマーク。
僕が彼女について知っているのはこれぐらいだろうか。きっと千賀君も同じぐらいの情報は持っているはず。
「僕よりでかいな?」
「公表してないけど180ぐらいはあると思うよ」
「カッコイイなおい!」
「ありがとう。でも結構コンプレックスなんだけどな」
星ヶ丘さんと対比してみれば分かるが、少し低い三河君の身長は175センチぐらいだろうか。千賀君にしても三河君よりチョイ低いぐらいで170以上はあるようだ。そして僕は168センチのこの中で一番のチビ。それこそコンプレックス大爆発だし。
「大丈夫だよステテコ。世界の名だたるスーパーモデルは総じて高身長ジャン。もっと自信をもちなよ」
星ヶ丘さんは三河君に手を引っ張られ、屈んだ身体を伸ばすようにその場で立たされた。そして……
「あっ……」
やりやがった!
何のためらいもなくグラビアクイーンを抱きしめやがった!
しかも結構強めにギュッと!
彼女は彼女で両腕を三河君の後ろへまわし、これまたギュッと……落ちたな。
つか、本当にぶっ殺すぞ三河っ!
「ところでさ、どうしてステテコは僕の名前を知ってるの?」
悲しいお知らせ。
やはり三河君はステラの名前をステテコと間違えて脳へインストールした模様。
ご愁傷様だよ星ヶ丘さん。
「あの……実はヨネダコーヒーで名子ちゃんと一緒にいたのは……(ハムハム)私なの」
耳元で囁くように話す三河君に心を奪われたのか、時々彼の耳を甘噛みをし、吐息を吐くように答える星ヶ丘さんの姿は最早恋の奴隷と呼べるのではなかろうか。艶やかな彼女の仕草に見せられた僕はゾクゾクが止まらない。これまで曖昧だった彼女を応援する(エロい)気持ちが今ここでハッキリとする。こうして自身が星ヶ丘ステラの大ファンだと自覚した。
「うっ!」
前かがみで変な声をあげる千賀君もきっと同じ気持ちだろう。
「私は仕事であの街にいたんだけれど、名子ちゃんがトヨカワ自動車とCMの打ち合わせで来るって言うからついて行って私自身も売り込んでやれって」
「結構強かだな? でもそれぐらいじゃなきゃ芸能界などという魑魅魍魎の蠢く魔界では生き残っていけないんだろうね」
「ふふん、そうね。で、その時名子ちゃんが頻りに三河君の話をするもんだから……」
「チッ、犯人は名女優浜松濱名子か。安いサスペンスドラマみたいだなぁもう」
一見普通の会話に思えるが、実は終始抱き合って乳繰り合いながらのエロエロイチャイチャ見る方が恥ずかしいぐらいの二人。そして見間違いでなければ彼女は三河君の顔面あちらこちらへチュウしているような……。いや、やはり見間違いだな。グラビアで有名なアイドルがほぼ初見の、しかも年下のガキ相手にチュウなどするはずなかろう。三河君の顔が星ヶ丘さんの口紅でどんどん赤く染まるのも間違いなく気のせいだろう。
こうして僕と千賀君は誰に詫びるでもないのに終始お辞儀の態勢で股間を押さえながら二人の会話を盗み聞きしていたのであった。
もう殺すだけでは足りないかもね三河君ってば!
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