第三十五歩
振り返る一同はその光景に唖然。
3D世界ではありえない超絶美女がその美しいお顔をピクピクさせながら僕達のすぐ後ろで仁王立ちしているのだ。
もう一度言おう、絶世の美女が阿修羅化しているのだ!
噴火はもう目の前!
ついでにその隣へ多少劣るも、やはり美しい女性がもう一人。
こう言ってはなんだが、僕達の星である笹島さんがそこら辺りにゴロゴロ転がっている只の女生徒と化してしまう程に二人は眩しい。
ところが突きつけられたのは悲しい現実。
二人の外観から閃きのみで作り上げようとした僕の妄想を、膨らませる時間すら与えてくれない彼女達。
野性味あふれる行動が、僕どころか今この場にいる全員を恐怖で縛り上げる。
「いい度胸だなオラ!」
完成された全てのパーツからなる顔が、次々と織り成す大量のシワで閻魔大王を上回る恐ろしい表情へと変化!
彼女の繰り出す右手が五平先輩の顔面を鷲掴みにすると次の瞬間!
{メキメキメキッ!}
「ギャアァァァァァァァァァァァァッ!」
削岩機よりも強大な破壊音が五平先輩を襲う!
苦痛に歪む彼の表情から間違いなく頭蓋骨陥没及び複数個所の粉砕骨折は免れない!
彼には悪いが、不思議とこの時胸がスーっとした。
「小張さん、そのまま古屋さんの隣まで移動しましょう」
「オッケーないろちゃん。後宜しく」
顔面偏差値オーバーフローの美しい女性は五平先輩をアイアンクローで顔面鷲掴みのまま、引きずりながら店の入り口近くにあるカウンターへと向かった。
この人達も古屋さん、そして三河君の知り合いなのか。
「さて、さっきのゴミの口ぶりから、もしかして君達は三河君のクラスメート? でなけりゃあのクズと接点なんてありえないものね。まぁ、あのヘドと絡んでもいい事なんて一つも無いと思うから廃棄処分は私達に任せておいて! 私は同じ高校の三年で小碓ないろって言うの。そこのパン屋の娘だからクソ絡みで困った事があればいつでも相談してね!」
美しいお口から想像もできないスラングの数々。汚いものを表す単語の代入先は全て五平先輩。違う意味でのご褒美かと。
「ないろちゃーん! 古屋さんがケーキ奢ってくれるってさぁー! 早く早くぅーっ!」
この人が校内で噂される”ナイローブレッドの美人先輩”か。だけど向こうの女性の方が数段にキレイだぞ?
「分かったー! すぐ行くーっ! ……ちなみにあっちの女性は私と同じ三年の小張真紀子さん。ゲロ絡みで私が不在なら彼女に相談しなさいね!」
小碓先輩はそれだけ言い残すと、小走りでカウンターへと向かった。
つか、小張先輩ってもしかして知性に与えるはずのポイントを全て魅力へ振ったと言われているあの小張先輩か!?
その美貌を超える者は天使か女神しかいないと噂されるマッキー先輩?
マユツバかと思ったけど実在したんだ。
ていうか、赤楚見高校美人ツートップの二人とも三河君の知り合いだって?
「……なんか凄かったですね」
「わ、私、伊歩が学校で一番キレイって思ってたけど……あの人達なんなん? 見てくれでは絶対敵いっこないじゃん! ……なんだか自分が女でいることが恥ずかしくさえ思えてくるわー」
「そんなこと言わないで芽衣ちゃん。とはいえ、私自身もちょっぴり同じように思っちゃった。 自惚れではないけれど、それなりに自信あったんだけれどなぁ……」
大丈夫ですよ笹島さん。五平先輩への態度を見るに、性格は間違いなくあの二人より美しいと思いますからね。
「あの人達も三河君の知り合いみたいですね。彼が女を意識することなく、慣れた感じで接するのもなんとなく頷けますね。あれ程の美人が周りにいれば私達一般人なんてそこら辺りの石ころ程度にしか……」
ポジティブが売りな伊良湖委員長が珍しく自虐を口にする。確かにこの場にいる三人も美しいのだけれど、あのマッキー先輩は格が違うというかなんというか。
だけど小碓先輩には負けずに劣らずですよ伊良湖委員長! と笹島さん!
「ちょっと熱田? 私になにか言いたげね? ……どうせわたしゃこの中じゃ一番劣るわよ! 口に出さずともアンタのその眼がそう言ってるのよ! シネッ!」
治村さんはどうやら超能力が芽生えたようだ。
完全に僕の心を見透かしている。
それもこれも全部三河君のせいだ!
ふざけんなよ三河!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます