第二十四歩
「バチが当たったんですよ」
常世田さん自らの手により強制アンパンマン化された僕の両頬。それ等は勝手に彼女のブラを晒し者にした僕に非があるのは当然。だが、伊良湖委員長が僕の首に放った延髄切りは余分じゃない?
どさくさに紛れて危うく生命まで切られるところだった。
「おい熱田、三河と笹島さんはどんな感じだった?」
千賀君はお風呂場にいる二人の様子を頻りに気にしている。ここは彼の為にもズバッと介錯を……。
「二人仲良くイチャイチャしてたよ。第三者の入り込む余地はまったくないね」
「マジか! ……マジかぁ」
予想どおり激落胆の千賀君。そして僕の仲間へ強制加入となる。
「まぁまぁお二人とも、寂しかったら慰めるぐらいしてあげますよ? あ、熱田君はエッチだから説教のみですけどね」
小憎たらしい言い回しをする伊良湖委員長だったが、それはそれでご褒美として受け取っておくとしよう。
「で、二人はまだ風呂場にいるのか?」
「髪の毛乾かし終わったら戻ってくると思うよ」
「!」
この後、暫しの沈黙が部屋一帯を覆う。髪の毛を乾かすとの行為で三河君と笹島さんが既にできてしまったと勝手に勘違いしてしまったからだ。当然僕も勘違い組の一員であった。
それから待つ事5分、遂に渦中の人が舞い戻る。
「お待たせみんな。お、合成もう大丈夫なの?」
さり気なく女性へ気を遣うその行為が三河君のモテる気質なのだろう。自然も自然で僕達が恥ずかしくて言えないような言葉をサラッと容易く口にする。
「もういない? 怖いのいない?」
「な、なに言ってるんだよ合成? さっきお風呂場で言い過ぎて気が動転しちゃってるのかなー? アハ、アハハハ!}
常世田さんの言う”怖いの”ってなんのことだろう。それを聞いた三河君は明らかに動揺してるし。間違いなく彼が一枚噛んでいると思われる。
「だ、だってぇ……」
出会った当初を思えば、今の常世田さんは格段に女らしい。ってか、妙に可愛らしい。何が彼女をそうさせている? まさか三河君が彼女になにかした? エッチな事とか?
「おいキューちゃん、いったい何を考えてるの? 脱衣所でもそうだったけど、ちっこいテントまた張ってるし」
「!」
エッチは僕自身であった。
その時の女性陣から浴びせられる視線の冷たいこと冷たいこと。
全て事実だから何も言えないのがまた情けなかった。
「大丈夫だぞ熱田。俺もパンパンになってるから」
千賀君のフォローがまた悲しい。男前が台無しとなるセリフを何の躊躇いもなく口にする。
「あの、常世田さんは三河君に……あの、その……なにかされたとかですか?」
僕と千賀君が妄想の常世田さんに欲情しての情けないやり取りのなか、伊良湖委員長が遂に核心を突く質問を彼女へ切り出した。
「い、いえ、そうではないんです。それだったらどれだけ良かったか。あ、あの……実は、がいこ……」
{ごくり!」
僕達三人が固唾を飲んで彼女の話に耳を欹てるなか、またしてもあの男が邪魔をする。
「おっと合成そこまでだよ! それ以上喋ると……呪われちゃうかもネ!」
「ヒ、ヒェッ!」
呪われるだって?
三河君の口にする言葉はどれもこれも不可解で意味不明。もしかすると保身で話を誤魔化す方向へ誘導している?
「も、もうご勘弁を……アナタ様は、いえ、ご主人様とこれからはお呼びしますから、何卒、なにとぞお許しをおおおおおおおっ!」
「あっバカ! その呼び方は……」
またしても動揺した三河君だったが、その理由が判明したのは深夜のこと。現時点で意味の分からない僕と千賀君に伊良湖委員長の三人は互いに顔を見合わせシンクロ率100%で首をかしげる。
そして……
「あっ……アヒィッ!」
断末魔と共に常世田さんは気絶した。
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