第五十七歩
「わはは! だったらさ……」
集合場所近くにあるデパート内カフェマルハチ。ここは、普段ならショッピングを楽しむオシャレな女性達などが一息入れる為の憩いの場となっている。となればいつ来ても待ち時間必至の満席状態が当たり前な超人気店なのは言うまでもない。
「お、一番乗りじゃん!」
三河君の言う通り、この時間ではまだオープンしたばかりでどうやらお客は僕達のみ。広々とした店内に誰もいないだなんてなんだか不思議な気分。ただ問題があるとするならば……
「げっ! ドインフレじゃんか! ライブの奢りじゃなかったら破産だったよ!」
そう、メニューに並ぶ数々のオシャレな品は容易に僕達高校生の財布に大ダメージを与える。以前のヨネダコーヒーみたく庶民に寄り添うなどの甘さは一切ないブルジョアを狙い撃ちしたカフェ。まぁ、これはちょっと言い過ぎだったかも。しかし立地のせいもあり、一品一品が高価なのは事実である。
「キューちゃん支払い大丈夫? 僕達男子高校生の所持金なんて、たかが知れてるじゃん?」
「今日は修学旅行ってんでお母さんがそこそこお小遣いくれたから大丈夫だよ。だからといって調子に乗れば破産必至だけどね」
マジ危なかった。
だけど改めて思う。女性と行動を共にするってのはこういう事なんだなと。野郎同士で遊ぶのとはワケが違うんだなと。
そんなくだらない分析をしていると、店の人が注文を取りに現れた。三河君達はケーキセットを、僕は一番安いブレンドを注文。笹島さんに奢ってもらうからって、ちょっとは遠慮しろよな三河君よ。それと財布の中身に限りある僕にもな!
暫くして注文の品が揃うと、僕達は他愛もない話で時を過ごす。すると……
{ピロピロピロピロ……}
なんとも懐かしい着信音。発信元は僕や笹島さんのスマホではなく、誰かさんのガラケー。
「……モシモシ?」
怪訝な顔で電話に出る三河君。相手が分からないのだろうか?
「街道? どこの街道だ? あぁ!?
いや、最初から名乗っていると思うんだけれど。それにしても海道君から電話だなんて、何かあったのだろうか?
「なに、もう着いた? どこにいるのかって? えっと……」
三河君は今いる場所と揃っているメンバーを海道君に伝えると、そそくさ電話を切った。電話が嫌いなのかな?
「まったく、なんで毎回非通知なんだよ? おっさんさんといいタコさんといい東といい、もう! ブツブツ」
タコさんって誰なんだろう?
友達かな?
それにしてもやけに面白いあだ名だなぁ。
「フフ、三河君は電話が苦手なのね。お喋りは好きそうなのに」
「いや、そうじゃないんだよライブ。非通知でかかってくる電話の地雷率が今のところ97%なんだよね。つか、通知してきたらしてきたで相手によっては強制的に電源オフにするけど」
なるほどな。電話相手も無視されるのを避けるために非通知でかけてくるんだ。三河君も相手が分からないから警戒しながらも一応出るみたいだから。どのような相手を避けているのかは知らないけれど、妙な駆け引きしてるなぁ。ってか、残り3%の相手って、そっちの方が気になるな。
この後三河君によってガラケーのなんたるかを延々聞くハメとなる。その時間なんと15分。しかし海道君の到着により、その話にも終止符が打たれるのであった。いや、正確には彼に驚かされるのであった。
えぇっ!? マジかい海道君ってば!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます