第二十六歩
楽しい夕食会も終盤に差し掛かり、大人たちプラス三河君は完全に出来上がっていたころ、お開きをスムーズに行えるよう後片付けを始める僕達高校生組。これだけ高級な食材を頂いたのだから、せめてものお礼にと伊良湖委員長の指示の下、これまた忠犬の如く与えられた任務をテキパキ熟す。
「一段落ついたみたいだね、ありがとうみんな。俺はこの二人を連れてロッジへ戻るから後は自由にしてね。それと三河君を頼むよ」
古屋さんは自分よりも遥かに年齢が下の僕達に丁寧なお礼の言葉を述べた後、千鳥足の豊川さんと比津真さんを連れてロッジの中へと消えて行った。
「さて皆さん、コーヒーでも淹れますか?」
「サンセーだ委員長! 俺も手伝うぞ!」
食事の用意はほぼ古屋さんたちのロッジから調達したが、コーヒーや紅茶にジュースなど、多少の飲料は僕達の泊まるロッジにも用意してあった。
そしてテーブルに臥せって眠る三河君を横に、僕達は雑談を始める。勿論この男を話題の中心にして。
「それにしても三河君って凄いですね。話を聞くに、まだまだ凄い人物と交流がありそうですよ?」
「だよなー。なんか俺達とは違う感じがする。女どころか大人にも引けを取らずに会話するとこなんてどうあがいてもマネできねーし」
「でも、私達といる三河君ってぜんぜん特別な感じがしないね」
眠っている本人の隣でアレコレ会話が盛り上がる。共通の話題を持つ仲間意識からか、自分でもここに居る皆とドンドン距離が近づくのが分かった。
「そういえば三河君とここへ来たとき笹島さん顔真っ赤でしたよね? なにかあったんですか?」
ここから僕達が知らない笹島さんと三河君の時間が露わとなる。誰もが聞きたくとも聞けなかったその真相へサラッと自然に伊良湖委員長が切り込んだのだ。
「あ、あーあ。あのね、倒れた常世田さんをベッドに運んだでしょ。それで終わりかなと思ったら彼女の服を脱がし始めたの」
「あの人変な汗かいてたからなー。下着姿を見た三河が少し羨まし……うぉっほん!」
千賀君は正直だな。もっとも、僕もその意見には同意だけど。
「……下着じゃないの。全部なの」
「!?」
一瞬で他の三人が固まった。
全部ってなに?
全裸ってこと?
「彼、悪びれることもなく、照れることもなく、本当に隅々まで丁寧に拭いたの。見ている私の方が恥ずかしかった」
「マジで!? あいつなに羨まし……うぉっほん、そんなの常世田さんが知ったら……」
大丈夫だよ千賀君。何度も言うけど僕も考えは同じだから。
「いえ、常世田さんも納得してるの。途中で少しだけ目を覚ましたから。でね、その時彼はこう言ったの」
”裸を見られて恥ずかしいのはわかるけど病気になったら元も子もないんだよ! それが切っ掛けで重病の足掛かりとなれば後悔しても遅いんだよ。そういった芽は少しでも早く摘むに限るんだ。遅かれ早かれ必ず男性にその肌を晒すときが来るだろう。今はその予行練習だとでも思えばいいんだよ。人生なんて限られてるから少しでも多くの時間を楽しもうよ合成”
「そんな考え方なんてしたことなかったから目から鱗だった。顔が真っ赤だったのは、常世田さんを脱がす彼の手際が妙に慣れててこの人は女性経験が豊富なんだって思った自分が恥ずかしかったからだと思う」
いやいや僕は騙されないぞ?
実際同じ立場に立たされればエッチなことで頭が一杯となる自信がある。
ぞもぞも冷静な行動すらとれないだろうけど。
だから断言できる!
三河君も下心を誤魔化す為にもっともらしい理由を口にしただけだと!
「じゃあ笹島さんは彼と一緒にお風呂へ入ってないんですか? 確かあの時の常世田さんは半裸でしたけど?」
「…………」
笹島さんはこれ以降口を閉ざしたままとなるのであった。
……。
おのれ三河君!
神よ、彼に極刑を!
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